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催眠誘導に対する考え方と変化

以前から

「催眠誘導は意識/無意識に対するある種の説得行為」

の持論を持っていたわけですが、この考え方に若干の更新がありました。

「全ての催眠は自己催眠である」って本当?

この考え方に至った理由については、「全ての催眠は自己催眠である」みたいなことを提唱していた人がいたからです。(エミール・クーエだったかな?)

つまり、催眠術師が行うのは、被験者が自発的に催眠状態になるように導くことになります。

凄く雑に言うと、催眠術師は被験者に向かって「お願いします、催眠状態になってくれませんか?できれば腕が固まってくれると嬉しいです。あ、意識も無くなった感じでお願いします。できれば、起きたときにはこの事を忘れて、別の合図があればその時にまた反応して下さい。」とお願いしていることになります。

もちろん、言い回しは全然違いますが、催眠誘導でやっていることの基本はこれであり、トリックを使うのも、一部の現象を催眠によるものだと錯覚させ、自発的に催眠状態へ移行させる手法と考えることができます。

そこで、サブスケールなどの考えを適用して、掛かりやすい暗示を選別し、徐々に強い催眠反応を起こし…ry

この考え方は特に違和感も無く、大きく間違っている感じもしません。

ただ、「全ては自己催眠である」と考えるには、個人的に気になる点が幾つかあります。

1.被験者が反応しやすい暗示の種類(サブスケール)があることの説明が不十分である。
2.自己催眠の才能のある人であれば、最初から強い催眠反応が出てもおかしくないが、実際にはそうではない。

3.全て自己催眠である場合、自己催眠と他者催眠に差がある理由に説明がつかない。
4.自己催眠である場合、被験者の自発性が損なわれないはずだが、犯罪行為に巻き込まれているにも関わらず催眠が解けないケースが存在する(本人が望まない暗示が成立する理由の説明がつかない)

「全てが自己催眠」と言うにはちょっと例外が多いんじゃないかと…

「催眠の一部は自己催眠である」くらいが妥当かと思います。

ちなみに、4つ目にに関しては、催眠を使った犯罪は結構珍しく、日本国内だとほとんど聞きませんが、海外だと有罪判決が出ている例もあります。特に性犯罪は犯人の逮捕率が高く、訴えられたケースが多い印象があります。ここでの要点は、未遂では無く、事後に訴えられたケースがあるってことです。

事後に訴えられるってことは、少なくとも実行に移せてしまっているんですよ… もし「全てが自己催眠」であれば、被験者の主体性は損なわれず、掛かりたくない暗示は拒否できるはずですが、そうではなかったということです。

もちろん、認知を歪め、自発的にそう思うように上手く仕向けた可能性もありますが、後に訴えられていることを考えると、その可能性も低いです。

というのも、上手く仕向けた場合は、仮にでも同意が取れているはずなので、思い出したからと言って訴えられ、「同意なし」による有罪とは矛盾するんじゃないかと…(もし、仮に「全てが自己催眠である」という主張が裁判で通るのであれば、被害者は同意してたと見なされ、有罪が成立しないのでは?)

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