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3冊目新刊『カンのメンテナンス』の制作の舞台裏

2021年5月25日、スタブロブックス3冊目の新刊書籍を発売しました。

その名も……『カンのメンテナンス』。

カンのメンテナンス影あり

中小企業経営者に向けたビジネス書ですが、一見すると自己啓発書のようなタイトルです。

なぜビジネス書なのに、「カンのメンテナンス」という一風変わったタイトルをつけたのか。

著者で中小企業診断士の冨松誠先生との出会いから、打ち合わせの内容、提案した企画の変遷まで、一連の制作プロセスを振り返りながら、このタイトルに行き着いた理由について語ってみたいと思います!

冨松誠先生との出会い

スタブロブックス代表の私はブックライター(本を出す著者に成り代わって一冊執筆する仕事)時代、ビジネス書の執筆を多く手がけてきました。

だから自分の出版社でもビジネス書を出したいなあ、と、考えていたわけではありません。むしろ逆でした。大手出版社がしのぎを削る主戦場のジャンルなので、自分の出版社で出すには敷居が高いと思っていました。

にもかかわらず、3冊目にして敷居をまたいでビジネス書を出すに至った背景には、著者の冨松誠先生との出会いがあります。

スタブロブックスを立ち上げた際、脆弱な資金力を補うために小規模事業者持続化補助金の活用を考えました。小規模事業者持続化補助金とは、販路の開拓や生産性を高める施策の経費の一部を支援してくれる国の補助金制度です。

この持続化補助金に申請し、採用してもらうためには経営計画書を策定しなければなりません。

ブックライター時代にはスタートアップ関連の書籍の執筆も経験し、計画書のポイントをさも熟知しているように原稿を書いたり、金融機関に融資姿勢を取材したりもしましたが……いざ自分の計画書をつくろうとすると思うようには書けないものです。(知識で知っているのと実践するのとでは大違い!)

それでも経営計画書を何とか完成させ、地元の商工会経由で紹介された専門家のアドバイスを受けることになりました。その専門家として出会ったのが、『カンのメンテナンス』の著者、冨松誠先生だったのです。

私が作成した経営計画書はWORDのページ換算で14枚、文字数は1万5000字ほどもありました。実際にはそこまでの計画書をつくる必要はなかったのかもしれません。でもやるからには自分の経験や強みを棚卸し、計画にしっかりと落とし込みたかったのです。

いずれにせよ、単純にボリュームが多かったので、てっきり事前に目を通してもらい、打ち合わせの当日にアドバイスをもらう流れかと思っていました。が、そうではありませんでした。

打ち合わせの当日に計画書のデータを商工会のPCに入れ、モニターに映し出しながら、冨松先生にその場で読んでもらい、その場でアドバイスを受ける段取りだったのです。

しかも時間は1時間のみ。この短時間で長文の計画書に目を通し、アドバイスなんてできるのだろうか。読むだけで時間がかかるし、複雑奇怪な出版業界の特徴や現状、課題をこちらから説明するだけで終わってしまうのではないか。

内心でそんなふうに思いながらコンサルを受けたわけですが……結論をいえば、冨松先生は出版業界の特徴をすぐ理解されたうえ、計画書の問題点を鮮やかに指摘し、私の強みを活かした内容にブラッシュアップしてくださいました。

言葉尻などの些末な修正ではありません。構成自体を変えてしまうほどの根本療法です。それを1時間という限られた時間内で、いとも簡単にやってのける(ように見えた)冨松先生のコンサルを受けながら、(すごいな……)と思ったのがその時の印象です。

その後、地元の加東市商工会を通じて小規模事業者持続化補助金に申請し、無事に通過。その結果の報告を、お礼をかねて冨松先生にメールでおこないました。この一連のやり取りがご縁となり、今回の本の出版に至ったのです。

冨松先生のご出身の明石市は、当社の所在地である加東市と同じ播磨地域にあります。さらに冨松先生が事業基盤とされているのは神戸や大阪などの関西圏。出身地が近く、同じ関西圏で活動するもの同士、手を組んで本をつくりましょう! と意気投合したのでした。

キックオフミーティング

はじめての打ち合わせは2020年8月3日。神戸市西区、神戸市営地下鉄「西神中央駅」の近くのファミレスでおこないました。

その日は何かを決めるのではなく、つくりたい本のイメージや方向性を冨松先生からヒアリングするのが目的でした。

冨松先生の話を聞きながら、気になったポイントはつぎのとおり。

・50人までの小さな企業はPDCAを9割回せていない
・それはなぜかといえば、社長のマンパワー頼みで組織が動いているから
 =しくみができていないから
・だからといって大手コンサルに丸投げする中小があるが、それでは実態に即した計画にはならずかけ声倒れに終わる
・社長がプレイングマネジャーの小さな企業で大切なのは、見たい数字をいかに簡単に見える化するか

