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tribute 2022/02

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音楽をシェアするマガジン tribute の2022年2月号です。 tributeに記事をシェアしてくださる方を募集しています。
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密室的サウンド美あふれるシオ・クローカーの新作

 先月にこの原稿でテオ・クロッカー(以後、日本盤発売元表記に揃えてシオ・クローカー)の新曲について書いた。新譜の「Love Quantum」を聴く時間がとれていなかったのだが、ようやく聴けて、結論として、やはりクローカーの新譜が大いに好みであることがわかった。と、同時に「そうくるのか」という驚きもある、不思議な魅力を持った作品だった。  その前回の原稿で、収録曲の『TO BE WE』を「ギル・スコット=ヘロンを彷彿させる」と書いていた。ふたを開けてみれば、この曲に限らずアル

祝来日! 再結成ブラック・クロウズはドラムがいい

 ブラック・クロウズが今年の11月に、およそ17年ぶりに日本でライブをやる! 彼らのインスタで知って、テンションが上がったのだ。そこには東京公演として立川の文字が……意外なチョイスだなと思ったが、サム・ゲンデルや坂本慎太郎が出たフェスをやったステージだ。  各音楽ニュースやスポーツ紙にも取り上げられていた。  クロウズは活動休止と再結成を繰り返していて、今回が3度めの再結成中となるようだ。ロビンソン兄弟以外のメンバーはそのつどラインナップが異なり、バンド活動期間中でも入れ

マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテットが弾き倒す強靭な『Inter-Are』

 マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテットの新作を、10月にコアポートが日本先行発売するという朗報を耳にして、小躍りしているのは私だけではないだろう。  ちょっと先のようだが、もう6月も終わりが見えており(恐ろしいことに)、もう少しといえばもう少し。しかしその時間が、カルテットの2枚のアルバムや関連作の復習をしておくにはちょうどよいのは間違いない。 マーク・ジュリアナの「ジャズ・カルテット」  私がマーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテットのアルバムを聴いたのは、1stの20

テオ・クロッカーの新作が楽しみすぎる

 2021年リリースの「BLK2LIFE II A FUTURE PAST」がクソかっこよかったテオ・クロッカー(Theo Croker セオ、またはシオ・クローカーの読みの方がよいのか)の新曲が4曲Spotifyに入っていた。 ……これは好みすぎる。前作よりも重心低めで、生演奏が前景化している。  この一連のシングルでも前作の大半の曲のように、楽曲ごとにフィーチャリング・ミュージシャンと組んでいる。これらは、今月末に発売となる「LOVE QUANTUM」からの先行トラックだ

エレキギターで奏でるアルヴォ・ペルト、そしてグルジエフ

ペルトの宗教曲をギターで聴く  先日ふと、しばらく耳にしていなかったアルヴォ・ペルトが聴きたくなった。ペルトが書いた宗教的な楽曲群を中心に、声楽曲でも器楽曲でも、気分によって楽曲やアレンジを選びながら一時期よく聴いていた。スタジオ録音(ハルモニア・ムンディ盤など)がメインだったが、YouTubeでよく知らない合唱団が歌うのを聴いては、ヴォーカルアンサンブルの妙はもちろんのこと教会やホールのリヴァーヴにもうっとりしていた。  だからそれは、ヘヴィローテーションとなってnote

フラッシュ・ゴードンのテーマ

■映画TEDTEDっていう映画ご存知でしょうか?かなりロックな映画で、友達のいない男の子がクリスマスプレゼントにもらったぬいぐるみのテディ・ベアに本当に話ができるようにとお願いをすると、クリスマスの奇跡が怒って、テディ・ベアに命が宿って、本当に話せるようになるという映画なんですが、そんなまさしく映画的な出来事が、冒頭の10分のでそのぶっ飛んだ設定を前提としてサラッとやった後、少年と一緒に歳を取ったテディ・ベアがだらしない大人としてどう生きているかという話。まぁとんでも設定の面

