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Thank you rockers. I love you baby.

十代の頃に憧れていたミュージシャンが、空港でうどんを啜っていた。

混みあうフードコートで、荷物でイスを占領する客にぺこりと頭を下げて。
一人でぽつんと、うどんを啜っていた。

故郷の短い夏は、2日間のロックフェスで締めくくられる。
帰省初日。空港に到着すると、疲れた顔の音楽好きたちが、重そうな荷物を引きずっていた。

1年で1番の楽しみだったそのイベントに、参加しなくなったのはいつからだろう。
砂埃まう広大な大地で、夏を惜しむように朝まで踊り明かしていたっけ。


ミュージシャンに握手を求めようか迷って、ライブで見せる顔とは全く違う穏やかな表情を見て、声をかけずに空港を後にした。


実家の私の部屋には、憧れていたバンドのCDがちゃんと残されていた。

CDをプレイヤーにセットすると、うどんを啜っていた彼の音楽が、私を16歳の小さなロッカーに戻してくれる。

窓を開けると、夏の終わりを知らせる冷たい夜風が、頬を撫でていった。



お読み頂き、ありがとうございました。 読んでくれる方がいるだけで、めっちゃ嬉しいです!