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書評: アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る (藤井保文 / 尾原和啓) 。アフターデジタル世界の本質を考える

今回は、書評です。

アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る (藤井保文 / 尾原和啓) という本をご紹介します。

この記事でわかること

この本の概要
「アフターデジタル」 とは何を意味するのか
アフターデジタルの世界でのビジネスへのインパクト
ビジネスで生き残るために何をするか

これからの世の中がどうなっていくのかが興味深く読めた本でした。この記事も参考に、ぜひ読んでみてください。

本書の内容

この本に書かれていること
・アフターデジタルとは何か
・ビジネスへのインパクト

中国の先進事例と日本の現状を比較しながら、具体的に知ることができます。日本の現状が、アフターデジタルへの認識や対応が遅れていることもわかります。

以下は、本書の内容紹介からの引用です。

現在、多くの日本企業は 「デジタルテクノロジー」 に取り組んでいますが、そのアプローチは 「オフラインを軸にしてオンラインを活用する」 ではないでしょうか。

世界的なトップランナーは、そのようなアプローチを採っていません。

まず、来るべき未来を考えたとき、「すべてがオンラインになる」と捉えています。考えて見れば、モバイル決済などが主流となれば、すべての購買行動はオンライン化され、個人を特定する ID にひも付きます。IoT やカメラをはじめとする様々なセンサーが実世界に置かれると、人のあらゆる行動がオンラインデータ化します。つまり、オフラインはもう存在しなくなるとさえ言えるのです。

そう考えると、「オフラインを軸にオンラインをアドオンするというアプローチは間違っている」 とさえ言えるでしょう。筆者らはオフラインがなくなる世界を 「アフターデジタル」 と呼んでいます。その世界を理解し、その世界で生き残る術を本書で解説しています。

デジタル担当者はもちろんのこと、未来を拓く、すべてのビジネスパーソンに読んでほしい1冊です。

アフターデジタルとは何か

本のタイトルでもある 「アフターデジタル」 とは何を意味するのでしょうか?

アフターデジタルを理解するためには、アフターデジタル以前と比べると見えてきます。

アフターデジタル以前
・オフラインの世界が中心
・デジタル (オンライン) はオフラインの付加価値
アフターデジタル
・オフラインとオフラインの主従関係が逆転
デジタルがオフラインを内包する (あらゆるものがデジタル化していく) 
・オフラインだけという世界はない前提で検討・対応する

この本でのもう1つのキーワードは 「OMO」 です。

OMO とは、Online Merges with Offline の略です。オンラインがオフラインを統合し、一体となっていく捉え方です。

2つが融合しボーダレスになり、どこでもオンライン化した状態になります。

OMO の意味合いはアフターデジタルと同じです。アフターデジタルという表現は、この本ならではのもので、OMO は一般的な表現です。

デジタル (オンライン) がオフラインを内包するのが、アフターデジタルの世界です。

では、アフターデジタルでのビジネスの本質は何でしょうか?

アフターデジタル世界での本質

ポイントは 「データ収集」 と 「ユーザー体験の向上」 です。具体的には、次のようになります。

アフターデジタル世界での本質
・高頻度多接点でデータを集める
・収集データから、顧客やユーザーをより深く理解する
・プロダクトやサービスに活かし、より良いユーザー体験という価値を提供する

つまり、アフターデジタルの本質は 「データ収集 → ユーザー理解 → ユーザー体験向上」 なのです。

良いユーザー体験によって、ますますデータ多くのデータ収集がされ、このループをまわし続けるという好循環です。

アフターデジタル以前では、オフラインとオンラインが融合しておらず、オフラインでのデータは収集が十分ではありませんでした。しかし、全てがデジタル化する状況では、オンラインもオフラインでもデータを高い頻度と多くの接点で取れます。

高頻度多接点で集めたデータを、ユーザー体験の向上という価値によって返すという構図です。

アフターデジタルの事例 (Jian24) 

本書で印象的だったのは、中国の会社である Jian24 に著者らが訪問した際のやりとりです。

以下は該当箇所からの引用です。

Jian24 に訪問した際、最初に 「今後このビジネスをどのように拡大する予定ですか?」 と質問しました。

すると 「無人コンビニを急拡大しようとして事業展開しているわけではありません」 と返答されました。

そして、こう続けました。「人は買い物をする際、どのように悩むのか、買おうと思っていたものを間違える理由は何か、別の物に変える時はどのような行動を取るのか、ポップをどのようにしたら気づいてもらえるのか、などのリアルな顧客の行動を画像データによって回収し、解析して使おうとしているのです」 