当日のメモの実物を、恥をしのんでお見せしましょう↓

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こうして自分のメモをあらためて見ると、おそろしいほど字がきたないのが再認識できます。(ちなみに当時はレッツノートXZを使っていましたが、めちゃくちゃ書きにくく、後日iPadに変えた経緯があります)

冨松先生の話の中で、もうひとつ面白いと思ったのがここです。

・見たい数字=自社の経営実態を見える化する方法は、極論すると4つに絞り込める
・その4つとは、「並べる」「比べる」「足す」「引く」
・この4つのマジックツールで会社を分析すれば現状が明らかになり、結果、儲かりまっせ

やはり私の見苦しいメモもお見せしましょう。

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企画提案

以上の打ち合わせの内容をもとに、最初にご提案した企画概要と装丁案を公開します。

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なおこの装丁案は、著者にイメージをつかんでもらうために、私がパワーポイントで作成したあくまでも案です。とある書籍と類似していると突っ込みをいただきそうですが、すみません、ご容赦くださいませ……。

企画のポイントは、50人までの中小零細企業の社長さんにターゲットをしぼった点です。中小零細企業の身の丈に合った数字の活かし方を学んで売上アップにつなげましょう、しかもその方法は簡単でっせ、という内容です。

2度目の打ち合わせ

上記の企画をたたき台にして、2020年9月11日、2度目の打ち合わせを西神中央駅のショッピングセンター内の喫茶店でおこないました。

まず結論をいうと、今回は「PDCA」は全面には出さないというのが冨松先生の思いでした。というのも冨松先生の前著がPDCAをテーマにした書籍だったからです。

私はその前作を引き継いだ案もアリかなと思い、あえてPDCAを軸にしてみましたが、今回は「ちょっと考えていることがあって……」と。

それは「思い込み」の見える化でした。

中小零細企業の支援現場では、社長がさまざまな思い込みにとらわれて業績が悪化している、ところが当の本人の社長は自分の思い込みには(当然ながら)気づいておらず、結果として見当違いの対策に取り組んでさらに業績を悪くしている、というのです。

当日のメモ書きを見ても、やはり「思い込み」の話から入っているのが分かります。

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このときからタブレットをiPadに変えて抜群の書き味になりましたが、字のきたなさはむしろ増している気がします。(ちなみに右側の赤字は、打ち合わせ時の左側のメモがあまりにもきたなすぎて時間が経つと読めなくなると思い、もう一度、書き直したものです。それでもきたない。onenoteはキャンパスのサイズを柔軟に変えられるのがいい)

現場改善の「事例」に着目

この日の冨松先生の話では、書籍に採用することになった面白い話が目白押しでした。

その面白い話とは、支援現場の「事例」です。思い込みにとらわれた社長さんに気づきを与え、現場改善し、業績を立て直した実例を、20~30社ほど記録しているとおっしゃるのです。

ある企業は得意先の倒産を機に業績が急落し、以降、じり貧状態が続いていました。そこで冨松先生が経営分析すると、業績悪化のターニングポイントは得意先の倒産より前だと分かったのです。

ではその本当のターニングポイントとは……(ここでは伏せますが、上のメモで読める人は読めると思います)、なんと家庭の事情によるものだったのです。

まさかの本当のターニングポイントに驚いた社長でしたが、冨松先生に曰く、「中小企業の社長は本当にやり手。自分の思い込みに気づきさえすれば、やるべき対策を瞬時に理解される」とのこと。

思い込みが「見える」とやるべき対策が「分かり」、正しく「動ける」。だから、会社が「変わる」。冨松先生の役割とは、思い込みを見える化し、社長に気づきを与える点にある――そんな流れが見えてきました。

その他、面白い事例をいくつも聞かせていただいた結果、今回の本はPDCAの専門的な話や会計の難しい話をするのではなく、「現場の改善」に着目した内容にしましょう、と意見が一致したのでした。

思い込みを見える化する方法とは?

冨松先生の役割とは、思い込みを見える化し、社長に気づきを与える点にある。

ではその気づきを与える方法とは?

