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〈食と生活〉HINODEの話、ウルグアイ産の牛肉の実力とは

昨日はポップアップレストラン『HINODE』に行ってきました。

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企画の趣旨は黒幕の江六前さんによるnoteが詳しいです。

僕が若い頃は考えられなかった試みで非常に今日的といえます。

参加メンバー全員で決めた「日本」というテーマのもと、各自1皿またはドリンクを担当し、7品のコース料理と飲み物を完成させる。

という試み。参加料金は「食材・飲み物原価+投げ銭」という実験的な試みで原価は4000円でした。コースの流れは以下。

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『ふるさと野菜のテリーヌ 冷たい味噌汁のジュレ』。千葉県の被災農家の野菜を使いたい、という想いからスタートした料理だそう。火を通した野菜を昆布だしのジュレで固めてあります。味噌+出汁にゼラチンでとろみをつけたソースである必然性は感じませんでしたが、根菜の甘みがよく引き出されており、中心に入れた和梨がいいアクセントになっていました。

ま、テリーヌである必然性はなくて、それぞれの根菜を器に入れて、ジュレをかけただけでも味は同じなんですけど、30席一度に出すのに都合が良かったのでしょう。もうちょっと頑張らなくてもお客さんは喜ぶと思うんですけどね。今の時期であれば一品目は温かい料理がよかったと思いますが、そういう話は出なかったのでしょうか……という具合で、ふと気づけば他のテーブルも含めて、おそろしいことに参加者のみなさんが真剣に食べていました

このイベント、若手料理人の育成みたいなお題目を掲げていますが、実際のところ試されているのはお客さんです。4000円の原価+の部分をどこで評価すべきで、いくら投げ銭するかを決める=評価する必要があるので、本気で食べています。正直、料理のクオリティは想像の範囲内ですが、重要なのはおそらくこの点。

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2品目は感謝のオムレツ。丁寧につくられた料理で、好感が持てました。ただ、一人でオムレツを焼き、一人で切り分けるというまったく不合理な段取りなので提供に滞りが。こんなの担当者は焼くのに専念してもらって、切る担当、盛り付け担当と分担しましょう、とすればいいだけなのですが、あえてなのでしょう。このあたりにもお客さんが試されている感が。

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こちらはフォアグラのフラン。阿波晩茶と一緒に提供されました。これは会場を提供したカステリーナグループのスペシャリテで定番の料理。「若手がつくる」みたいな趣旨とは関係ないので「間違いなく、ダントツに」クオリティが高い料理でした。

フォアグラのフランはポワレなどと違って端が出ないので、歩留まりのいい料理。しかも、官能的な滑らかさを持ち、最大公約数的なおいしさがある。これはお金がとれる料理。だとしたら他の料理との違いはなにか?

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魚料理は高級食材の甘鯛。

ちょっと要素が多かったですが、これが一番上手にできている料理でした。塩加減がちょっと強めだったので、緩衝効果のある具材があってもよかったかも。もっとシンプルにして、盛り付けの手数を減らさないと、スープが冷めます。でも、スープ仕立てにしたのはこういう提供人数の多い場面では正解。

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肉料理は青森の銀の鴨。同席していたThe Burnの米澤シェフが「若手っぽいなー、色々とやりたいんでしょうね」と仰っていましたが、こちらも要素の多い皿。鴨の皮目にはもうちょっと火を入れたほうがいいですし、ソースの量のバランスもよくないな、、、みたいに先程から謎の上から目線が出ていることにお気づきでしょうか。食べているうちに肉がもう少し温かければもっとおいしいのに、とか色々と見えてくるものがあり、なんかそれをみんな言いたくなってくるんですね。

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デザートは飴細工がきれいなエルダーフラワーとイチゴの組み合わせ。パラチニットがあるので、今はこういう飴を使った仕事が簡単になりました。これはお金がとれるデザート。お客さんが喜ぶポイントがよくわかっているのは、たぶん作っている方もデザートが好きなのでしょう。

さて、作り手の方々は若いし、これから成長していけばいいだけですが、僕自身はこれからのレストランシーンのあり方も含めて、すごく勉強になりました。さて、投げ銭の結果ですが、、、

コースと飲み物は、通常のレストランで提供すれば1万円程になる良質な食材を使用している。

と江六前さんは挑発していますが(笑)僕が払ったお金はそれよりも低いものでした。理由は同じ金額を払ってレストランで得られる満足感よりも低いものだったからです。では、逆にレストランの満足感とはどんな部分で出てくるのか、、、という点をこれから考えるのが、僕らに渡された課題でしょうか。とはいえ、大人たち「アドバイスしたがり」(笑) クラウドファンディングとかにも言えることかもしれませんが、人はもともとだれかを応援したいという性質を持っているのかもしれませんね。

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