新時代ロマンチスト(詩)

空を飛ぶ

もっと自由に

もっと愉快に

君を乗せて

僕の飛行機は
飛んで行った

戦いの技術として
戦闘機が飛ぶように
僕らは血を流すことさえ
美しいと思っていた

あの大戦の前までは

その後も
その時のあこがれが
くすぶっている

革命は
血を流す覚悟がなければ
革命じゃないと
言った人がいた

辛いのは嫌だ
痛いのは嫌だ
苦しいのは嫌だ

嫌だ嫌だ
そういって
この国は
空を飛ぶ面白さを
忘れてしまった

戦う面白さを
忘れてしまった

そのかわりに

君の笑顔のために
美しい女性の笑顔のために
飛ぶことにした僕らは
その力を原動力に
戦後の日本を
立て直した

そして現在

泣いていた君の
裏切りに会った僕らは
途方にくれて
衰退の道を進んでいる

泣いていた君は
笑った
空も飛べた
でもその後
君は笑わなくなった

なぜだろうか

いつのまにか
感謝を忘れ
笑顔の美しさも
感じなくなり
僕らは
どこに飛べばいいのか
わからなくなった

死後の甘美な世界に
希望を繋ぐ人が
増えてきた

転生チーレム無双
こんな世界とは
おさらばして
生まれ変わって
莫大な力を手にして
異性にちやほやされて
なみいる敵をなぎ倒す

そんな世界観を
西方浄土思想が好きな日本人は
再び求めるようになってしまった

理想の世界に憧れる
肥大した夢の国が
本当の夢の国を生きる力を
奪っていく

夢の国はどこですか
妄想の中ですか
現実逃避の中ですか

君が飛ぶべき空はどこですか
君が笑いあいたい人はどこですか

それは異世界じゃなくて
今ここの先ではないでしょうか

僕らは認められないから
アニメを作り
小説を書き
ジュエリーを作り
詩を作ってきた

それらは世界を
変えることなく
夢に酔わせて
極楽浄土の
一瞬の
シネマを見させた

そろそろ
世界を変える
自分になっても
いいころじゃない?

鎌倉時代に
念仏が流行りまくった後に
現実主義者の日蓮が生まれたように

色んな形の転生ラノベが
流行りまくった後に
現実をガンガン変えていく
最高の華が咲いても
いいころじゃない?

念仏も今までのラノベも
建築現場の足場のように
最高の華ができる前の
準備期間だったんじゃないかな

僕らは絶望のあとに
希望を産み出す

戦う面白さを
今度はVRのなかで見いだす

戦争の後に高度経済成長があり
震災のあとに復興があったように

絶望から夢を描いたあとに
希望の未来を創り出す

僕には何もない

僕らにはなにもなかった

だから夢を描いた

遠い夢を
酔いしれることのできる夢を

だから次は
どんでん返しの
現実を創ろう

世界を変えるロマンの種は

世界にあふれている

さあ
作戦会議をはじめよう
希望の未来を
創り始めよう

その道は遠い
しかし
遠いから尊い

その道を歩くのは楽しいから
大変だけど笑顔になれるから
苦難の分だけ喜びがあり
君と喜びあえるから

その山を越える道を
この空を飛ぶ旅を
みんなで楽しく行けるから

僕らは
新たな時代の
ロマンチスト

これからの世界は
まだ見ぬ宝に
あふれている

それを手にすることが
僕らにはできる

夢を生きるなら
僕らにはできる

~完~

参考文献「楽器と武器だけが人を殺すことができる」
章:鳥は重力に抗って飛ぶのではない
著:宇野常寛

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