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028  しょんかね

午前中のほんの十分ほどでひろがった、こころのちっぽけな世界がある。
それは、音楽とことばがむすびつくふところ。そこでこそ身体にそなわる歌心は、菜の花畑の蝶のようにたわむれ、胎動するようにみえる。

与那国の『しょんかね』は有名な唄だそう。スンカニとも呼ばれ、男女の恋と離別をうたうという、燦々と照りかがやく太陽が想像される地域にあって、なんとも物悲しい曲であるというから、Youtubeで探し、聴いてみる。

安里勇さんは唄者でもあり、海人でもあるらしい。ほかに、鳩間可奈子さんもすてきな声でうたわれている。


実際に唄いをまぢかできけたなら、どんなにすばらしいだろう。唄そのものが本質から、その髄からとよめくようで、想像のかなたの、海原の寝息までもがきこえてくる。

与那国の渡海や池の水心 心安安と渡ていもり

さいきん、NHKのドキュメンタリー『日本人はどこから来たのか』のなかで、台湾から与那国島へ、200kmを丸木舟で航海するという困難なプロジェクトがおこなわれていたのをついでに思いだす。『しょんかね』はその海を池の水と、ねがいをこめてたとえる。

唄の途中で「んぞなりむなよー はりー しょんかねーよー」とうたう。「しょんかね」は唄のなまえでもある。「しょんかね」とはどういう意味だろう。

サイト「たるーの島唄まじめな研究」さんによれば、俗謡『しょんがえ節』に由来するところの囃子ことばで、「そうだねえ」というあいづちをうつ囃子であるかもしれない。『しょんがえ節』とは流行歌のひとつで、「しょんがえ」という囃子ことばを含んだもの。

しょんがえ節『梅は咲いたか』の歌詞の一部 (サイト「世界の民謡・童謡」より)


梅は咲いたか 桜はまだかいな
柳ャなよなよ風次第
山吹や浮気で 色ばっかり
しょんがいな


似たことばづかいが『博多祝いめでた』にある。

『博多祝いめでた』にはよくわからないことばがある。それがまた、すてきなひびきなのである。サイト「山笠ナビ」の博多祇園山笠用語辞典の「祝いめでた」の項から一番の歌詞を引用する。


祝い目出度の若松様よ 若松様よ
枝も栄ゆりゃ葉もしゅげる
エーイーショウエ エーイショウエー
ショウエイ ショウエイ ションガネ
アレワイサソ エサソエー ショーンガネー


若松様とは何のことだろう。ショウエイとは。ションガネとは、アレワイサソ エサソエーとは。よくわからないことばがいくつかあるが、これらもまた囃子ことばだろうか。博多の「山の男たち」がこの祝い唄をきけば、心底にねむる七月の血がぐっとたぎるというが、それは本当だと思う。

祝いめでたの一番

祝いめでたの三番まで(長法被の格好良さよ)



博多祝いめでたをさかのぼると、伊勢音頭の伝播があるといわれている。

ア ヨーイ ヨーイ
と、調子良い。

動画ではうたわれていないが、伊勢音頭の歌詞を調べると「目出度目出度の 若松様よ  枝も栄えて  葉も茂る」とある。(上述のサイト「世界の民謡・童謡」の伊勢音頭のページを参照)


そういえばかつて、安里屋ゆんた (Asadoya yunta)に登場する「すら よい よーい」ということばを調べたことがあったなぁと思いだした。囃子ことばにわたしは、いつのまにか魅了されていたのだなぁ。そう思うと、うれしい。

囃子ことばは、音楽とことばのむすびつく、そのはざまにあって、ことばにしづらいが、それでもなにか、感じさせるものがたしかにある。囃子ことばの研究を示した書物があれば、なにかひとつ、読んでみたい。


※トップ画:河瀬直美監督『2つめの窓』より


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