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まだ間に合う!経理のDXの始め方

本日、ITメディアさん主催のこちらのイベントでゲストスピーカーとして登壇してきました。最近のセミナーはzoomでの在宅からの配信が多かったのですが、今回は久しぶりに収録場所に行っての登壇となりました。

登壇で使ったスライドはこちらです。経理のリモートワークやDXの本質、業務プロセスとデータフローなど結構盛りだくさんの内容になっていますが、なるべく分かりやすくスライドを作ったつもりなので、興味がある方はご一読いただけると幸いです。

このnoteでは登壇の編集後記的に、DXについて思うところを考えていきます。

1.ある日突然DXが起こるわけではない

「DX」がバズワード化していく中で、ERP、AI、IoTなどと同じように猫の杓子もDXという状態になったのが去年の夏〜秋ぐらいだったでしょうか。テレビCMで「DX」を連呼するようなものもいくつか見かけましたね。

しかし、昨年末に経産省の「DXレポート2(中間とりまとめ)」が出されましたが、そこでもハッキリと「DXとはシステムを導入することではない」と明記されております。賢明な皆様におかれましては大丈夫だとは思いますが、ITベンダーによるDX詐欺にはくれぐれもお気をつけください。

この手のバズワードの飛びつくマスコミやITベンダーの歴史は繰り返すということは、楠木先生の『逆・タイムマシン経営論』などを読んでいただけるとよく分かります。

個人がスマホの機種変をするような感じ、システム導入や業務再構築がすぐに実装されるわけではありません。私たちが行っている日々の活動はそんなに単純なものではないのです。AIをはじめとしたデジタルテクノロジーはまだまだツールのレベル。私たちの仕事を一気に代替するにはまだ先の話でしょう。

しかし、処理や判断のスピード、ミスなく同じ作業を繰り返すという局面においては人間の能力をすでに凌駕しています。ようは使いどころが重要であり、それを考え、実装し、活用するのはまだまだ人間がしっかり行わないといけません。

DXと唱えれば、ある日突然すべての課題が魔法のように解決し、業務が一気に効率化してHappy、などというのは子どもでも信じないおとぎ話です。

今の日本の本当の問題は、紙や手作業をというレガシーな業務に最適化させてしまった業務プロセスをなぜか多くの人が「最善のやり方」だと信じていることです。システム導入の場面でも要件を聞くと「今できることをそのまま実装してください」ということをいう現場担当者も珍しくありません。仕事の目的が目の前の作業をこなすことにすり替わり、何のためにその作業をしているのかという部分が失われてしまっているのです。

DXとはシステム導入ではないし、システム導入も含めて一朝一夕ではできるはずがありません。また、デジタル化は手段にすぎないので、それによって何を成し遂げたいのかという部分が重要です。

本来の意味でのDXが実現されるためには、地道で長い長い業務改善のプロセスが必要不可欠なのです。

2.リモートワークは一朝一夕ではできない

コロナ禍において多くの人が不便な生活を強いられていると思いますが、唯一のよかったことと言えば、リモートワークが特殊な働き方ではなくなったことです。zoomやslackは何年も前から存在しており、やろうと思えばできたのに、これまでは「対面でのメリット」や「同じ空間を共有する意義」ばかりが強調され、なかなかリモートワークが普及しませんでした。

しかし、緊急事態宣言により多くの人々が強制的にリモートワークになり、多少の混乱はありましたが、思っていたほど仕事に影響はなかったことが証明されたのです。

一方で、影響があったというよりも、準備ができていなかったのが、紙だらけの業務が多数残っているバックオフィスです。役所関係の書類や取引先との契約書・請求書など、自分たちの判断だけでは変更できない部分も多いので、すべてをデジタル化するためにはそれなりの覚悟と期間が必要です。

