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北海道知来別の小さな村20240530

建築のコストダウンの秘密

今までたくさんの住宅の商品開発をしてきました。無印良品の家をはじめとし、企業のために、日本でもまた中国でも作ってきました。そしてそこで必ず出るテーマがコストダウンでした。コストダウンの基本はプロトを作り、同じものを繰り返し生産することです。しかしユーザーはそれぞれ自分の好きな形に、また好きなようにプランニングします。設備類においても好きなものを選びます。一方マンションや建売ではすでに選ばれたものから選択をしますが、その幅は多くはありません。ところが戸建て住宅の場合、敷地の条件も違い同じものはほとんどないのです。ここに建築が半製品と言われる所以があります。家は買うものでなく作るものだという考え方が定着しています。

さて僕が今までやってきた方法はプロトを作り、その中から選んでもらうという方法です。そのためにはプロトが魅力的な必要がありますが、万人に合わせるということより、基本に忠実に、選ばれないことも覚悟で作ります
さらにプロトから変更していい場所を考えます。コストとのバランスですが窓の位置を変えるかどうかは大きな課題です。そのプロトが(大きさ)の意味で何種類用意するかは鍵になりますが、大きな家は選択肢が多すぎるので難しいと言えます。
また家とは、なるべく普通の家を作りながら、暮らし自体はそれぞれで、どんな暮らしをするかが重要だという価値感の変換も必要になってきます。

今回の知来別で考えたことは、こうした今までの経験に加えて自分で作るという新たな方法です。材料を自分で買って、自分で作る。基礎も屋根も窓も自分で作ります。キッチンもです。メーカーの商品は使いません。そして自分で作るわけですから複雑な方法は避けなければなりません。また道具も限られていますから木の加工が前提になります。中には少し不便でも暮らし方を変えることで不便さを解消できることもあります。こうすることで小さいものであれば、市場の2分の1以下の金額、大きなものであれば3分の1前後の価格で作ることが可能になりました。とはいえこれを他の場所でも作るためには、先のプロトの考え方をどこまで入れるのか、今回作るものと同じものであれば価格も明確なのですが。ともあれ実験ですので、今回はギリギリまで攻めてみようと思います。

ここまで書きながら、村づくりの上で建築はあくまで手段です。暮らしのきっかけづくりと言ってもいいでしょう。ですから建築が目的でならないように、お金がかからない仕組みを作るためにコストダウンと自らが修理できるコミュニティを作っていくことが重要なことだと考えています。

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