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恐ろしくも美しい九相図

今回は「九相図」について書きます。
まず、九相図(くそうず)とは何か?というと、死体が朽ちていく経過を九段階にわけて描いた仏教絵画です。
この先強烈な内容なので、気分を害する可能性があります。
閲覧にはご注意ください。

では早速九相図をご覧ください。

無題

生前の絵が入るものがありますが、基本、九相観(死体の変貌の様子を見て観想すること)は下記が描かれます。

・脹相(ちょうそう) - 死体が腐敗によるガスの発生で内部から膨張する。
・壊相(えそう) - 死体の腐乱が進み皮膚が破れ壊れはじめる。
・血塗相(けちずそう) - 死体の腐敗による損壊がさらに進み、溶解した脂肪・血液・体液が体外に滲みだす。
・膿爛相(のうらんそう) - 死体自体が腐敗により溶解する。
・青瘀相(しょうおそう) - 死体が青黒くなる。
・噉相(たんそう) - 死体に虫がわき、鳥獣に食い荒らされる。
・散相(さんそう) - 以上の結果、死体の部位が散乱する。
・骨相(こつそう) - 血肉や皮脂がなくなり骨だけになる。
・焼相(しょうそう) - 骨が焼かれ灰だけになる。

何故このような絵画あるのか?というと修行僧の悟りの妨げとなる煩悩を払い、現世の肉体を不浄なもの・無常なものと知るための修行だったのです。
九相観を説く経典は、奈良時代には日本に伝わっていたとされ、これらの絵画は鎌倉時代から江戸時代(8世紀~17世紀)にかけて製作されました。

仏僧は原則男性であるため、九相図に描かれる死体は彼らの煩悩の対象となる女性(特に美女)でした。
題材として用いられた人物には檀林皇后(だんりんこうごう)や小野小町(おののこまち)。
※檀林皇后…第52代天皇嵯峨天皇の妻

檀林皇后の逸話には面白いエピソードがあるので紹介します。
檀林皇后は仏教に深く依存しており、自分の体を餌として与えて鳥や獣の飢を救うため、または、この世のあらゆるものは移り変わり永遠なるものは一つも無いという「諸行無常」の真理を自らの身をもって示して、人々の心に菩提心を呼び起こすために、「自らの遺体を埋葬せず路傍に放置せよ」と遺言し、遺体が腐乱して白骨化していく様子を人々に示したといわれております。
なんという強烈なエピソードなんでしょうか…。
諸行無常の表現方法が斬新すぎです。

煩悩払いの為の修行というイメージが強いですが、その根底には仏教思想による諸行無常とはこういう事だ。と人々に菩提心を呼び起こす為に生れたとても神聖な美術品なんです。
過去、人間の歴史の中で美術品というのは意外な役割を担っていた事があるのも美術の面白いところです

■追伸
こんなお話をさせていただきましたが、本丸は「一文字アート」です。
宜しければ作品も覗いてみてくださいね!


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