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cakes連載〈「 おいしい」をつくる料理の新常識〉第13回余談『肉々しいミニマルハンバーグ』

cakesの連載の更新。今回のテーマはハンバーグ

ハンバーグは難しい料理で、肉種はやわらかくしたいけれど、繋ぎを入れすぎると肉の味が薄くなる。練ったほうがジューシーになるが、練りすぎると火を通したときのパサつきの原因に表面には香ばしい焼き目をつけたいけれど、火を加えすぎるとパサパサになる。表面を覆う〈なにか〉──例えばソーセージにおけるケーシング、餃子における皮のような──がないので、焼いているうちに肉汁はどんどん流出していく、という具合に矛盾だらけの料理です。

というわけで究極のハンバーグを求めるのは諦めて、既存のレシピのアップデートに徹しました。試作を重ねた結果、わかってきたのは『卵は入れない』『肉は練りすぎない』『玉ねぎは炒めない』という『3ない』。甘めの味が好みなら玉ねぎは炒めてから入れてくださいね。

ところでcakesのレシピでは玉ねぎのみじん切りを生のまま加えています。(できるだけ細かいみじん切りがいいのだけれど)これは肉を充分に練って、網目構造をつくった上で、玉ねぎのみじん切りを加えることで軽さを出しているわけです。これはシュウマイの肉種をつくる時の技法の応用。

というわけで逆に玉ねぎの量を減らせば肉っぽい味のハンバーグになる、というわけ。そこで紹介するのがこちらの『ミニマルハンバーグ』

ミニマルハンバーグ(1人前)
黒毛和牛挽き肉  150g
塩        1.5g
玉ねぎのすりおろし 20g
乾燥パン粉    5g
黒胡椒      適量

まずは玉ねぎから。肉の重さを出すために玉ねぎの存在感は少なくしたいところ。そこでおろしてから使います。

玉ねぎをすりおろすと大量の水気が出ます。

そこでドライパン粉で玉ねぎの水気を吸いとってしまいます。ここまでが複素材。

次に肉に塩を入れて練ります。

ボウルを傾け、押しつけるようにして、前後に木じゃくしを動かしているとひとまとまりになって粘りが出てきます。そうしたらOK。

玉ねぎのすりおろしとパン粉のペーストを加えます。写真の量が目安。玉ねぎの水分などによって量が異なるので、入れすぎには注意しましょう。

手で触ると肉の結着力がなくなってしまうので、二枚のラップに挟んで成形します。

厚さは薄めの1cmに。ハンバーグはやっぱり火が通りが悪いので薄めにするのが無難。

包丁で模様をつけておくとフランスのステークアッシェ風に。フランスのスーパーではこの状態で売られていますね。そんなにおいしいものではないのですが、安いのでランチに食べます。

表面に黒胡椒を振ります。薄いので片面だけで大丈夫。

香ばしさを求めて鋳物のフライパンを使ってます。強火にかけて充分に予熱したところに植物油を注ぎ、中火に落とします。

胡椒を振った面から焼きはじめます。

焦げ目がついたら裏返します。

反対側の面も2分間焼きます。本当は20秒おきに裏返したいところなのですが、崩れるのが怖いので、油をかけることで対応します。

火を止めて3分間、予熱で火を通します。

出来上がり。写真からジューシーさが伝わるか、と思いますが、これは黒毛和牛の挽き肉を使っているから。はっきり言ってずるです。辛目のマスタードとフライドポテトを添えるのがフランス流。

感じとしてはハンバーガーに挟んであるパティに似ています。黒毛和牛を使っているので、高級ハンバーガーショップの味でしょうか。材料を減らせば減らすほど肉の味は全面に出てきます。黒毛和牛の挽き肉を使っているのですからこれくらいミニマルなハンバーグもいい気がしますが、どうでしょう?

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!