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煎茶は水の種類によって味が変わるのか?

煎茶の話の続きです。

1回目『狭山の的場園で茶の製造工程を見学してきました

2回目『冷やし煎茶の入れ方と考察

前回参考にしたのは『茶の淹れ方による呈味の味認識装置による評価』という研究ですが、同じ著者らが『茶の呈味におよぼす水質(特に Ca)の影響と味認識装置による評価』という論文を発表しています。これは水質の違いがお茶の味に及ぼす影響を調べてもので、特に水の硬度を決定する物質の一つ、カルシウムの役割について検討したものです。

茶を浸出した際,軟水よりも硬度の高い evian 水で浸 出した茶のうま味強度が最も高い値として示された。ま た,evian 水で浸出した茶と,次位のクリスタルガイ ザー水で浸出した茶について三点比較法による官能評価を行ったところ、この両者は有意に識別され、そして、evian 水で浸出した茶が有意に好まれる、との評価であった。(同論文まとめより引用)

本当? という感じですよね。というのもお茶は『軟水で淹れるとおいしい』というのが定説だったはず。これは試してみなくては。

というわけで、それぞれ3gの量を同じ茶葉を茶碗に入れ、温度100℃のそれぞれの水を注ぎ、2分間待ちました。使用したミネラルウォーターはエビアン(硬水)、ヴォルビック(軟水)、南アルプスの天然水(軟水)。

二分経ったら、茶こしを抜きます。

比較のためにアルカリ性の超軟水も欲しかったので、温泉水99というアルカリイオン水も使いました。あとはクリスタルカイザー(硬水)と浄水器に通した東京の水道水(シーガルフォーという浄水器を使っています)です。

一目で色の違いがわかります。緑色が最も濃いのはアルカリがやや強い温泉水。つぎにボルビック、南アルプスの天然水という感じ。

味見してみました。たしかにエビアンは旨味が最も強く、まろやかな印象。味に丸みがある感じです。はじめは硬水で抽出したので渋みが出ず、相対的に旨味が強く感じるのでは、と考えていたのですが、たしかに参照した論文の実験結果が示すとおり、旨味もきちんと出ています。

官能評価の結果では次点の評価はクリスタルカイザーですが、個人的にはボルビックで淹れたほうがおいしいと思いました。南アルプスの天然水は渋みや苦みを強く感じました。温泉水99は色が濃く、最も成分が抽出された印象ですが、こうして比較すると雑味が多いので、ちょっと不利かも。飲み慣れた味の水道水は南アルプスの天然水や温泉水99に比べて渋みと苦みが少ないので、悪くはないです。

とはいえ、あまり硬度が高すぎる(例えばコントレックスとか)水も味が抽出されないらしく、参照した論文によるとCaCl2(塩化カルシウム)を使った人工硬水は旨味とは関係がなく、そこにCaCO3(炭酸カルシウム)を組み合わせると、旨味強度が増したとのこと。

pHが5以下になると色が薄くなるというので、ph4.95だったペリエ、pH4.8の炭酸水でも淹れてみました。これは定説通り、色が薄いですね。ただ、味という点から考えると苦みと渋みが出にくいらしく(特にペリエは)茶葉の量や淹れ方を調整すればに面白いかも。こうやって飲み続けていると『飲み慣れた味』というのがわかって、なかなか面白いです。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!