【パイロットの視力】目が良いの?眼が悪いとなれないの?について解説
パイロットの資格を持っていると視力について良く聞かれます。
パイロットで目がいいんでしょ?
目が良くないとなれないんでしょ?
結論としていえば「そうでもない」という回答になってしまいます。
「目が良いor悪い」と単純に答えづらいです。
なぜかと言うと、一般的な「視力」という言葉を当てはめると、パイロットの基準にあるのは0.7以上。ですので、そういう意味では「そうでもない」。
ただ、一般的に言う「視力」とか「目が良い」という表現と、パイロットになるために必要な基準は違うので、単純に「目が良い・悪い」では答えづらい内容になります。
そう答えると「動体視力とかですか?」と聞かれますが、それも違います。
パイロットには動体視力の検査項目はありません。
では、実際どんな検査基準になっているのかを説明します。
一般的に言う「視力」のイメージ
おそらく皆さんが思っている「視力」のイメージは、今まで経験したことがある視力検査から来ているはずです。
健康診断
身体検査
車の免許をとるとき
メガネ・コンタクトを作るとき
アルファベットの「C」のようなマークを5m離れた場所から見て、どのサイズまで見えるか。
「上」とか「下」とか「右下」とか「見えません」とか言うアレ。
これはランドルト環と呼ばれる検査になります。
これで視力をはかった結果、「2.0」とか「0.1だからメガネが必要」という結論になります。
これも確かに視力検査ではあるんですが、あくまでも視力の一部にすぎません。
ですので、ランドルト環の検査で視力2.0だったとしても、それでパイロットになれるかどうかは分かりません。
では他に眼に関する検査がどんなものがあるか見ていきましょう。
パイロットになるために必要な視力
まず、パイロットになるために必要な資格が3つあります。
・航空従事者技能証明
・航空身体検査証明
・無線従事者の資格
この中で航空身体検査の中の視力の項目に合格できるかどうかがポイント。
ちなみに航空身体検査は「第1種」と「第2種」がある、身体検査の基準も違います。
1種:事業用操縦士、定期運送用操縦士
2種:自家用操縦士
2種の方が少し基準がゆるくなっています。
職業としてパイロットを行う人がどのような基準になっているかを話すので、ここから先は「第1種」の内容とします。
航空身体検査の「視力」の内容
それでは身体検査の内容を見ていきます。
航空身体検査に関する情報は以下。
航空従事者の医学適性や航空身体検査の証明について/国土交通省 https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000…
一般財団法人航空医学研究センター
https://www.aeromedical.or.jp/index.htm
■航空身体検査:眼
遠見視力の基準です。次のどちらかの条件を満たす必要があります。
これだけだとよくわかりません。
「航空業務に支障をきたす恐れのない」という表現はよくでてきます。
ここの判断は航空医学専門の医師でないとわかりません。
別紙に明確な判断基準が掲載されているものもあれば、医師の「判断」になってしまうものもある。
■航空身体検査:視機能
「視機能」という項目の内容をリストアップします。
・遠見視力
・近見視力
・両眼視機能
・視野
・眼球運動
・色覚
以上です。全部クリアしてください。
-遠見視力
ここが一般的に言う「視力」のイメージに該当するもの。
裸眼だと0.7以上、メガネでもOKという基準ですので、それほど眼が良いわけでもありません。
ちなみに眼鏡着用の場合は予備眼鏡の携行が必須です。
-中距離・近見視力
近距離に焦点をあわせられるかどうか。
検査台にアゴを乗せて、目の前30cm程度の距離に視標をだされて、そこに小さな字で書いてある小説の一文のようなものを読んでくださいという検査をした記憶があります。
-両眼視機能
斜位や斜視など。左右の眼にズレがないかどうがの確認。
左右の眼別々の映像を見せられて、それが重なる部分に合わせることができるかどうか。誤差が適正範囲内であるかどうか。
深視力もやった記憶があります。
3本の棒が左・中央・右と並んでいて、中央の棒だけ奥⇔手前に移動する。
3本の棒が横並びになったところでボタンを押して止める。誤差が確か2cm程度であれば合格だったと記憶しています。
-視野
視野は言葉の通りどこまで見えるか。
眼球は正面を向いたままで、上下左右斜めそれぞれ基準値以上の視野があることの確認をする。
基準値は以下。
-眼球運動
不適合条件に複視・病的眼振というものがあります。
複視:一つのものが二重に見える
病的眼振:眼球が痙攣したように動いたり揺れたりする
こういった症状がある人は不適合になってしまいます。
-色覚
みなさんどこかで見たことがあるであろうこれ。石原表というらしいです。
特定の色や色の差がわからない人は航空身体検査では不適合になってしまいます。
コクピット内の計器は数字だけでなく、色でも状態を判別するので色覚の正常性も必要です。
コンタクト
昔はコンタクトNGだったが、条件を満たせば許可がでるようになったよう。
しかし、航空法とは別に社内規定などで認められない可能性はあります。
例えば、航空自衛隊の戦闘機とか高G環境で飛ぶので、コンタクトは許可されないんじゃないかと思います。
レーシック(屈折矯正手術)は不適合
レーシックは基本的には不適合です。
しかし、特定の条件を満たせば不可能ではないようです。
5-1
屈折矯正手術の既往歴があり、屈折矯正手術後6ヶ月以上を経過し症状が安定し、視機能が基準を満たしている者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、手術記録を含む臨床経過のほか、以下の検査結果を付して申請すること。
(1)視力の日内変動(同日3回以上の測定結果)
(2)コントラスト感度
(3)グレアテスト
(4)角膜形状解析
5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、症状が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
引用:航空医学研究センター
一応不可能ではありませんが、これとは別に航空会社の規定等もあると思いますし、前例も少ないので、もし該当する人は詳しく調べてみた方が良さそうです。
航空法の内容は定期的に変更・修正されますので、最新の情報を見てください。
まとめ
Q:パイロットって目が良くないとダメなんでしょ?
A:矯正視力で0.7以上です。
こんな感じの回答でいかがでしょうか。
では、できるだけナチュラルな方法で視力維持頑張りましょう。
以下引用元など
https://www.aeromedical.or.jp/manual/pdf/r010617_323.pdf
航空従事者の医学適性や航空身体検査の証明について/国土交通省 https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000…
一般財団法人航空医学研究センター
https://www.aeromedical.or.jp/index.htm
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