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【連載小説】パンと林檎とミルクティー

11 日曜午後4時30分

 テレビを観ていた。
 最近気になりだしたぼてぼてのお腹は、テレビを観ているときはひっこめてみる。
 昨日、テレビを観ながら10分間つま先立ちしていたら、今日はふくらはぎが痛い。
 どれだけ運動不足で体力がないんだ?! と、自分ツッコミだらけ。

 テレビに、赤いリンゴが映る。
 リンゴって、漢字があったなあ。
 どんなんだっけ。
 手元にある紙に、書いてみる。

「林」
 だけ書いて、手が止まった。
 え。
 リンゴ、ってカンジすら書けなくなっちゃってたのかわたし。
 「漢字」はこれでいいか。

 でも大丈夫。
 パソコンとスマホとタブレットがあれば、簡単に変換してくれるから。

 林檎

 でました!
 はい、大丈夫。
 でも、ちょっとまって。
 もし、作家として本を出して、自分がだしたタイトルよりも編集者さんがだしたタイトルの方がよかったら。
 その時、タイトルに「林檎」って入ってたら。
 どうしても漢字で「林檎」がいんです、ってことになったら。
 書店に、自分で自分の本のポップを作ることになったら。
 サイン会で、サインと本のタイトルを書くことになったら。

 手書きで書けなきゃ、問題あり。

 記事や小説の構想ノートを引っ張り出してきて、書いてみた。

林檎

 複雑で、ちゃんと書こうとすると文字がどうなっているのかよくわからない。
 パソコンの画面を拡大してみる。
 一画ずつ、確認しながら書いてみる。
 何度も何度も、書いてみる。

林檎
林檎
林檎
林檎
林檎

 同じ漢字が、ノートの一ページの中に繰り返されていく。
 小学校の時の漢字練習帳みたい。
 これで、いつ、タイトルに「林檎」っていう漢字が入っても大丈夫。
 書店さん向けのポップも書けるし、サイン会でも大丈夫。


 書いてるときに、緊張するから、お腹にも力が入ってダイエットになるかなあ。
 なんて、勝手に考えた。


つづく


 




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