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今治産タオルの製織データをリアルタイム化!市場ニーズに応える超小量多品種生産に挑戦【IKEUCHI ORGANIC|事業紹介】

地域ブランドとして日本を代表する成功例となった「今治タオル」。その知名度は大きく向上したものの、ブランド制定後15年を経過し、市場ニーズの変化とともに次のステップへの転換点を迎えている。これからのタオル業界に求められる顧客のニーズとは、超少量多品種化。ところが生産現場では大量生産織機が主流で、ここに課題があった。

そこで超少量多品種生産に対応する「タオル織機工程管理システム」に着手したのが、創業72年を迎える今治のタオル会社「IKEUCHI ORGANIC」だ。今治の主要地場産業であるタオル生産の改革にチャレンジする取り組みを追った。


今治の主要地場産業であるタオル会社の現状と課題

地域ブランドとして成功を収めた今治タオル。今治タオルブランドを展開する「今治タオル工業組合」には現在78社のタオル会社が属している。ブランド制定後15年を経過した今、変化する市場ニーズに対応するため、組合各社も課題を抱えているのが現状だ。

\現状と課題①/
メーカーブランドの確立とOEM体質からの脱却
今治タオルブランドを活性化する次のステップとして避けて通れない一つの道が、組合各社のメーカーブランドとしての確立だ。そして、その際に必須となるのが、超少量超多品種生産販売の実現。顧客が要求する希少性を、タオル生産製織に反映できれば、生産販売方法はOEM(=他社ブランドの受託製造)体質からの脱却を後押しできる。顔の見えるタオルメーカーの販売の自立は、時代のニーズでもあるのだ。

\現状と課題②/
販売の自立には解像度の高い生産販売が必須
メーカーブランドの確立は直接販売の収益性は良いが、反面、販売ロットは千から1万分の1以下になると同時に、激増する顧客数に対応する必要がある。このために、生産販売の管理制度に格段の解像度の高さが要求される。生産販売活動を、日、月単位からリアルタイム化して業務改善を図る必要がある。

\現状と課題③/
余剰生産による廃棄ロス
これまで、タオル織機の生産製織管理は日単位(1日1回)のデータ化が限度だった。そのため、例えば本来100枚タオルを売るなら100枚作ればいいところを、織機の生産精度が低いために、余剰分を作らざるを得ず、結果的に105枚作るといったことが起こり、廃棄ロスにも繋がっていた。

タオル生産管理の精度を上げる「タオル織機工程管理システム」とは?

「タオル織機工程管理システム」のセンサーを付けて稼働する「IKEUCHI ORGANIC」の織機

世界の織機業界において、タオル織機は通常織機の派生モデルで希少生産されている。そのため、現時点では日本に2社(TOYOTA、津田駒)、欧州2社(ITEMA、ノーボピオーネ)程度しか選択肢はなく、さらに大量生産織機が主流のため、タオル特有の問題点(パイルビームの精密なコントロール)を積極的に改善する方向性がない。

顧客ニーズである超多品種化と、相矛盾化する織機の超高速量産化……。タオル業界が抱えるこの矛盾に対し、今治地区で改善のノーハウを獲得できれば世界的な差別化も可能となるはずだ。

そこで、今回のプロジェクトで課題解決に乗り出したのが、今治に本拠地を置く下記の3社だ。

【実施体制】
●プロジェクトリーダー:IKEUCHI ORGANIC(実装事業責任者)
●プロジェクトパートナー:田崎エンジニアリング(センサー開発)
●プロジェクトパートナー:リバーテック(ソフトウェア開発)

3社が取りかかったのが、超高速量産化をベースとする現行のタオル織機の精度を上げ、ユーザーの嗜好である超少量多品種化に対応する製織システム「タオル織機工程管理システム」を確立させることだ。

「タオル織機工程管理システム」とは、現行の織機に後付けできる小さなセンサーを使った制御システムのこと。織機本体を新しく買い替える必要もないため、低コストで導入することができる。

センサーの導入でタオル製織管理のチェック頻度は11万倍に

センサーは小さくて取り付けやすいため、古い織機に後付けすることもできる

「タオル織機工程管理システム」の特筆すべき点は、タオル生産の織機毎の正確な生産数、品質(長さ・重量)を、これまでの日単位(1日1回)ではなく、織機の生産活動の最小単位であるピック単位(1ピックごと)でデータ化できる点にある。綿糸(パイル、下縦糸)の進行速度を1ピック毎に管理することにより、品質管理で最も重要なサイズと重量の正常か否かをリアルタイム化できるのだ。

「IKEUCHI ORGANIC」代表取締役の池内 計司氏は、「弊社では、これまでは1日1回の製織管理が限界でしたが、センサーの導入で1日約11万回のチェックが可能となります。これにより品質向上と正確な生産数量管理ができ、より精度の高いタオルが作れるようになります」と期待を寄せた。

