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#044.足タップ

リズムが難しくて、つい足をパタッ、パタッとカウントに使ってしてしまったこと、ありますか?
もしかしたらクセになっている方や、もはや無意識で動いてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。そして、それを先生に指摘された経験がある方も多いことでしょう。
私はこの行為を「足タップ」と呼んでいます。

結論から言いますと、いわゆるクラシカルな音楽、吹奏楽やオーケストラ、そして室内楽やソロなどで足タップをする行為は禁止です。

そこで今回はなぜ足タップをしてはいけないのか、その理由と、クセになってしまわないように心がけたいポイントをお伝えします。


なぜ足タップは禁止なのか


大きくわけて4つの理由があります。

1.音楽は拍だけで捉えるものではないから

えっ!と思いましたか?じゃあメトロノームは何のためにあるの?カチカチにぴったり合わせる練習ってみんなしてない?先輩や先生も手拍子をして合わせようとさせるし。

確かにそうです。リズムを明確にしたり、一定のテンポを体感するためのひとつの方法として「拍」を前面に出して感じ、把握する。そんな練習の一面があることは否定しません。

しかしこれはあくまで音楽を構築するひとつの要素にすぎません。人前で披露する時になって拍を前面に出した縦に刻む捉え方では音楽は表現できません。持論も含まれますが、音楽の持つ気持ちよく自然な「横の流れ(フレーズ)」を表現しようとすると、そこに拍子やテンポが自然に生まれ、感じることができると考えています。

2.足は人間の中で最も鈍いところのひとつだから

吹奏楽でも使用することが多いドラムセット。たくさんのタイコやシンバルを同時に演奏します。私も遊びでドラムを叩いたことがありますが、一番難しいと思ったのが足で演奏するバスドラムとハイハットのペダルでした。特にバスドラムは音楽の進行を明確に決定するために正確さを要求されるのですが、足は機能的に手によりも反応が鈍く、正確で均一なリズムを連続させるのが難しく、全然できませんでした。

演奏中に足タップをしている人を見ていると、足の動きが均一でない人がほぼ100%です。その理由は2つあり、ひとつは単純に足タップの均一な運動を持続することができなくなることと、もうひとつは『自分の演奏に足タップを合わせている状態』になってしまい、そうなるともう足タップを一体何のためにしているのか理由すら不明瞭になってしまいます。拍のアタマを確認するならば、どれだけゆっくりでも構わないので、メトロノームなどの均一なものを参考にしたほうが練習になります。

3.対外的な目的になっている

足タップをしているもうひとつの理由は「対外的なアピール」です。テンポを感じようとしていますよ、拍のアタマがどこだか理解して演奏していますよ、と足の動きで主張しているのです。そのつもりがなかったとしても、心理的にそうした部分が動作として出てしまっている場合もあります。

もしそうした意識が少しでもあることに気づいたら、足タップに使っている対外的アピールの力を全部自分の体の中や心の中に移動してテンポを生成し、持続するための力に変換してください。面白いことに実はそのほうが聴いている人は奏者のテンポを感じてもらえます。

4.客観的なイメージですぐわかる

そもそも足タップをやらないよう指摘されるのは、それが見ていてとても気になるからです。想像してください。舞台上で数十名の奏者が足タップをしている演奏を。客席からそれを見て、どう感じますか?

足タップをしないで演奏するためには

ともあれ、足タップをしてしまうのはほとんどの場合「クセ」です。クセを直すには理論的な角度から不要であり、すべきではないと強く認識するとか、「恥ずかしい」「みっともない」と感じて精神的な面からやめた方が良いと意識するか、今のクセより良いものを手にいれて上書きするなどが効率的で、単純に「足タップ止めなきゃ」と思うだけでは知らないうちにやっています。

では具体的にどうすれば足タップをしなくなるでしょうか。

1.一度に処理する情報量を減らす

初心者の方に多いのですが、楽譜には拍子、調号、テンポ、リズム、音の高低、アーティキュレーションなどたくさんの情報が書かれていて、それに加えて楽器をコントロールするという使命があるため、一度に処理する情報量が非常に多いです。それらを何とかしようと一生懸命になる方向を誤ってしまうと、つい足タップが始まります。

そうなってしまうなら、処理する情報を減らせばいいのです。例えば音の高さを変えずにすべて同じ音で楽譜のリズムを演奏するとか、タンギングをせずにすべてスラーで演奏する、一旦楽器を置いてメトロノームや手拍子で短い範囲を歌ってみるなど。そうすることで頭の処理に余裕が生まれてきて、足タップをする必要がなくなります。

2.心や頭の中に「歌」を持つ

結局のところ、目の前にある楽譜がどのような音楽になるのかを予め理解していれば足タップなどする必要もなくなります。それがわからず、楽譜の情報だけを頼りにして機械的に再現しようとしたり、そもそも楽譜のリズムなどが読めないままに無理に完成した演奏をしようとした練習順序の問題が足タップを始めてしまうのです。

3.足タップをしている人を客観的に観察して「いやだな」と思う

例えばわざと足タップをしている演奏を撮影して、それを見てみましょう。可能であれば複数人で一斉に足タップした動画を撮影してみるとその衝撃度が高くなります。

ということで、今回は足タップについて解説しました。音楽を音楽的に捉えて演奏しましょう!

それではまた次回!


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。