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書店で本を買うこと

2024年9月8日、ジュンク堂書店柏モディ店が閉店した。
柏のジュンク堂には大学時代よく通っていた。品揃えがよく、気になる本は大体ここで買っていた。本を買ったら近くの喫茶店で、コーヒーを飲みながら読むのが休日のルーティーンだった。
就職し、埼玉へ引っ越してからは足が遠のいていたが、いざ閉店するとなるとさみしかった。

柏のジュンク堂では特定の本を探しに行くほか、売り場で出会った本も買っていた。
三島由紀夫の『命、売ります』は、平積みに置かれた本の帯が気になって購入した。作家に対する難解な印象とは異なり、『命、売ります』はエンタメ性の高いハードボイルド小説だった。読む手が止まらないほど没頭し、時間を忘れて読みふけった。
振り返ると、カラオケと飲み会ばかりの大学生活から再び本の世界にのめり込んだのはあの本がきっかけだった。

思えば私の人生は、何度も書店で出会った本によって変化してきた。
中学生で不登校になってから、地元の書店でカッコいいイラストの表紙に釣られて『人間失格』を買った。いざ読んでみると、これほど苦しんで生きる人が自分以外に存在していたことに衝撃を受けた。教室にいるのは苦痛だったが、図書室にはよく足を運ぶようになった。
大学では柏のジュンク堂で『深夜特急』を買い、旅にあこがれた。残念ながらユーラシア大陸を横断するほどの勇気はなかったが、夏休みには青春18きっぷで本州を横断した。卒業後は海外で働きたいと考え、海外事業部のある会社に就職して語学を勉強した。
適応障害で休職し、会社員としての働き方に限界を感じていたころに本屋イトマイで『無職本』と出会った。フリーランスとして好きなことを仕事にしている人の存在を知り、希望を持った。復職してから独立の準備を始め、今年2月にフリーランスのライターになった。
それだけ私は、書店で本との出会いに支えられて生きてきた。

最近、書店が閉店する知らせを多く耳にする。本は確かに通販でも買えるが、思いがけない本と出会えるのは書店ならではの体験だ。これからも街に書店が残ってほしいと、個人的に強く願っている。

残念ながら、書店のために私ができることは決して多くない。稼ぎも少なく、選挙で投票する以上の権力もない。
未来へ書店を残すために私ができること。それは引き続き書店で本を買い、本や書店の魅力を伝え続けることだ。
ささやかな願いを胸に、今日も私は書店で本を買う。

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