地獄の中心でDIEと叫ぶ
人間時間で十年前、地獄の収監人口は七十億人増加した。人類は自らの生み出した核の炎により概ね焼き尽くされたのだ。地獄行きの基準は現代人にはあまりに厳しく、遍く地獄へ堕ちた。鬼たちはこの人数に対して刑を執行すべく寸暇を惜しんで働き詰めたが、瞬く間に過労生きが社会問題となった。この事を憂慮した閻魔大王は刑の執行を重罪人のみに絞ること、その他の人間には地獄の居住権を与えることを決断した。
結果、圧倒的な数の暴力を前に人間と鬼のパワーバランスは逆転し、鬼の特権は剥奪された。血の池や針の山などの固有の景観を残した上で町並みは人間社会に準拠して整備され、マイノリティと化した鬼は次第に差別の対象となった。
「白も黒も赤も青もメタルの前では皆クソだ!」
そして現在、人間に職を追われた赤鬼、元三途の川の渡し守の青鬼、最近地獄に堕ちてきたモヒカン男のスリーピースメタルバンド、HELLionは今日も理不尽への怒りを叫ぶ。
【続く】
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