この方法が小難しい方程式では中小企業の社長さんには伝わりません。なるべくやさし方法が望ましい。

そこで冨松先生に確認すると、前回の打ち合わせ時に聞いたのと同じつぎの4つの方法をあげてくれました。

「並べる」「比べる」「足す」「引く」

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業績悪化の背景には何らかの「思い込み」がある。

その思い込みが業績悪化の本当の原因を覆い隠している。

だから改善策を打つ前に、その思い込みが本当か調べよう。

その思い込みを解析するツールは難しい方法ではなく、
小学生でも分かる「並べる」「比べる」「足す」「引く」の4つだけ!

こんな展開が見えてきました。

タイトル、降臨

さらに、打ち合わせ時に冨松先生がぽろっと語った言葉に私のセンサーが反応しました。

それは「感覚のメンテナンス」です。

当時のメモを見返しても、赤でぐるぐるしています。

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冨松先生:「社長に気づきを与え、思い込みを解く。これは〝経営の感覚をメンテナンス〟しているようなものなんです。社長の感覚は鋭いけれど、時に大きく外していることがある。しかもそのズレが業績悪化の元凶になっていることも。そこで簡単な分析ツールで社長の感覚をメンテナンスすることで、思い込みに気づいてもらい、正しい対策にかじを切ってもらえます。結果、業績が改善するんです」

中小企業の現場を知る冨松先生だからこそのこんな話がベースとなり、微調整を繰り返しながら「カンのメンテナンス」というタイトルに着地したのでした。

ちなみに販促文の一部はつぎのとおりです。

中小企業社長の持ち味といえば、経験に裏打ちされた鋭い経営感覚。独自の嗅覚=カンはスピーディな意思決定を支える拠り所になる一方、知らぬ間に会社の実態(数字)とのズレが生じ、経営のかじ取りを間違える原因になることも。
そこで必要となるのが「カンのメンテナンス」。
「並べる」「比べる」「まとめる」「分ける」――4つのデータ分析で会社の数字を分析し、社長の経営感覚と会社の実態のズレを診断。会社の本当の姿が見えるようになり、正しい経営判断ができるように。
本書では、中小企業の現場目線のコンサルティングに長けた著者が、中小企業の現場で役立つ「数字の使い方」を解説。中小企業社長が正しい経営感覚を取り戻し、会社を成長に導くための方法を、豊富な実例も交えながらお伝えします。

原稿執筆⇔編集作業の往復でブラッシュアップ

以上の打ち合わせのあともやり取りを続け、本書の基本コンセプトを「社長の経営感覚をメンテナンスする」に確定し、内容としては「現場改善の事例」に重きを置くことに決定。

今度は、冨松先生が書籍全体の構成案を出してくださることになりました。その骨子を私のほうで確認&調整したうえ、まず冨松先生にサンプル原稿の執筆を依頼。その内容を私が確認してチェックバックしたのち、以降は事例や章の区切りごとに原稿をアップしていただき、その都度、私が編集してチェックバックするという二人三脚で進行していきました。

と、

言葉にすると簡単なように見えますが、冨松先生の原稿執筆と私の編集作業の往復はそれは数えきれないほどに……。

この往復のやり取りは個別具体的すぎる&細かすぎるので公開できるものではありませんが、私の編集作業に時間がかかったこともあって半年ほども費やすことになりました。

(一連のやり取りの中で、たとえば4つの手法(「並べる」「比べる」「足す」「引く」)を最終的に「並べる」「比べる」「まとめる」「分ける」に変更するなど無数の試行錯誤を重ねています)

一流のデザイナーさんに依頼!

以上のながーい原稿制作の旅を終え、ようやくDTP入稿したのが2021年2月の中頃。本文デザインは、大手出版社のビジネス書を数多く手がけておられる松好那名さんが担当してくださいました!

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松好那名さんには、当社1冊目の尾﨑里美さんの書籍『いつか幸せではなく、今幸せでええやん!』も手がけていただきました。

書店で本を片っ端からパラパラめくり、好みの本文デザインをされているデザイナーさんを調べてメモした結果、書体、余白、全体の雰囲気……すべてにおいて私がいちばん好みの本文デザインをされているデザイナーさんが松好那名さんだったのです。

でも、ご連絡先は分からない。ここでは方法は差し控えますが、偶然も手伝って松好さんとつながり、ダメ元で1冊目のデザインをお願いしたところ、快く引き受けてくださったのです。本当に感謝しかありません。

『カンのメンテナンス』の本文デザインは2色展開を採用。私の思いや本書の内容、著者プロフィール、希望するデザインの方向性などを資料にまとめ、松好さんと打ち合わせをおこないました。それを受けて本文や目次、事例の組み方など松好さんにデザインをご提案いただき、イメージ以上の素晴らしいデザインに仕上げていただきました!

