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編集者と体力

今週私は、B5サイズ600ページ強の本を2冊校了した。
7月には、世に並ぶのでとても楽しみだ。

ここ数年、在宅ワークが中心になり、タブレットを駆使してペーパーレスで作業を進めていくが、校了近くになると、実際に紙に刷ったゲラでないとチェックできないことも多々あり、出社してゲラを受け取る。
そして、何度も「くッ!」と声を上げる瞬間がある。

600ページ以上、B5の全貌がわかる一回り大きいA4で出力。それを2冊分というと、かなりの重さになるのである。
毎週通っている筋トレヨガで負荷用に使うボールが3㎏あるのだが、それよりも重く感じる。
ゲラを保管している私のロッカーがある階のひとつ上の階に編集部があるので、私は出社するたびに、メタくそ重いゲラを持って上階に上がる。

ちょっと気になったので調べてみた。
検索するとおなじみのA4用紙は1枚4g、それが600枚で2.4㎏、そして2冊分なので4.8㎏(あれ? あってますよね? じつは現在酔っぱらっているので間違っていたら、ご一報ください)を、持って階段を昇るのだ。
これは結構体力がいる。

必要とあらば、そのゲラをリュックに入れて自宅に持ち帰る。
リュックにはPCやタブレットなども入れているのでなかなかの重さである。

世の中には、エディターズバッグという種のバッグがある。
バカ言ってんじゃねぇ、そんなバッグを肩から下げたら、肩ちぎれるわっ! と私は前々から思っていた(すみません、金曜の夜なので、酔っています)。
なんでも、A4のプリントや、PCが入るバッグを、「エディター=編集者」が持つバッグと名付けたらしい。

バカ言ってんじゃねぇ(2回目)、ほかにもアホみたいに重い資料本とか、いろいろあるんだよ。
涼しい顔して、肩掛けバッグなんて持てるか! もう、リュックしか勝たんのだよ! というのが本音である(主観です)。

コロナ禍になり、以前は会社の机に置きっぱなしにしていた、PC、PCのバッテリー、ゲラ、資料などを背負って持ち運ぶことになり、私のお気に入りの初代HUNTERのリュックのショルダーベルトは、ちぎれた。今、一回り大きい2代目HUNETERのリュックが、「勘弁してくださいよぉ~」と悲鳴を上げながら相棒として活躍してくれている。
リュックは少しでも軽量化しようと、ペンケースは数年前からジップロックだ。中身が見えるし、軽いし、我ながら天才か⁉ と思っている。

というわけで(どういうわけで?)、編集者はなかなか体力がいる仕事だな、と日々思うのである。

私は子供のころから腰に持病があるので、腰に負担のかかる重いものを持つとき、ちょっとした緊張が走る。
ここで緊張感持たぬまま、重いものを持ち上げようものなら、必ずぎっくり腰になり、とんでもない地獄を見るのだ。

なので、たった5㎏ではあるが持ち上げるときは必ず、重量挙げの選手のように気合を入れ、お腹に力を入れて「くッ!」と声を上げて持ち上げるのである。

腕力のほかにも、編集者は体力を使う仕事だな……と日々思う。

温泉特集をしたときは、短パンで撮影にのぞみ、モデルさんにきれいな光を当てるレフ版を持ってひざから下、長時間温泉に浸かり、湯あたりして倒れたことがある。

築地特集では、朝4時集合で、ひと眠りしたほうがいいのか、いっそ徹夜しちゃったほうがいいのかわからなくなり、徹夜を選んでしまったせいでフラフラになった。

1日5軒のレストランを取材したときは、最後のお店のオーナーさんに「もったいないので食べちゃってくださいね」と言われ、「お前ももうひとくちいけるだろ?」と、カメラマンさんとライターさんとにらみ合いながら、胃袋に一生懸命メニューを押し込んだ。もう気分はフードファイターだ。

先輩からは、編集者は早食い&早歩きになりなさいと言われた。
誰よりも早く食べ終わって、スタッフさんたちがくつろいでる間にやることをやりなさい、と言うのだ。
これが、つらかった……。
私はしっかりと嚙んで食べなさいと言われて育ったので、早食いがとてつもなく苦手なのだ。
早歩きもアホみたいに、キョロキョロしながらプラプラ歩くので厳しいオーダーである(でも、これのおかげで街中で芸能人を見つけるのがうまい――誰得⁉)。

明け方校了した日の夜便で、ハワイ取材に行かなければいけなかったとき、1度家に帰って寝るのも危ない気がして、そのまま別の取材に行き、家に1時間だけ戻ってトランクに荷物を押し込み、そのまま成田に直行した。
飛行機の中で、機内食も食べずに爆睡し、目覚めると朝のハワイ! ということもあった。
あとから、ハワイの達人・山下マヌーさんのエッセイを読んだら、夜出発が基本のハワイ便ではひたすら眠って、目覚めたらハワイの朝! というほうが時差ボケしないと書いてあったので、多分功を奏して正解。
ただ、機内食食べたかったな……というしょんぼりした気持ちにはなった。

編集者になって数十年。昔は楽勝だった徹夜は、もう苦しくなってきている。
そして、重いものを持つのは相変わらず苦手だ。
握力もびっくりするほどない(たしか左手は15くらいしかなくて、体育の先生に大丈夫か⁉ と言われた)。
長距離を走ることも、短距離を速く走ることもできない。
障害物を素早くすり抜けることも怪しい……。

というわけで、少しでもこの仕事を長く続けていけるように、私はヨガと、整体に通い、ここ最近はパーソナルサプリメントも始めた。

何が言いたいかというと、これって経費にならないだろうか? ということである。
――あ、ダメですよね? もちろん、わかってます……。
しょんぼり。

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