見出し画像

【中学受験】文化祭の化学部を見て学校の自主性重視度を比較しよう

自主性の尊重はどの学校も謳うけど、比較は難しい

孟母三遷という故事成語が今も残ります。子供の幸せを真剣に考える親ほど、わが子の中学高校選びは最も悩むところ。1つ分かりやすいのが大学への進学実績で数多くのランキングがあります。

一方、「子供の自主性を伸ばす」という点は、どの学校も謳っていますがそれを客観的に示したランキングはあまりありません。各校の「自主的な取り組み」が千差万別で挙げられるのみで比較し難いです。

そこで私が行っているのが「各校文化祭での化学部(科学部)を比較のバロメーターにする」ことです。文化祭という老若男女様々な学外者が訪れ、かつ、人数も多い非日常な空間。そのような中で、「どこまで生徒の自主性を信じ、管理の幅を持たせているか?」それがこの化学実験のレベルで推し量れます。そのレベル、ざっくり言えば

レベル1 身近な物質の化学反応
レベル2 劇薬を用いての化学反応
レベル3 炎を用いての化学反応

のようにレベル分けしています。

許される化学実験のレベルは、学校の管理スタンス

レベル1は、スライムづくりや“紫キャベツ液の色変わり”といった「身近な物質を使った化学反応」のみで終わる科学部(たいてい物理部などがなく、“化学部”に分化していません)。これ、上位レイヤーである学校からしてみれば、「無害な物質で実験を実施している」ので危険に関して“管理不要”にしています。一言でいえば「小学生でも許される実験」しか許していない。その程度の「自主性の許し方」と判別しています。

レベル2は、硝酸銀を使い、試験管が銀色になって楽しい銀鏡反応や、白い砂糖に濃硫酸をかけて黒い炭にするなど、「手に直接ついた危ない劇薬を用いての化学反応」が許されている化学部。とはいえ上位レイヤーから見れば、「事故が起こる可能性があるが、影響は準備した薬品量にとどまり、何か起きても大量の水で洗い流すことで一旦解決する」という“管理可能”な危機です。

これが炎色反応を始め「ガスバーナーなど炎を用いての化学反応」になると、レベル3です。特に、「銅メダル→銀メダル→金メダル」の実験。丸い銅に亜鉛をメッキして銀色にした後、炎であぶって金色(真鍮の合金)にする、これをやる生徒の顔は決まって高揚しています。一方、「何かが燃え始める」という危機はひとたび初動の対処を誤ればどんどんと燃え広がり“管理不能”なレベルに達する危険をはらんでいます。しかし、炎による加熱を禁じると、短時間で可能な化学反応は限定され、「生徒の自主性と創造性」の範囲は大きく狭まります。

実際、火って危ないです。ある学校の文化祭の化学部で、生徒の白衣の袖口からひもが垂れていて、そこにバーナーの火がついて燃え始めました。その生徒はまったく動じることなく気づいてすぐに水道の水で消し、何事もなかったようにまた実験を始めました。いいなぁ、と思いました。
その日は、その前に、階段の踊り場で何かの粉がザーーっとこぼれました。それも先生を呼んで大騒ぎするまでもなく、生徒たちが何名か集まってサッサっと集めて掃き清め、ほどなくして元通りになりました。食堂でも生徒が率先して空席を作り、探して学外者をさばいていました。トレーも拭いていました。いい学校だなぁ、と改めて思いました。

以上から、「文化祭の化学実験のレベルは、学校が生徒に認める自主性のバロメータである」ということが伝われば幸いです。


生徒の自主性と、中学受験偏差値の残念な関係

さて、世の中には、「進学校は勉強漬けで、そうでない方が自由」という印象があります。本当にそうでしょうか?

筆者自身も中学受験をし、子供たちにもさせています。
自分としては母校の東大合格者数よりは運動会や部活による生徒の自主性が好きです。ですから、子供の中学受験では偏差値にあまり捉われず、そういう点を重視しようと考えていました。長女が小5の時に幅広く文化祭を見に行くまでは。

それまで文化祭で火を使うことや厚い部誌が出ているのは普通だろうと思っていました。しかし、違いました。前節のように学校によって生徒に任されているレベルが大きく違ったのです。そして悲しいほど、生徒に認められている自主性の大小と、偏差値の高低に明らかな正の相関を感じました。少なくとも女子校と共学校では。(上2人が女の子なため、まだ男子校は幅広くは見ていません)

「生徒間の自主性が高い6年間を過ごすためには、偏差値も高いことが必要だ……」それまでの自分の甘さを感じました。当然、中学受験で最難関を目指す層になるとそういう点まで加味して、争い、そして過熱しているかもしれないなぁ、と。

なお、レベル3を超えた先にもう一つ「液体窒素」を使っての実験までしてしまいます。当然していたのは最難関校のみ。昨年見せたら長男も大興奮でした。液体窒素、買おうと思えば難しいものではありません。レベル2以下の学校教員が見たらきっと却下だと思いますが…。

また、だいたいレベル3に達していないとまず「化学部の部誌」は配布されません。そして部誌の厚みもまた「偏差値と正の相関」があるようにしか見えませんでした。

文化祭を見に行くことは、受験生自身の「この学校に行きたい!」というスイッチを入れさせる最良の機会です。しかし自分にとっては、むしろ「あぁ、ちゃんと偏差値の高い学校に行けるようにしておけないと自主性の方でも困るのか」と親としてもより中学受験に労力を割く覚悟をせざるをえなくなった。そんな場でした。

本稿が、皆さんの学校選びや、中学受験を頑張る意欲の手助けになっていれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?