つまり、リアル店舗での購買行動を録画し、データとして蓄積して分析することで、行動導線、悩む時のタイミングなど、リアル購買行動データのコンサルティングのような存在を目指しているビジネスであり、コンビニ業をやりたいわけではない、ということです。

 「リアル購買行動データは年齢層や男女で大きな違いが生じるため、顧客の購買行動をデータベースにして方法論として確立し、コンサルティングを行ったり、パッケージとして提供したりすることで、リアル行動データを軸としたビジネスを展開しようとしている」 

 (引用: アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る (藤井保文 / 尾原和啓) 

まさに先ほど書いた、「データ収集 → ユーザー理解 → ユーザー体験向上」 です。

アフターデジタル世界の本質 (再掲) 
・高頻度多接点でデータを集める
・収集データから、顧客やユーザーをより深く理解する
・プロダクトやサービスに活かし、より良いユーザー体験という価値を提供する

同じことが実現されているのは、例えばアマゾン・ゴーです。

無人店舗のアマゾン・ゴーでは、オンラインデータと店内の収集データを統合することによって、これまでになかったリアル店舗での買いもの体験 (価値) を提供しています。

では、アフターデジタルの世界での本質を踏まえ、ビジネスではどのように向き合い、対応していけばいいのでしょうか?

アフターデジタルへの向き合い

まずは認識として、オフラインだけの世界はなくなっていくという前提で考えます

リアル店舗のビジネス展開であっても、オンラインでやっていることを起点に考えます。誰が・どんな行動をしたか (例: 何を買ったのか) が、オフラインでもデータを取っていくのです。

収集データを使い、適切な人に向けて、より適切なタイミングで、適切なコミュニケーションができるようになります。

消費者にとっては、それが当たり前という感覚です。消費者のオンラインとオフラインの使い分けは、モバイル・パソコン・リアル店舗がその時々で最適なものを選択します。

アフターデジタルの世界では、継続的に高頻度多接点でデータを集め、収集データをいかに良いユーザー体験として価値を戻すかが問われます。

読んで思ったこと

ここからは、アフターデジタル を読んで思ったことを1つ、共有します。

考えさせられたのは、リアル店舗の再定義です。

これまではリアル店舗はデジタルから蚊帳の外でした。しかし、あらゆるものがオンライン化することによって、リアルでの店舗もデジタルの中に入っていきます。

リアル店舗ならではの、人と人との密なコミュニケーション、来客に寄り添った対応、人間的な温かい接客やサービスによって、もっと良い来店や買いもの体験になるでしょう。そうなれば、リアル店舗の価値があらためて見直されます。

リアル店舗の大きな方向性は、二極化していきます。

1つは、省力化された店舗運営による買いものの効率性の追求です。機械的に、いかに早く手軽に買えるかです。

もう1つは、買いものがエンターテイメントのようになる情緒的な買いもの体験ができるお店です。モバイル画面上ではできないリアルならではの、もっと言えばその店ならではの購買体験です。

二極化で共通するのは、一人ひとりの客をデータによって深く理解し、顧客ごとに最適化された体験が価値として提供されます。

これができるのは、「データ収集 → ユーザー理解 → ユーザー体験向上」 のサイクルをまわし続けるからです。

まとめ

今回は、アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る という本から、アフターデジタルとは何か、アフターデジタル世界でのビジネスの考え方や向き合いを書きました。

最後に今回の記事のまとめです。

この本に書かれていることは、アフターデジタルとは何か、ビジネスへのインパクト。
中国の先進事例と日本の現状を比較しながら、具体的に知ることができる。日本の現状はアフターデジタルへの認識や対応が遅れていることもわかる。
アフターデジタルとは、デジタルがオフラインを内包する世界。あらゆるものがデジタル化し、どこでもオンライン化した状態になる。
アフターデジタルでのビジネスの本質は、 「データ収集」 と 「ユーザー体験の向上」 。
・高頻度多接点でデータを集める
・収集データから、顧客やユーザーをより深く理解する
・プロダクトやサービスに活かし、より良いユーザー体験という価値を提供する
アフターデジタル世界でのビジネスの考え方や向き合いは、オフラインだけの世界はなくなっていくという前提で。
継続的に高頻度多接点でデータを集め、収集データをいかに良いユーザー体験として価値を戻すかが問われる。
読んで思ったのはリアル店舗の再定義。リアル店舗ならではの、人間的な温かい接客やサービスによって寄り添い、もっと良い来店や買いもの体験になる。リアル店舗の価値があらためて見直される。


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