新元号が発表された日

 四月一日は入社式だった。入社式と研修は配属先ではなく、神戸で行われると聞いていた。ホテルも用意してくれるらしい。ただ何日の研修になるかは知らされておらず、とりあえず一週間分くらいの荷物を持っていった。

 入社式のあとは研修があるし、きっと新元号発表の瞬間には立ち会えないだろうと思った。どうせなら社員全員で発表を見守る時間があればいいのにな、と呑気なこと考えていた。

 入社したのは僕を入れて二人だけで、神戸のオフィスにいた先輩は全員で四人。社長は海外出張でいなかった。合計六人の簡素な入社式は一瞬で終わった。上司らが仕事に戻ると、しばらく自由にしててとだけ言われた新卒二人組は暇になった。
すぐ研修に移ると思っていた僕は拍子抜けした。

 もしかすると、このままスマホで発表の中継を見れるかもしれない。そう思ったけど、スマホを出すまでもなかった。
オフィスにはパソコンに繋がった大きなモニターがあった。しばらくすると先輩の一人がモニターを立ち上げて、中継の画面を映して、まだかぁと呟いた。えっ、これ見守る流れじゃん。なんとなく考えていたことが急に現実的になった。
仕事がきりのいいところになったのか、他の先輩たちも菅官房長官の乗った車を見にぞろぞろとやってくる。これは発表に立ち会える。確信になった。全員ではないが、ほぼ全員で発表を見守った。全国にいる新卒たちの中で、新元号をリアルタイムで見れるのは何人いるんだろう。ちょっとわくわくした。

 時間が経ち、令和の文字を見て、ちょっとかっこいいじゃん、と思ったところで上司と昼ごはんを食べることになった。新元号発表の瞬間を見た新卒というどうでもいいアドバンテージにうきうきした入社式だった。

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生きる糧
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ただの日記を書きます。ぶれた写真が好きです。

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