「タオル織機工程管理システム」のセンサーについて

実装では「IKEUCHI ORGANIC」の織機4台に各3つのセンサーをつけて稼働させている

上図左にあるように、織機1台につきセンサーを3つセットでつける。センサーでは、横糸1本毎に規格通りの製織が行われているかをチェックする。また、縦糸ビームとパイルビームの進行を光センサーで常時監視することで、規格外の生産を停止することも可能。生産数量も設定通り管理される。

◼︎3つのセンサーの特徴

1.ロータリーエンコーダ

パイルのビームに取り付けて、パイルの送り出し(パイル糸量)を計測することができる。

2.光電センサ

筬(おさ)の動きに合わせてカウントすることで、パイル数を検出することができる。

3.リミットスイッチ

タオル1枚の区切りを検出することができる。

「タオル織機工程管理システム」のネットワークについて

センサーで測定したら、そのデータはWi-Fiでパソコンに送信され、画面上で製織活動データのチェックをリアルタイムで行うことができる(織機スピード300回であれば、チェック数は300回/分、5回/秒)

Wi-Fiからパソコンに送信されると、上図右の画面が表示される。赤線で囲んだ①の箇所では、パイル糸使用量を表示。②はタオル1枚の重量を表示。③は②の結果を受けてB級品かどうかを判別し表示。④はタオル重量の計測に必要なデータの入力欄が設定されている。

勉強会で「今治タオル工業組合」の組合員から寄せられた期待の声

勉強会には「今治タオル工業組合」の関係者らが出席し、熱心に耳を傾けた

去る2024年12月16日(月)に「テクスポート今治」にて、「今治タオル工業組合」に所属するタオル会社の経営者らが参加し、プロジェクトに関する勉強会が実施された。当日、「IKEUCHI ORGANIC」からは同プロジェクト担当の曽我部 健二氏と、代表取締役の池内 計司氏が登壇し、「タオル織機工程管理システム」の概要を説明した。

参加者からは下記のような質疑応答が相次いだ。
●「今使っている古い織機にも使えるのか?」
回答「センサーは後付け可能なので、現行の織機にもお使いいただける」
●「減価償却にはどのぐらいの期間がかかるのか」
回答「当初は3〜4年程度と想定していたが、もっと短い期間で償却できるかもしれない」
●「将来的に、我々も『タオル織機工程管理システム』を使うことはできるのか」
回答「『今治タオル工業組合』に属しているタオル会社であれば、どの社も使っていただける」

「IKEUCHI ORGANIC」担当者&代表に聞いた、プロジェクトの意気込みと展望

写真右から「IKEUCHI ORGANIC」代表取締役・池内 計司氏、同プロジェクト担当・曽我部 健二氏

プロジェクトリーダーを務めた「IKEUCHI ORGANIC」の担当・曽我部 健二氏と、代表取締役・池内 計司氏に今回のプロジェクトへの意気込みと展望を伺った。

●プロジェクト担当・曽我部 健二氏コメント
2024年10月21日(月)〜10月24日(木)にかけて、弊社工場の織機4台にセンサーの取り付け作業を実施しました。現在はセンサーでデータを取りながら、経験値を反映させて微調整しているところです。
もし、今治全体でこのシステムが稼働すると仮定すると、廃棄商品は総生産の1.5%まで削減できると想定されています。エコについて着眼する良い機会ですし、将来的には、産地・今治全体に広がっていくことを期待しています。

●代表取締役・池内 計司氏コメント
弊社はオーガニックタオルに特化している会社ですが、最近は「リユースすればエコ」という潮流があると感じています。しかし、そもそもリユースしなければならない物作りをしているほうに、問題があるのではないでしょうか。フードロスについて話題になることが多いですが、物作りも同じです。
今回のプロジェクトを通して我々が目指しているのは、リユースしなくても良い産地になること。今回の取り組みが『世界で最もエコなタオル産地・今治』に繋がることを期待しています。

生産販売データのリアルタイム化と融合で「世界で最もエコなタオル産地・今治」へ

「タオル織機工程管理システム」を実装することで、織機の製織活動の最小単位である1ピックごとのデータ化が実現でき、超少量多品種の時代にも無駄なく対応できる生産体制を築くことができるのだ。「顧客が求めているものを必要な分だけ」作ることができれば、廃棄商品も削減することができる。

今回のプロジェクトでは、「タオル織機工程管理システム」の実装と両輪で、販売ルートごとの顧客(WEBユーザーとSTOREユーザー)のデータ統合も行なっている。次回の記事では、タオルの生産実績と購入者の情報をリアルタイムで把握して融合することで、どれほど効率化に結びつくことができたか、その実装結果に迫っていきたい。

同プロジェクトを通した「世界で最もエコなタオル産地・今治」の実現は、もうすぐそこまで来ているかもしれない。

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