こちらでためし読みをご覧いただけます。
https://hanmoto9.tameshiyo.me/9784910371023

装丁デザインは、なんと井上新八さんに担当していただきました! 説明するまでもなく、ビジネス書のベストセラー、ロングセラーを数多く手がけておられるデザイナーさんです。

井上さんも『いつか幸せではなく、今幸せでええやん!』で初めてお願いし、今回の『カンのメンテナンス』が2度目の依頼でした。やはり書店で印象に残る装丁デザインの本を片っ端から手に取り、クレジットを調べてメモした結果、いちばん多く手がけられていたのが井上新八さんでした。

もうこの方しかいない! と思い、なぜ装丁デザインをお願いしたいのか、へたくそながらも飾らない素の文章をしたためてメールしたところ、良いお返事をいただいたのでした。

松好さんも井上さんも、普通に考えると当社のような出版社が依頼をさせていただけるような方ではないです。こうして担当していただいて幸せものです。

装丁デザインの打ち合わせでもやはりデザイン依頼書を作成し、それをもとに井上さんと打ち合わせを実施。

「タイトルの〝カン〟の意味が初見でどうとられるか、ですね」「帯まで読むと分かるけれど、タイトルだけで判断された際に意味を正しく伝えるしかけが必要かもしれません」「タイトルと本書の内容をいかにリンクさせるか……ちょっと考えてみます」

そう核心をつくご意見を頂戴し、後日、あげていただいたデザイン案はいずれもタイトルの懸念を見事に払しょくする、さすがとしかいいようがない案ばかりでした! (案の公開は差し控えます)

印刷入稿後にさらに修正!?

それらの案の中でも最終的に採用させていただき、印刷入稿した際の装丁デザインがこちら!

旧表1

じつはその後、印刷入稿後の色校チェックで部分修正し、最終的につぎのデザインに確定しました。

カンのメンテナンス書影

変更箇所、お気づきでしょうか?

そうです。サブタイトルです。

書店営業の際、書店員さんから「サブタイトルがこれでは分かりにくい」とのご意見が多発したのです(笑)。

会社の本当の姿が見えてくる――私自身は気に入っていたのですが、本を見分けるプロの書店員さんは良し悪しを瞬時に判断されますので、ぐうの音も出ません。めちゃくちゃ叱ってもらった書店員さんもいらしたほど(汗)。

悩んだ結果、「カン」の意味を補強するために「経営感覚」をサブタイトルにつけたのでした。

以上が、ビジネス書なのに「カンのメンテナンス」というタイトルになった一部始終です。最後は駆け足の説明になりましたが、もう7000文字にとどきそうなのでこのあたりで終了します。

なお、本書の概要はPRタイムズのリリースにまとめました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000077719.html

また、こちらの書評で本書をうまくとらえてくださっているので、紹介させていただきます。
https://bookrev.horiemon.com/entry/2021/06/11/220000

著者は中小企業診断士の冨松誠さん。
企業再建に関わるなかで経営者がもつカンの素晴らしさに気付くのとともに、そのカンが引き起こす問題にも直面します。
本書は、そんな良い面も悪い面も持っている『経営者のカン』を整えて、業績を立て直してきた著者のノウハウがしっかり凝縮されている良書になります。
経営者は海千山千超えてきた猛者であり、今までの自身の経験則に基づいて経営の困難を乗り切ってきました。しかし、時代が変わって現場も変わると自分の経験則が仇となってしまうケースもあります。そのような古い情報をもとに経営を行っていくことに対しては数字でメスをいれてバイアスを取り除き、フェアに判断できる状況にすることが重要になります。例を取り、本書にはそのような解決策が実例で挙げられているのがストロングポイントとなっています。
業績が伸び悩んでいる経営者や、今後起業を考えている方は一冊持っておくと助かると思います。
(HIU公式書評ブログ「【書評】都合よく解釈すると危険!『経営感覚を整えるためのカンのメンテナンス』」より)

アマゾンのレビューの現状の中では、このご意見が私にとって勉強になりました。

分析から気付き、行動を変えて成果を出す。当たり前のことですが、現実にできている会社は多くありません。
本書の通り中小企業において一般的な財務分析は信頼性と具体性に欠くため、気付きに至らないことが多いからです。
紹介されている事例のように会社に合わせた分析をすることで得られるヒントがあると思います。
しかし難しさも感じました。
本書で出てくる分析や改善策自体は普通に実践できると思います。
ただ、この会社にこの分析を当てはめるという判断が会社独力でできるか疑問です。そのため星4としました。
ですが考え方は正しいと思いますしヒントになることも多いです。
(アマゾンレビューより)

以上となります。
最後まで目を通していただき、大変ありがとうございました。


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