消防現場の課題に挑む!3Dスキャンアプリ「Scanat」で火災調査業務の効率化へ【nat株式会社|事業紹介】
火災が起こったあとの現場撮影や測量作業といった火災調査業務は、これまで消防署員の限られた人員の中で、膨大な時間と手間をかけて行われてきた。しかし、人の手で行うことで測定漏れや誤採寸、作業者の経験値に左右されるという課題もあった。
そんな消防現場の課題に光を当てたのが、3Dスキャンアプリ「Scanat」だ。スマホやタブレットをかざすだけで、誰でも簡単に高精度に空間を記録できるのが特徴で、現場情報収集作業において大幅な効率化が図れる。次世代の火災調査業務のスタンダードにもなり得る「Scanat」を使った実装が、ここ愛媛ではじまった。
愛媛県の火災調査業務における現状と課題
消防現場で行われる火災調査業務には、現場の測量、現場撮影、質問記録、見聞、再現、火災原因判明などといった様々な調査がある。これらを、これまでは消防署員の手によって膨大な時間をかけて行われてきた。
実際に愛媛県内の消防署員の中から、次のような課題があがっていた。
\初期調査での課題/
・現場での測量作業・撮影作業に時間がかかる
・調査作業において人員が限られるので、少ない人数で対応できるといい
・夏場などの環境が厳しいため、調査時間の短縮をしたい
・調査箇所の測定・写真撮影忘れが発生する懸念がある
・経験の差により基準の場所をつかみ取れず、測量等の正確性が担保しにくい(人的ミス、環境要因)
・火災原因の箇所についてあとでわかった場合、再度調査を行う必要があり手戻りが発生
\事務調査での課題/
・図面起こしの手間がかかる
・大量の写真整理に時間がかかる。特に時間が経つと思い出すのに時間がかかる
・焼損面積の計算が複雑
火災調査業務を効率化する3Dスキャンアプリ「Scanat」とは
そこで今回、愛媛県の消防現場における課題解決に立ち上がったのが「nat株式会社」だ。「nat株式会社」が提供する3Dスキャンアプリ「Scanat」は、世界初*1のmm単位と曲面測定を可能にしたiOSアプリ。この「Scanat」が入ったタブレットやスマホをかざして火災現場をスキャンするだけで3D化でき、誰でも現場を漏れなく保存することができるのだ。
*1 2019年10月時点のApp Storeにおける全ての3Dスキャニングアプリとして、自社調べ。
火災現場のスキャンデータは、タブレットやスマホ上で即座に3D化して見ることができる。さらに、直線、曲線、面積の任意箇所を、アプリ上ですぐに計測も可能(誤差1%以下*2)。また、文字や写真、手書き情報を記録することもできる。
*2 東京都産技研での精度検証の結果、座標測定器及びレーザー干渉計で設定された500.6mmにして、19.6mmの誤差(1%以下)と同種アプリ内最高精度を実証済み。
「Scanat」を消防現場に導入することにより、鎮火後の現場情報収集作業効率化、調書作成業務効率化の課題解決が期待できる。実際に、某関東圏の自治体の消防署と実証実験を行なった結果、現場情報収集作業において80%ほどの効率化が実証できたというデータもある。
他にもメリットとしては、調書作成と保管(紙、様式、方法)のDX化も図れる。
消防現場における、3Dスキャンアプリ「Scanat」の活用可能業務
消防現場における火災調査業務の中で「Scanat」の活用が期待されるのは、以下の業務。
1 現場の状況確認
3D図面を使って、火災が起きた場所からの被害の広がり方などを正確に確認。火災後の建物がどのように損傷したかを、視覚的にわかりやすく記録。
2 証拠の収集と分析
3Dモデルで火災の進行を再現することで、火事の原因や発生場所を多方面から確認できる。被害の詳細な記録を3Dデータとして保存し、後日、現場に出向くことなく深い分析が出来る。
3 羅災証明書の作成
3D図面を基にして被害を評価し、羅災証明書の作成をスムーズに。被害箇所を正確に把握して、迅速に証明書を作成できる。
4 データの共有と報告
3D図面を使って、関係者などと被害状況を簡単に共有。証明書発行の際に、視覚的な情報を加えて説明をわかりやすく行える。
