侍ストリッパー?
私はボランティアで、「子ども食堂」と「みんな食堂」に月1回ずつ行っている。
子ども食堂は、コロナ以降食料品や日用品の配布を行っている。毎月150名前後の人が受け取りに来ている。
みんな食堂は、本当に食堂をやっていて、区の施設を使って調理し、毎回40食前後を提供している。前回のメニューは、カレーライス、フルーツゼリー、まいたけの煮物、スープだった。子供達にはカレーライスが好評で、お代わりをする子供もたくさんいた。小さい子に「日本一おいしい!」とか言われると、やっててよかったと思う。
私は料理の腕前もセンスもないため、みんな食堂では皿洗いとテーブルのセッティングが仕事だ。その皿洗いにしても、普段あまりやったことがないため、当初は要領がつかめず、一緒にやっているおばちゃんたち(失礼)に指導を仰ぎながら最近は何とかこなせるようになった。
みんな食堂にボランティアで来ている人たちはほとんどが子育てを終えた女性で、前回男性は私ひとりだった。
私は、会計事務所をリタイアしてから、上場を目指している会社の監査役に就任したが、普段接している人は若い人たちが多く、私と同年代の女性(失礼ながら「おばちゃん」と呼ばせていただく)と接することは、現役時代も含めてあまりなかった。
だから、当初おばちゃんたちと一緒に活動するとき、どのようなことを話してよいのかわからず、結局彼女たちの会話の中に入ることができなかった。彼女たちもひとりぽつんといる「おじさん」にどう接してよいかとまどっていたと思う。
ところが、ふとしたきっかけでおばちゃんの中に「早苗(さなえ)さん」という名前の人がいることがわかった。知っている人はほとんどいないと思うが、私が若い頃、古井戸というフォークグループに「さなえちゃん」という歌があり、結構好きだった。
おばちゃんの早苗さんは人懐こそうな感じがしたので、思い切って「さなえちゃん」と呼んでみたら、「はーい」と返事をしてくれた。
それ以来、彼女のことを「さなえちゃん」と呼ぶようになり、彼女をきっかけに他のおばちゃんたちとも仲良くなった。
仲良くなってみると、彼女たちの会話は本当に面白い。
先日、さなえちゃんが最近観た映画のことを絶賛していた。
(さ)「この間観た侍ストリッパーはとても面白かったわよ。」
(私)「侍ストリッパー?それって、侍が裸になって踊るの?」
(さ)「あれ?変ねえ……。あっ、そうだ。侍スリッパよ、スリッパ。」
(私)「侍はスリッパじゃなくて、下駄とか草鞋を履くんじゃないの?」
(さ)「???」
結局「侍タイムスリッパ-」が正しかったことがわかった。芸人が笑いを取ろうと思って話しているのではなく、本人はいたってまじめな分、面白い。
彼女たちも私も困っている人たちのお役に立ちたいという目的は同じなので、見事な連携の中で料理ができあがり、配膳→撤収と進む。私が今まで経験したビジネスでもこれだけ要領よく業務を遂行できることはまれだったような気がする。さすが長年主婦として活躍してきた人たちは違うもんだと感心するとともに一つの目的に向かって力を合わせると大きな力になることも実感している。
主婦の労働対価はゼロではない。遅ればせながら、夫として妻の価値にも改めて気づかせてもらった。
今後も「同志」のおばちゃんたちとできるだけ長くボランティア活動を続けたいと思っている。