こちらのマネーフォワードさんの事例でも「1年かけて準備した」とあるように、緊急事態宣言が出てからなんとかなるものではありません。

テクノロジーを活用し、業務プロセスも変更すれば、バックオフィスもリモートワーク化で十分に業務を行うことが可能です。もちろん、コミュニケーションやディスカッションという観点からは物理的に集まった方が遙かに成果がでることもあり、リモートワークが全てにおいて優れているわけではありませんが、逆に全ての業務をわざわざ通勤して会社で行う必要がないことも事実です。

そろそろ二度目の緊急事態宣言も明けそうですが、意味もなく通勤することに疑問を持つ人も増えたはずです。今後は、リモートワークでも滞りなく業務を回せるような準備ができている企業とそうでない企業では生産性はもちろんのこと、求職者側からの重要な指標になるでしょう。

私は何のシステム投資や業務改善もせずに「うちはリモートワークできません」と思考停止した企業では絶対に働きたくありません。働き方だけではなく、そのような企業がこれからの競争で勝ち残れるとは思えないからです。

日本の労働人口が減少していくことは確実です。企業は生産性の向上はもちろん、労働者に選ばれるためにもデジタル化への投資が必要なのです。

3. しばらく新規事業に集中します

さて、本日が2月の最終営業日。この2年でありがたいことに色々なところからお声かけいただくことも増え、SpeakerDecには44本のスライドを公開しています。クローズドのイベントの場合などはここに公開していないものもありますので、実際には50本超のスライドを作ってきました。

2年前にはバックオフィスにおけるDXや、リモートワーク、業務設計などいう概念は日本ではまだまだ先の話と思っていましたが、いつの間にか時代がそちらにシフトし、お仕事のご依頼や登壇依頼も増えてきました。

この2年間はお声かけいただいたものは可能な限り断らないようにして、月に1本はどこかで登壇し、原稿も書いていたような気がします。お声かけいただくのは本当にありがたい限りなのですが、ここ半年ぐらい私の中で2つの限界を感じるようになっていました。

1つは、インプット過多の状態が続き、自分の中でネタが尽きてきたことです。バックオフィス×DXというテーマでご依頼いただくことが多いとはいえ、スライドの使い回しも増えて、自分自身としてもかなり新鮮味がなくなってきています。

2つ目は、やはり抽象的な話ばかりしていてもイノベーションは起きないということです。セミナー登壇した際には前向きなフィードバックもたくさんいただけるのですが、果たしてそれを実践した(できた)人達はどれだけいるのかを考えると、無力感を感じざるをえません。本を読んでも実際に行動に移す人は数%もいないという話もあるので、まぁ私が気にしすぎなのかもしれないのですが・・・

というわけで、本日の登壇を1つの区切りとして当面の間は新しいシステムの開発に注力する予定です。まだまだ詳細は発表できる段階にはありませんし、様々な試行錯誤を経ておそらく今考えているコンセプトも、最終的にはだいぶ変わるだろうと思っていますが、やはりバックオフィス領域で多くの人々や企業の生産性を本当に向上させるシステムを作りたいという思いを強く持つようになりました。

まだバックオフィスの担当者のみなさんにヒアリングをしたり、コンセプトを見直したりしている状態なので、リリースまでしばらくかかりそうですが、当面の間はセミナー登壇や原稿の執筆はお休みして目の前の課題に全力で向き合いたいと思っています。

デジタルは私たちの生活や仕事を豊かにしてくれますが、それを扱う人間の能力が向上しているわけではないので、情報過多やコミュニケーション不全などの問題も顕在化しつつあります。最新の技術を使ってうんぬんではなく、業務や人とデジタルの関わり、コミュニケーションの取り方などを再構築するようなプロダクトが作れたらいいな〜ということをごちゃごちゃと考えていたりします。

noteは書きたいことを書く場所なので、ふと思い立ったときに投稿するかもしれませんが、次やることはもう少し固まってから共有させてください。

それではまた、どこかで。

ノートの内容が気に入った、ためになったと思ったらサポートいただけると大変嬉しいです。サポートいただいた分はインプット(主に書籍代やセミナー代)に使います。