塔2024年6月号感想(1/2)
塔2024年6月号のなかで、気になった歌についてnoteにまとめました。
長谷川麟/大出孝子/森山緋紗/青馬ゆず/佐伯青香/片山裕子/和花/石田犀(敬称略)
5774(+休符3)7のリズムで読みました。動詞が多く時制が揺らぐ感じが思い出と現実を行き来している印象を生んでいて、「鼻歌が出る」ことに気づくような一字空けも巧みだなと思います。
作中主体は夫が寡黙な理由を何となく知っていて、あえて呼んでいるような印象。素直な生活詠のようで、下の句に深い想像の余地が残されているところがぐっときました。
「踊るのを見てゐた」だけでも物語性があるのだけどそれを比喩で締めくくる展開でもう一層物語が深まる印象があります。やがて消えていく記憶の側になったということでしょうか。
575+577、かっこよすぎる。意味が多重化する展開と句の展開が揃っていて気持ちいい。初句がひらがなに開いているのも少しずつ形態〜記憶に焦点が合う印象を強めています。
春の来る方角と、たった一回振り向くというフレーズでくびれが二つある感じ。言い切り方がかっこよくて、四季への理解という形でこの世への理解が一次元進んでいるのでは?と思わせる説得力がありました。
内視鏡検査を受ける一幕のよう。一つ前の歌(年若き二人の検査技師の着るビニルのエプロン鮮やかな青)との対比が効いています。自分の文字通り内側に鮮やかな面があると知ったのち、導き出される結果が服装の変化というのが心地よいです。
三句目で降り積むものが「雪の気」と明かされ、あれっと思わせる。そこからぐんと概念的な世界に誘導する流れがよいなと思いました。
保護下の環境からの解放の比喩と読みました。下の句の意味的密度と語感の緩急が巧みです。