酒と血とオヤジと終わり
「はい、生お待ち!」
カウンターより差し出されたビールを半分ほど胃に流し込むと、秋吉は躊躇無く大きなゲップをした。僕を挟んで秋吉の反対側に座っている中田はコクリコクリと頭を揺らしている。
「あのクソパワハラ上司、いつか首飛ばしたる!」
秋吉は残りを一気に飲み干した。金曜日は毎週のように仕事の愚痴を肴に飲んでいるが、今日は一段とハイペースだ。現にビールが僕の膀胱を激しく攻撃している。
「ごめん、俺おしっこ・・・」
ヨロヨロと立ち上がり、目に入った扉の方へ進む。
「お客さん、そっちトイレじゃないですよ!出口ですよ!」
大将の声を背に受けつつ、そのまま扉を開けた。入店前と比べて異様に静まり返った夜の風景。
「ごめんなさい、トイレ、逆でしたね」
ふと足元を見やると、ボールのような物が転がっていた。それがかのパワハラ上司の頭であることを認識した。僕は扉をそっと閉じ、席に戻った。
「すみません、ビール、もう一杯」
【続く】
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