マガジンのカバー画像

料理好きのための21世紀料理教室

201
低温調理、エスプーマをはじめアルギン酸のカプセルなどの分子料理のテクニックを解説していきます
運営しているクリエイター

2019年6月の記事一覧

ドライアイスを使った香りの演出

風邪を引いて鼻が詰まると食べ物の味がよくわかりません。離乳食のような野菜のピューレを作って、目隠しをして、鼻をつまんで食べる実験をしてみるとそれがよくわかります。ニンジンとカブのピューレの違いすら、言い当てるのが困難でしょう。 わたし達、人間が匂いを感じる経路は二つあります。1つ目は周りの空気に含まれる匂いを鼻で感じる「オルソネーザル」(たち香)という経路。もうひとつは食べ物を飲み込んだときに口の奥から鼻に流れる揮発性の芳香分子を嗅ぎ取る経路でこれは「レトロネーザル」(あと

とうもろこしの茹で方、ポイントはどこか?

ネットを検索するとお馴染みのNHK番組ガッテン方式からプロが教える……といったものまで『おらが思う一番おいしいとうもろこしの茹で方』が出てきます。 自分も以前、簡単に茹でたものを比較をしました。その時は水から茹でるというセオリーを守ればどんな皮付きでも皮なしでも味に変化はなく、茹でるのではなく電子レンジで加熱したものが一番おいしいという結果でした。 とうもろこしには様々な種類がありますが、現在、スーパーなどで手に入るとうもろこしはスーパースイート系がほとんど。昔のとうもろ

ノンアルコールペアリング研究その4〈りんご水を使った白ワイン風〉

前回は『ワインをノンアルコールに置きかえる方法』を採用し、赤ワイン風のドリンクをつくりましたが、今回は白ワインです。 白ワインの酸味は酒石酸 、リンゴ酸 、乳酸などに由来し、その香りは柑橘系のフルーツ、例えばレモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジや桃、あんず、りんご、梨などの香りを持つもの。他にトロピカルフルーツ(パイナップル、マンゴー、キウイ、ライチ、パッションフルーツ)、蜂蜜やハーブなどの草の香り(寒い地域のソーヴィニヨン・ブランを飲むと感じるあれですね)白い花のよ

ノンアルコールペアリング研究その3〈紅茶のタンニンとバルサミコを組み合わせた軽い赤ワイン風〉

ノンアルコールペアリング研究の〈その3〉です。 その1はこちら。 その2はこちらです。 ノンアルコールペアリングを分析すると、今の所二つの手口があるようです。一つは飲み物を『濃度の薄いソース』と考える方法です。サラダに柑橘を使ったドリンクを添えるのはこの考え方。こちらは飲み物単体でもおいしいクオリティに仕立てることが重要。しかし、料理の味に勝たないようにする必要があります。 2つ目は『ワインをノンアルコールに置きかえる方法』。先にワインを念頭に置いて、そこから味や要素

鶏肉の蒸しスープ

中国料理のスープの技法を使った鶏肉の蒸しスープです。どこが21世紀料理やねん、という感じですが、中国料理の技法を他の料理に応用する点に新しさがあります。 鶏ひき肉 100g 卵白   1個 塩    小さじ1/4 胡椒   適量 スープ  200cc スープは固形ブイヨンを薄めに溶かしたものを使います。(ブイヨンキューブ1個に対して水600ccを溶かしました)今回は昆布を入れて、煮立てています。後から混ぜる肉に火が通らないように、冷ましておくのが最初のコツです。 鶏肉に

葛粉についての考察

以前、瓢亭風がゆの作り方をご紹介したときに銀餡(醤油を落とした出汁にとろみをつけたもの)をつくりました。そのとき、〈葛粉〉についてちょっとお話しました。じつはこの葛粉、ややこしい食材の一つです。 例えば「葛粉、買ってきて」と言われて富澤商店で葛粉を買ったとします。葛粉というくらいなのだから葛からとったデンプンなのだろう、と思いますが、名称と原材料名を見ると『名称 甘藷でん粉』とあり、原材料名は甘藷でん粉(国産)とあります。説明にもちゃんと『国産さつまいもを100%使用してい