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バックオフィスがDXできない理由

こんにちは、武内です。

最近Voicyやポッドキャストで音声コンテンツをよく聴いています。家事や自転車での移動時は、目と手は塞がっているけれど、耳は空いているのでながら聴きにはちょうどですね。音声領域が盛り上がってきたことで、良コンテンツも増えています。

そんな中で、オフトピックさんのスタバの話がものすごく面白かったので、今日はその辺からはじめていきます。

1.スタバは実はテックカンパニー

スタバが、アプリ開発やデータ解析にものすごく力を入れていて、コーヒーを売る裏側の仕組みがすごいという話です。これはアメリカのスタバの話でしたが、日本のカフェでも2位のドトールを押さえて店舗数ナンバーワンはスタバです。オフトピックで紹介されていたアプリによる販促の仕組みは日本では実施していないようですが、これだけ2位以下と大きな差が着く裏には、テクノロジー活用も大きく貢献していそうです。

スタバといえば、接客マニュアルがなく店員のホスピタリティ溢れる対応が印象的です。先日放送されたカンブリア宮殿のスタバ回でも、そのあたりが強みだと紹介されていましたが、店員が接客やオペレーションにしっかり気を回せるのは裏側の仕組みがしっかりしているからではないか、そんなことをオフトピックを聴いていて感じました。

日本企業は現場が強い、おもてなしだ、なんて言われますが、その実は「現場が頑張ってそれを支えている」だけということがほとんどです。様々な発注作業やレジの締め切りなども含めて、現場力という一言でアナログなまま改善がされない。その上で、顧客対応をホスピタリティを持ってできるのであれば素晴らしいことですが、現場はかなり疲弊しているのではないでしょうか。

先日もTwitterで「出前館が実は人力便りの超ローテク企業」という話題が盛り上がっていました。

スマホなどない時代から事業を展開している出前館は、FAX配信の仕組みを整備することで加盟店を伸ばしてきました。しかし、それをアップデートせずに、いまだに人力頼りで大量のオペレーションを回しているというのは驚きです。

ドトールとスタバ、出前館とウーバー・イーツ、表は同じように見えてもその裏側の仕組みには大きな差がありそうです。世界中でデジタルシフトが進む中で、生産性がまったく上がらない日本。その敗因こそ、裏側の仕組み化を怠ったことです。つまり、テクノロジーへの適切な投資をしてこなかったツケがここにきて効いてきているのではないでしょうか。

2.現場力という力業に頼るバックオフィス

さて、ここからが本題です。

最近、様々な企業のバックオフィスの方とお話しをさせていただいているのですが、皆さん本当にホスピタリティに溢れた素晴らしい方ばかりです。しかし、そういう人がいる企業に限って業務のオペレーションは本当にアナログそのものです。

SaaSを導入しているとか、そういう話ではありません。いくつSaaSを導入していても、その運用が本当に力業のアナログなのです。システム間を連携するとか、ちょっとした自動処理があってもそれは「点」の話。業務全体は現場の人達の頑張りで支えられているアナログそのもの。

日本の現場力、という言葉がありますが、DXが進行していく中で、それこそが足を引っ張っているような気がしています。アナログな状態で対応するしかなかった時は、担当者のスキルや経験が品質に直結したのでしょう。しかし、テクノロジーが導入されても、テクノロジーの能力を最大化するような仕組みの再構築を怠り、「今まで通りのやり方・考え方」をごり押ししてきた末路が現在の日本の現場です。

バックオフィスには器用で良く気が回るタイプの方が多いこともあり、多少は仕組みが破綻していても、なんとかしてしまう割合が高いように思います。その結果、テクノロジーへの適用が、営業・マーケティング、そして、開発現場よりも大幅に出遅れています。

力業でなんとかなってしまう、いや、なんとかしてしまうことを繰り返し、裏側の仕組みを整えたり、テクノロジーを正しく活用しようという発想がない。プログラマー三大美徳でいうところの『怠惰』がまさに欠如しているのです。

これまではそれでもなんとかなってきましたが、2つの理由でそれが破綻しかけています。1つが労働人口の減少と人件費の上昇。こちらはこれから日本が向き合わなければいけない現実であり、今更説明するまでもないでしょう。

そして、2つ目がテクノロジーの発展です。DXとは、ビジネスモデルや業務の仕組みそのものをテクノロジーに最適化した形に再構築することですが、前述の通り、小手先の現場力でごまかしてきた日本のバックオフィスは、その入り口にすら立っていません。

今世間で「バックオフィスDX」と呼ばれているもののほとんどは、ただの局所的なデジタイゼーションです。これまで紙で処理してきたものを単にデジタルデータに変換しただけ。仕組みはなにも変わっておわらず、膨大な作業を現場に押しつけているのが現実です。

しかし、テクノロジーの発展により処理するべきデータの量も、求められる処理スピードも、その精度も、アナログ時代とは比べものにならなくなってきています。そんなに遠くない将来に、現場の頑張りではどうやっても対応不可能になるはずです。

AI、DX・・・などのバズワードに過度の期待をするのは勝手ですが、テクノロジーは「勝手に課題を解決してくれる」魔法では決してありません。現時点でのテクノロジーは、あくまでも人間の能力を拡張するための活用するものであり、そのためのお膳立ては人間がしっかり整えてあげる必要があるのです。

「経理が不要になる」「システムが業務を代替する」というのは99.9%誇大広告です。そういうつもりで開発するのは勝手ですが、システムが自らの意思をもって、最初から最後まで完璧に処理してくれない限り、経理が不要になることはあり得ません。SFの見過ぎです。

コロナによって、インプット側のデジタルシフトはこれからも進みそうですが、それを処理するための仕組みの再構築はまだまだです。本当の意味でのDXが「ちょっと楽になった」とか、その程度でいいわけがありません。

3.まとめ

テクノロジーはバックオフィスの仕事を奪う脅威ではなく、バックオフィスの仕事の価値を引き上げるための武器です。しかし、そのためにはバックオフィスの人達が、アナログ時代に植え付けられた「私たちの仕事は作業である」という呪いから脱却する必要があります。

これまでは紙などのアナログなインプットが多かったため、まずは作業をして様々なものを整えなければ、本当の仕事をすることができませんでした。しかし、インプット側がデジタルデータに変わっていく流れになり、本来はそれらをテクノロジーで処理するべき仕組みを整えるべき時になっても、いまだに作業をしてしまう人が多すぎるのではないでしょうか。

バックオフィス側のテクノロジーへの投資が不十分という要因もあるかと思いますが、作業でなんとかすることを当たり前にしてはいけません。「非効率の常態化」からそろそろ解き放たれるためにも、バックオフィスの人達も意識を大きく変えなければいけないタイミングにきていると感じます。もちろん、経営者も。

残念ですが、私たちには魔法は使えないようです。しかし、テクノロジーという武器があります。これらを使いこなして、そろそろバックオフィスを次の次元に引き上げてもいいころです。

もうペーパーレス化や、電子稟議などのデジタル化の入り口で喜んでいる場合ではありません。意識を根本からアップデートして、テクノロジーを使いこなせるバックオフィスへ、そのための仕組みの再構築へ。スタバやウーバー・イーツのテクノロジー活用の話を見て、そんなことを考えていました。

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