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小岩井カブはめっちゃおいしい

知人から小岩井カブというめずらしいカブを頂きました。岩手県の有名な種継農家、田村和大さんが育てたもの、だそう。

種継とはなんぞや、と思うかもしれませんが、野菜を扱っているとこの種の問題に行き着きます。今、現在、日本で流通している野菜はほぼすべて(といっていいでしょう)がF1品種という種苗メーカーが開発した一代交配種です。F1は形質や終了が安定しているので、例えばある時期に一気に収穫する、みたいなことが可能です。余談ですが、F1は種が採れない……というデマがありますが、別に種が採れないわけではなく、形質が安定しないので、商売にならない、というのが本当のところ。

一方で在来品種という種が昔から受け継がれてきた品種があります。その土地の気候風土にあわせて、農家の方が代々受け継ぎながら、形質を固定化した品種です。在来品種のいいところはその土地のストーリーが伝わるという部分。例えば山形県庄内地方の温海カブは焼畑という栽培方式で育つのですが、扁平な形をしています。もともとは小さな大根のような長い形のカブだったのですが、漬け物にしやすいような形のカブを選んで、種を受け継いできた結果、現在の形になった、と考えられています。

この小岩井カブはゴツゴツとした形で、身質は非常に緻密。もともとは飼料用として明治期に導入されたカブの品種のよう。

上部も面白い形状をしています。

皮を剥いて、一片かじってみました。火を通すとすごく甘くなりそうな辛味があります。ただ、すべての小岩井カブがこういう味か、というとそういうわけではないのが難しいところ。F1種と違って農家の方が形質を選びながら固定していくので、作り手の個性が出やすいのです。

厚めにスライスして、ドフィノワに仕立てることにしました。

ひたひたのミルク、バター、少量の塩と一緒に火にかけます。

カブに火が入りました。オーブンに入れられる器に移し替えて、ミルクを煮詰めます。

この時、表面に浮かぶ固形分(タンパク質です)はなるべく壊さないようにしましょう。

煮詰まってとろみがついた牛乳をカブのスライスにかけます。

パルメジャーノチーズを少し。あとはオーブンか、オーブントースターで焦げ目をつけるだけです。

じゃん、出来上がりです。これがめちゃくちゃおいしい。あっさりとした甘みと強い香り。今、現在、日本に流通しているカブは生で食べておいしい品種ばかりですが、これはしっかりと加熱したほうがおいしいカブだと思います。F1種の野菜は現代の嗜好にあわせたちょっと優しい味のものが多いですが、これは力強くメイン料理になりうる野菜です。種が受け継がれるためには野菜を食べる消費者がいなければはじまりません。そのためにはまず、野菜に対する意識を高めるところから、という課題をいただいた気がしました。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!