ベッカ・スティーヴンスの古層への旅②

 本作の成り立ちやベッカ・スティーヴンスとネイサン・シュラムの発言は、noteや日本盤ライナーノーツで読める柳樂光隆氏のインタビュー(以降、文章内のインタビューは柳樂氏が行ったものを指す)で十全に味わえるので、ぜひご一読願いたい。各アレンジャーのプロフィールにもしっかり踏み込まれて、楽曲への理解が深まる構成になっている。カバーとオリジナルを一望できるプレイリストもある。 歌とストリングスとのリニアな併走  「ベッカ・スティーヴンス|アタッカ・クァルテット」についても考える

ベッカ・スティーヴンスの古層への旅①

現代ジャズの旗手による2つの新機軸  昨秋と今春に続けて、ベッカ・スティーヴンスが2枚のリマーカブルな(字義通り素晴らしさと珍しさが両立する)アルバムを発表した。21年9月の「ベッカ・スティーヴンス&ザ・シークレット・トリオ」と22年3月の「ベッカ・スティーヴンス|アタッカ・クァルテット」というセルフタイトルの2作。スティーヴンスが座長を務め、それぞれザ・シークレット・トリオ、アタッカ・クァルテットというグループとの合作で生み出された。  両アルバムの概要は日本盤制作のコア

News Of The World の怪ロボット

今回は他のSeason10のQueenのお話しとは少し違って軽い話しにしたいと思います。別に他のお話が重いという訳でもないのですが、音楽的な内容は無いよう、ってことです。 Queenはオリジナルアルバムを15枚リリースしています。このシーズンでもお話ししましたが、最初に買ったLPレコードは『The Game』で、これかQueenの中でというだけでなく、全音楽を通じて私が初めて買ったアルバムになるわけなので当然最初何ですけど、あとやっぱり"Bohemian Rapsody"が

ミシェル・ウィリスのカナダっぽさとアメリカっぽさ

ミシェル・ウィリスの新譜がすごくいい  ベッカ・スティーヴンスのインスタグラムで、ミシェル・ウィリスの新譜が出ることを知ったのが、4月13日のこと。すでにコアポートからフィジカルがリリースされていたのにまったく気がつかず(Amazonで探せなかった)、Spotifyで聴き始めたらとてもよいアルバムで、前作の「See Us Through」も好きだが、断然この「Just One Voice」のほうが私の琴線に触れたのだった。  例によって、柳樂光隆 氏がnoteにインタビュー

We Are The Champion の50年

2021年の11月から、Queenを愛し、愛されたここ日本でQueen50周年展が開催されています。(2022年4月時点で大阪で開催中) Queen結成50周年に寄せて、思い入れ深いバンドQueenについて何回かお話ししています。 ■Queen結成10年の頃 僕がQueenを知ったのが1981年のことなのです。フレディ、ブライアン、ロジャーにジョンが加わったのが1971年のことらしいので、結成10年くらいのタイミング、丁度それまでの活動を総括するようなベスト盤グレイテストヒ

The Game のキラキラしたジャケット

皆さんは一番最初に買ったレコードというものを覚えているでしょうか? 子供の頃に親から買ってもらったもの、買い与えられたものではなく、自分の小遣いで、買ったものであれば、やっぱりそれなりに思い入れがあって覚えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。 私の場合もやっぱりそうで、よく覚えています。 seasson10はQueenのお話しをしていますので、やっぱりQueenの登場です。 ■It’s like episode I ? ミュージシャンのインタビュー記事なんかで、「

ボヘミアン・ラプソディ〜解放されず放浪する人〜

■映画ボヘミアンラプソディ 僕の友人の何人かは、僕と同じような『サブカル中年ネッチョリおじさん』だったりするんです。やっぱり、映画とか音楽とか漫画とか好きだったりして、漫画ソムリエなんていう新しい職業作っちゃった奴もいて、それはそれで面白かったりするんですが、やっぱりそれぞれ得て不得手があって、中には映画は大好きだけど洋楽ロックは全く聴きませんという奴もいたりします。 2018年の秋、その映画好きでロックはからきしの友人からこんなLINEが入ったんです。「明日、ボヘミアンラプ