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11.新たな出会い

私の決めなくてはいけないことは以下だった

・排便が大変になるけど手術一択
・放射線で少しでも負担を減らしてから手術

どちらも未知数だった。
手術をしても意外と大丈夫かもしれない。
放射線をやってから手術をしても結局排便障害が残るかもしれない。

なかなか難しかった。
最初は化学療法でいいと思ったけど。
副作用。特に女性機能。
子供をはそこまで考えてはなかったものの、女性機能を失う可能性はやはり悲しかった。
授乳をやめなければならなかった事もなんとなくその気持ちを大きくさせていた。

でも排便障害は毎日のこと。
そして一生のこと。
子供云々言ってるけど、それ以前に日常生活に支障が出るのかもしれない。ここで始めて直腸がんを患った人のブログなどを検索してみた。
「この1年はずっと排便のことを考えていた」
とのこと。
とにかく大変そうではあった。
きっと公園でもお外でもトイレを探す日々。
飛行機や長距離の移動もしばらくできない。
長い移動はおむつをしてという事もある。
先生も数年経てば「それにはなれる」と言っていた。
手術をすると慣れることはあっても、元に戻ることはない。
一生か...
それでも治せる幸せがあるのだけど。

病状を聞いて喜んでいたけどまた悩む。
前回からすれば贅沢な悩みになった。

放射線の先生と会う日になった。
現実的なことをブログで調べたりもして。
またフラットな気持ちで診察の日を迎えた。

放射線の先生も若めで研究者という感じの人だった。

「正直子供は1人でいいと思ってたけど、こう突きつけられると迷う気持ちもあります。でも、これが最良でベストなら放射線も仕方ないと思ってます!」と宣言すると

「うーん。そこまででもないかもしれないですねぇ。
手術してもそこまで排便障害が残らないかもしれないし。外科の先生は大袈裟ですからね」とにこやかに言った。

覚悟をして行ったのにずっこけそうになった。
実際ずっこけた。
そして放射線を受けた際の副作用についてや治療全般の先生の見解も含めて聞いた。
一番はやはり妊孕性の問題。
子宮卵巣の機能はおそらく失われ閉経する。
早めに更年期がくればホルモン治療。
それだけでなく、旦那さんとの性行為も難しくなる可能性はあるとのことだった。
こちらに関しても治療はあるらしいが...
こうなってくると自分だけの問題でもなかった。

妊孕性という言葉もこうなって初めて知った。

そして妊孕性はとてもセンシティブな事だけに先生方も口を揃えて「ゆっくり考えてください」といった。

私の場合。
病状としては一刻を争わない。
でも放っておく事もできない。
当時39歳。
38歳で出産をしまだ第二子は考えてもなかったし、いらないかなぁとぼんやり思っていた。
でも、いらないと自分の意思で思うのと「子供は諦めてください」となるのは全く違う。
第二子を考えるとしたら42-3歳まで。
なので、まだ妊娠を考えられる年齢でもある。

45歳を過ぎていれば妊娠の選択もほぼなかったからこのまま女性機能がなくなることもありだったかもしれない。

放射線などの化学療法に踏み切るときは、確実に失われるものがある。
だから中途半端ではなく効果の高いものであって欲しかった。
でも、放射線の先生から言わせるとそこを失ってまで絶対にお勧めするほど効果が高いものでもなかった。

どちらにせよ手術になるのならば手術だけでもいいのかもしれないと思い始めた。

また、診察室で頭を抱えることになった。


しばらくして。
先生が話し始めた。
「実は裏技というか。ありまして」

先生の話はこうだった。
通常ステージ3。すなわち転移している人がやる治療がある。
それは抗がん剤がメインの治療。
副作用はもちろんあるけど、脱毛などはなく、へろへろになり。という感じでもない。
手足の痺れが1番の副作用とのこと。
そしてそれは永遠に続くほどでもない。
細かい事はあるけど、この治療をしたステージ3の患者と、私のようなステージ2の放射線と手術の治療をやった人ではステージ3の人の方が良く治るというデータが集まり始めているとの事。
まだ日本ではほとんどやっていない治療。
化学療法で効果を求めるのであればこの治療も良いのかもしれないと言われた。

余計な提案をしてすみませんね。
なんて言いながら話してくれた。

なぜ最初からその提案がなかったのかと聞くとやはり「線引き」があるのだとか。
だれも彼もがその治療をすると、それは行き過ぎた治療になり得る。 
また健康保険の問題などもある。
何よりまだこの治療が日本ではスタンダードになっていないという事。
日本ではがん=死
というイメージが強く、まずは治すことが優先。即ち「切る」ことが最速で最前。
私の場合手術をすれば治療としては一旦終わるけど、その排便問題までは考えてはくれない。
治す。という事だけで、その後のQOLまではまだケアが進んでないようだった。

どの先生にも聞いた事は
「先生なら。先生の家族ならどの治療がいいと思いますか?」

医者と患者だけど。
人と人として話をするまでは帰りたくなかった。
先生は3時間近く話しをしてくれた。

新たに出てきた抗がん剤という治療。
主治医の先生には、この話をしたことを伝えておきます。
私のように妊娠や女性機能を諦める代わりに高い効果を求めているならありかもしれないと、そんな事も口添えしてくれるようだった。

また結論は先送りにして。
再度主治医の外科の先生と話すことになった。


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