「Scanat」を活用した本プロジェクトの実施体制
「Scanat」を使った今回のプロジェクトの参画事業者は下記の3社からなる。
●プロジェクトリーダー「nat株式会社」(所在地:東京)
●プロジェクトパートナー「松山市消防局」(所在地:愛媛)
●プロジェクトパートナー「西条市消防本部」(所在地:愛媛)
プロジェクトリーダーである「nat株式会社」は主にデジタル・ソリューションの提供を、プロジェクトパートナーである「松山市消防局」「西条市消防本部」は主に実装アセットの提供と利用者視点でのフィードバックを行う。
中間報告会で消防現場から寄せられた「時間短縮に効果を感じた」の声
去る2024年11月29日(金)に愛媛県庁第一別館内の「トライアングルベース」にて、「nat株式会社」による中間報告会が実施された。中間報告会には、プロジェクトパートナーである「松山市消防局」、「西条市消防本部」の担当者も出席し、本プロジェクトに参加した理由や、また「Scanat」を活用して期待したい効果、実際の使用感について感想を寄せた。
●「松山市消防局」担当者からの声
「プロジェクトに参加した理由は、DXを活用し火災調査における業務の効率化や隊員負担の軽減を図れると感じたからです。
現在は、限られた人員で、写真、図面作成、発掘、情報収集を行っています。場合によっては、消火活動と並行して、時間と労力がかかるのが課題でした。
今回のプロジェクトでは、キックオフから本日までの3カ月間に『Scanat』を現場で4回使用しました。1つの現場を例に出すと、ベテランが写真撮影をするのに22分かかっていたところ、『Scanat』では16分に短縮できました。期待していた時間の短縮にも効果を感じました。
また、現場で3Dモデル化することで、帰ってから火災の見分を作成しやすいという利点も感じました」
●「西条市消防本部」担当者からの声
「今回のプロジェクトに参加した理由は、初夏の暑い中でメジャーでの測量や数百枚の撮影、帰ってからの記録など、限られた職員で行わなければならないことに大変苦慮していたからです。実際の『Scanat』の使用感としては、専門的な知識がなくとも誰でも使いやすく、またあとから見返しやすい。さらに3Dモデル化することで人にも説明しやすく、説得力も増す点にもメリットを感じました」
「nat株式会社」代表に聞いた、プロジェクトの意気込みと展望
プロジェクトリーダーを務めた「nat株式会社」代表取締役社長の劉栄駿さんに、今回のプロジェクトへの意気込みと展望を伺った。
「今回のプロジェクトでは、プロジェクトパートナーとして、ありがたいことに愛媛県内のたくさんの消防署から手が挙がり、『Scanat』への期待の高さを感じました。また、通常3Dスキャナは1台数百万から数千万円かかりますが、「Scanat」は1人1カ月使用で1万円という費用対効果の高さにも関心を持っていただけています。
今回のプロジェクトでは、実際に「松山市消防局」と「西条市消防本部」と共同で実装ができるため、火災調査業務のよりスピーディーな現状把握と効果検証に繋がると感じています。消防現場において有効なソリューションという実装結果が出れば、次世代の火災調査業務として、愛媛県内外の消防署にも普及できるのではと期待しています」
消防現場の効率化で「安心・安全で快適に暮らせる持続可能な愛媛県」の実現へ
今回のプロジェクトによって、より簡単で高い品質の火災調査業務が行われることで、防災管理の高度化に繋がり、『愛媛県総合計画』が目指す「安心・安全で快適に暮らせる持続可能な愛媛県」の実現にも期待ができる。また、火災調査業務は愛媛県のみならず、日本全国ないし世界の消防署でも行う業務のため、次世代の調査業務を確立していくことで、世界のスタンダードにもなりうるだろう。
今後もTRY ANGLE EHIME編集部では、「Scanat」を取り入れた消防現場の効率化の取り組みを追っていく。
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