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料理好きのための21世紀料理教室

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低温調理、エスプーマをはじめアルギン酸のカプセルなどの分子料理のテクニックを解説していきます
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2020年6月の記事一覧

ミントのジュレと料理の組み立て

ジョエル・ロブションの名作「Le caviar」は底にオマールのコンソメジュレを敷き、そこにカリフラワーのクリームとキャビアを組み合わせ、パセリの色素でドットを描き、爽やかな香りを添えたもの。 (動画では他の料理も2つ紹介されてますが) この構成要素のカリフラワーのクリームをアーモンドのカスタードに キャビアをチョコレートのキャビアに置き換えたのがこちらのデザートです。オリジナルはChefstepsのGrant Crilly。 仕上げに使うミントのジュレをつくります。

調理テクニック紹介〈チョコレートのキャビア〉

球状化は点滴した液体を膜のなかに閉じ込めるテクニック。具体的にはアルギン酸ナトリウムをカルシウムと反応させて膜をつくります。このテクニックにはアルギン酸液をカルシウム溶液に落とす〈球状化〉とカルシウム溶液をアルギン酸液に落とす〈逆球状化〉の2つのアプローチがあります。 逆球状化のテクニックは以前にも紹介しているので、今回は球状化のテクニック。こちらは作り置きが利かないので、個人的には事前に仕込める逆球状化のテクニックのほうが好きですが、一応、抑えておきましょう。 アルギン

新しい凝固剤「イオタ・カラギーナン」の使い方〜牛乳ゼリーとアーモンドのカスタード〜

料理の世界ではゼラチン、寒天という昔ながらの凝固剤がツートップとして長らく君臨してきましたが、最近少しずつ新しい素材が使われるようになりました(日本ではまだまだですが……) 新しい凝固剤は食品工業の世界ですでに一般的なものばかり。カラギーナンもその一つです。カラギーナンは海藻から抽出されるゲル化剤で、主成分は寒天と同じ多糖類(ガラクトースに硫酸基がくっついる形)です。カラギーナンでつくったゼリーはやわらかく、ゼラチンのような粘りがないこと。室温でも溶けない、という特徴があり

卵1個でつくるウフマヨ〜エルヴェ・ティス風〜

ウフマヨ(ゆで卵のマヨネーズソースかけ)を作ろうと思ったら、冷蔵庫に卵が1個しかない。 こんなときにつくるべきはエルヴェ・ティスの『究極のゆで卵』です。エルヴェ・ティスは分子料理研究の第一人者として知られるフランスの物理化学学者。究極の、という御大層な名前がついていますが、味が究極のわけではありません。1個の卵からゆで卵とマヨネーズの両方をつくるところがその名前の所以。 ちょっと考えれば普通に作ったとすればマヨネーズをつくるために卵黄が一つ、ゆで卵をつくるために卵が1個、

ヴィーガン&ベジタリアン系の料理対応のTips

雑誌『クウネル』の特集で、都内のヴィーガン料理店を訪ねる企画に参加しました。 そもそもveganとは菜食主義者=vegetarianの前後5文字をとった言葉(Veg+an)で『完全菜食主義』と訳されます。もともとはイギリスではじまった考え方で、動物由来の食品(ほうほう、と思うのは、ハチを使って集めるはちみつや製造工程で牛骨を使う砂糖も使用不可)を摂取しない生活を指します。厳格なヴィーガンは持ち物も動物由来を排除するなど徹底しています。動物愛護のためのイデオロギー的な側面が強

食事の締めの香港風湯麺の作り方

香港風と言ってますが『なんちゃって』です。なにせ、鰹節と昆布の出汁がベースですから。中国料理店で食事の締めに出てくる小さな麺料理をイメージしています。 香港スタイルの麺は日本とは違い、キシキシっとした歯ごたえとのどごしの良さが特徴。ぼくの好物です。しかし、日本で食べられる店は少なく、入手が比較的簡単な乾麺を使うことになります。 細いストレート麺は自作の麺料理に最適。 鰹節と昆布の出汁 昆布   10g 鰹節   20g 水    1L まずは出汁をとります。 昆布を

ズッキーニの60分焼き

夏野菜のズッキーニ。皮をよく焼くとおいしい、という記事を前回書きました。 今回は久しぶりにまったく参考にならない調理法紹介。1時間焼くことで、ズッキーニの持ち味を引き出します。アルページュのアラン・パッサールの火入れ方法に習いました。 走りの時期のズッキーニはやわらかいので、輪切りにするよりも縦に切るのが美味。 縦に半分に切ります。 オリーブオイルを少量敷いたフライパンで加熱を開始。火加減は弱火です。静かに火を入れていきます。お店だとプラック(鉄板)にオーブンペーパー