2-5.タンギングの基本
最初に教わったタンギングの方法に長年悩まされました
トランペットを始めた中学生の時。先輩からタンギングとは「上の前歯2本の中央に舌を突く」と教わりまして、疑うことなく、気づけば音大生になっていました。
音大入試の時から師匠に「タンギングが下手」と常に言わ続け、それでもどうしていいのかよくわからずに苦労した記憶があります。
「上の前歯2本の中央に舌を突く」という竹槍で攻撃するような方法を聞かされたのは30年ほど昔のことですが、レッスンをする立場になった現在もなお、タンギングについて当時の僕とほぼ同じように考えていたり、習っていらっしゃる生徒さんも少なくありません。昭和から平成を通過し、令和になっても世の中は変化に乏しいのです。少なくともタンギングに関してはそう言えます。
物事を誰かに教える際、教える側が効率性を重視しすぎるのは危険です。よく耳にしますよね、「◯◯メソッド」。これは効率性の追求から商品化した定型的なものであり、とても宗教的だし、わざわざこんなことをする必要性がないので嫌いです。そうでなくても、これしか方法がないと言わんばかりに「〇〇はこうするのだ」と断定して伝えてしまう指導は、教わる側の応用力や自分に合った方法の模索の余地を奪うことになり、結果、目指すところにたどり着きにくくしてしまうのです。
もしかしたら、そういったタイプの指導者は自分自身が学生の時に習ってきたままの受け売りだったり、教えることそのものに情熱がなく手を抜いているのかもしれません。何にせよ「こうすればいい」と断定する指導はすべきではないし、習う側もそんなことばかり言う先生は疑ったほうが無難です。
信憑性の薄い一方通行の「方法」を知ることが先ではなく、物事はまず核になる部分「定義」を明確にすることが大切です。指導者の場合はその定義の根拠を示し、そこをしっかりと生徒さんに理解してもらうのです。
生徒さんは、その定義を元に「自分だったらどうするのか」を模索します。定義が明確であれば、根本的な方向性が定まっているので、突拍子もないことを実行して思考の迷子になることはありません。
方向性の定まった生徒さんを指導者はブレないように見守り、時には修正しながら、生徒さんの模索を注意深く見守るわけです。これが何かのテクニックや方法・知識の引き出しを手に入れる際の指導者と生徒さんとの理想的な関係です。
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