牛乳でお酒を洗う? ミルクウォッシュパンチの作り方
久しぶりに21世紀料理教室の更新です。今日はミルクウォッシュというテクニックを使ったカクテルの紹介。名前の通り牛乳を使ってお酒を洗うことで、クリアーな味を生み出します。
まずはAの材料を計量します。ラム酒は製菓用として使われるダークラムではなく、ライトなタイプ(今回はハバナクラブ)を使いました。パイナップルはスライスして投入。コリアンダーシードは潰してから入れると香りが出やすいです。
パンチというカクテルにお茶を入れる場合は通常、紅茶を使いますが、今回は緑茶を入れています。グリーンで爽やかな香りがいいですね。
アルコールで希釈されるので、かなり濃い目に煮出した緑茶を使うのがポイント。
「そんなに濃い緑茶を入れたら苦くなるのでは」
と思うかもしれませんし、実際この段階で味見をするとお茶の苦味を感じるはずです。しかし、この後のミルクウォッシュという工程で、その問題は解決します。ラップをかけて冷蔵庫で一晩置き、香りを抽出します。
パイナップルの香りが移りました。ここで分量の水を加え、パイナップルやスパイスなどの固形物を濾します。
ここからはカクテル作りです。水、レモン汁、ゆず果汁を加えます。
牛乳を沸かします。
熱い牛乳を注ぎます。今回はパンチに牛乳を注いでいますが、american test kitchenのレポートによると「牛乳にパンチを注いだ方が均一に固まる」のでいいそうです。今度、作るときは試してみよう。
レモン果汁、ゆず果汁などの酸とアルコールに含まれるポリフェノールやタンニンの働きで、牛乳のタンパク質が凝固します。この状態で一晩寝かせた方がいい、と主張する方もいます。確かにその方がより反応が進みそうですね。
ま、とりあえず固まったので、コーヒーフィルターやリードキッチンペーパーで濾しましょう。
冷蔵庫で冷やします。冷蔵庫で冷やすと固形分がさらに沈殿します。
上澄み部分をグラスに注げばミルクウォッシュパンチの出来上がりです。
出来上がったカクテルは非常にすっきりとして、苦味などがありません。牛乳のタンパク質が凝固する際にタンニンなどを抱え込むからです。タンニンを含んだ液体を口に含むと、口のなかのタンパク質と結合し「収斂味」という苦味を感じます。ミルクウォッシュの場合はタンニンを口のなかのタンパク質より先にミルクのタンパク質と反応させてしまうことで、クリーンな味を作り出すのです。
ミルクウォッシュカクテルの歴史は1700年代にさかのぼります。
DavidWondrichというカクテル歴史家によると、ミルクパンチのレシピの起源は1711年に著され主婦のMaryRockettによる「1ガロンのブランデー、5クォートの水、8個のレモン、2ポンドの砂糖に2ガロンのやけどをするほど熱くした「新鮮なミルク」を加え、1時間後にフランネルバッグで濾す」というものだったそう。
蒸留プロセスが確立されていない時代、ブランデーの味は現在のものより、荒々しく、雑味が多かったので、ミルクで洗うというこの技法が生まれたようです。その後、蒸留プロセスの改良によって蒸留酒の味が洗練されると、ミルクウォッシュという技法はあまり見かけなくなりました。
しかし、ミルクウォッシュという技法はカクテルの味を極めてクリーンにするので、現代でも試す価値は充分にあります。ホエイに由来するクリーミーなのどごしも魅力的ですし、ホエイタンパク質が入るので、ハードシェイクすると泡立つのも面白いところ。コンソメを作る際、卵白を加えて不純物を抱え込ませる清澄化という技法がありますが、これは卵白ではなく、牛乳を使う点に特徴があります。弱点は牛乳がNGの人はダメということですが、ま、これは乳製品全般に言える話なので、、、アルコールの種類やお茶の種類なんかを変えると応用が効きます。例えば紅茶とブランデー、あついはバナナとバーボンなどをミルクで洗って澄んだ味わいに仕立てたりといった具合です。
パンチは一度に作っておけるので、集まりの食前酒などにも最適。というわけでミルクウォッシュカクテルのご紹介でした。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!