見出し画像

ひとり出版社をつくる④「三人四脚」

一冊の本づくりにはたくさんの人たちがかかわっています。著者と編集者を中心に装丁家、DTPデザイナー、校正・校閲者、印刷会社、ライター、そして出版元となる出版社です。

ざっとあげてもこれだけのプロがかかわり、一冊の本ができ上がります。

なかでも書籍ライターの立場でいえば、著者、編集者、ライターの三者のつながりが深いです。この三者が打ち合わせや取材などを通じて長い時間を過ごし、原稿についてあーでもないこーでもないと意見を出し合い、修正を重ね、入念に彫琢して、珠玉の原稿が完成に近づいていきます。

この三者のやりとりがうまくいかなければ「いい本」はできません。当たり前だけど、これは絶対にいえる。

ではうまくいく・いかないは何で決まるのか。

それはベタですが「信頼」だと思っています。お互い信頼し合い、リスペクトし合うことで心が通じ合い、やがて阿吽の呼吸、とはいわないまでも、「やっぱり思いは同じでしたね」といったふうに不思議と考えや方向性が一致し、本づくりが進んでいく。ぴたりと息のあったふたりの二人三脚のように。まさに三人四脚のものづくりです。

この三人四脚が成立するのは、担当編集者が、所属先の出版社から信頼して仕事を任されているケースに限ります。編集者が自分の裁量で書籍づくりをおこなえる状態にあるとき、編集者は自身の力を存分に発揮し、かかわる人たちとガチンコで対峙できるのだろうなと想像します。

反対に、編集者の思いと所属先の出版社の方向性が違えば、せっかく三人四脚で本づくりが進んでいても、横やりが入って内容がねじ曲がり、三者の意識がかい離し……といろいろ不都合が生じてきます。

その意味では、三者+出版社、この四者が同じ方向を向いていなければいい本をつくるのは難しいといえます。

(ここでは書籍ライターとしての立場を軸にしていますが、もちろん装丁家やDTPデザイナー、校正・校閲者などとの関係づくりも大事です。ぼくはライターなので原稿ができ上がってからの本づくりのプロセスにかかわることは基本的にありませんが、きっとそうだと思います)

ぼくはやっぱりかかわる人たちが著者を中心に同じ思いを共有し、同じ方向を目指して本づくりをしていきたい。

もちろん外部の意見を取り入れることなく、内輪だけで盛り上がっていくと、次第に世間の「相場観」からかい離した本ができ上がりかねません。外部の意見を取り入れるしくみが求められます。

そのうえで、同じ思いを共有した本づくりをするための究極の方法、それは自分で出版社をつくってしまうことだと考えました。

下請け的な立場の編プロではなく、ぼくがひとり出版社を立ち上げようと思ったいちばんの理由です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?