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ときめきメモリアル無断改変事件

こんにちは。

 1994年にコナミから、PCエンジン版の「ときめきメモリアル」が発売され、大ヒットゲームとなったのですが、難攻不落のスーパーヒロイン藤崎詩織がラスボスだと話題になりました。

 ちなにみ、ゲーム内に登場する強敵をボスと呼んだのは、ファミコンゲームの「スパルタンX」がさきがけのようです。

 さて、今日はそんなときめきメモリアルのセーブデータを販売したことが問題となった「ときめきメモリアル無断改変事件」(最判平成13年2月13日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 コナミ株式会社は、プレイステーション版「ときめきメモリアル」を販売していました。ところが、福岡のスペックコンピュータ株式会社はプレイステーション用ゲームソフト「ときめきメモリアル」のストーリーを変えられるデータが入ったメモリーカードを輸入して販売していました。すると、このメモリーカードによって著作権が侵害されたとして、コナミは約1015万円の支払いを求めて提訴しました。

2 コナミ株式会社の主張

 「ときめき」のゲームは、そのストーリーが重要不可欠な骨格なんです。ゲームソフトは映画の著作物であり、そのストーリーが改変されるという同一性保持権を侵害されたことにより、恋愛シュミレーションゲームが成立しないほど、ゲーム展開が著しく損われました。これによって我々は、多大な精神的苦痛を受けたので、この慰謝料は1000万円を下らないはずです。
 また、スペックコンピュータは、「藤崎詩織」のキャラクターのアイコンを勝手に使っているので、その使用料相当額はメモリーカード1個あたり約208円×700本の14万6000円を損害として請求します。さらに、著作者人格権も侵害されたので、著作者として名誉を回復するための措置として、朝日、読売、毎日、日経新聞に謝罪広告を掲載することを求めます。

3 スペックコンピュータ株式会社の主張

 メモリーカードに収められているのは、単なるデータであってやなあ、メモリーカードを使用しても、正常にゲームを進めることができるんやから、ときめきメモリアルのプログラム自体を改変しているわけでもあらへんし、ストーリーを改変しているわけでも、同一性保持権を侵害しているわけあらへんやん。
 仮にやなあ、同一性保持権の侵害でやったとしても、そもそもわてらはメモリーカードを輸入して販売しているだけで、そのようなゲームをプレイして同一性保持権を侵害しとるのは個々のプレイヤーであってやなあ、我々がプレイしているわけやないので、著作権の侵害とはいえんやろ。
 ほんで、わてらの会社と個々のプレイヤーの関係が、キャバレーの営業主とそこで演奏しとるバンドとの関係と同じやちゅうけど、全然ちゃうわ。支配従属や指揮監督なんかあるわけないから、わてらに著作権侵害の責任があるわけあらへんやろ。

4 最高裁判所の判決

  問題となったゲームソフトは、ゲームを行う主人公が架空の高等学校の生徒となって、設定された登場人物の中からあこがれの女子生徒を選択し、卒業式の当日、この女子生徒から愛の告白を受けることを目指して、3年間の勉学や出来事、行事等を通してあこがれの女子生徒から愛の告白を受けるのにふさわしい能力を備えるための努力を積み重ねるという内容の恋愛シミュレーションゲームである。
 このゲームソフトにおいては、プレイヤーの能力値として体調、文系、理系、芸術、運動、雑学、容姿、根性及びストレスといった9種類の表パラメータと、女子生徒のプレイヤーに対する評価を示すときめき度、友好度及び 傷心度といった3種類の隠しパラメータの初期値が設定されている。そして、プレイヤーが選択できるコマンドが予め設定されるとともに、 コマンドの選択により上昇するパラメータと下降するパラメータとが連動するように設定されており、プレイヤーが到達したパラメータの数値いかんにより女子生徒から愛の告白を受けることができるか否かが決定される。
 このゲームソフトにおいては、初期設定の主人公の能力値からスタートし、あこがれの女生徒から愛の告白を受けることを目標として主人公自身の能力を向上させていくことが中核となるストーリーであり、その過程で主人公の能力値の達成度等に応じて他の女子生徒との出会いがあるという設定となっており、そのストーリーは、一定の条件下に一定の範囲内で展開されるものである。
 しかし、問題となったメモリカードを使用すると、入学直後の時点でストレス以外の表パラメータのほとんどが極めて高い数値となり、これがあこがれの女子生徒に合った達成度でプレイできるような数値である結果、入学当初から本来は登場し得ない女子生徒が登場するのである。
 スペックコンピュータは、専ら「ときめきメモリアル」のゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入、販売し、他人の使用を意図して流通に置いたので、他人の使用によるゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして、不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である。
 よって、スペックコンピュータはコナミに対して、114万6000円を支払え。

5 他にも「ときメモ裁判」がある

 今回のケースで裁判所は、「ときめきメモリアル」のパラメータをデータとして収めているメモリーカードを輸入して販売する行為が著作者の同一性保持権を侵害しているとして、約114万円の支払いを命じました。
 またこの事件以外にも、「どぎまぎイマジネーション」という似たような作品を作って儲けていた会社が、著作権侵害を理由に儲け以上の賠償金を払うことになった裁判もあります。著作権侵害には十分に注意する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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