スイスのポジティブな環境問題との向き合い方
こんにちは、トレイルヘッズの高山です。
スイスレポート第2回目となる今回はスイス訪問で感じた「サスティナビリティ編」。
トレイルヘッズではHINOKOというキャンプ場を運営し、メンバーも山や海でのアウトドアアクティビティが大好き。川の恩恵に感謝する「BACK TO RIVER」という活動も行っています。その一方で内装工事に関わる仕事をしている私たちにとって、つくって壊すという行為は避けられないことでもあり、何か私たちにできることはないか?と考えることも多くあります。そこでスイスレポート第2回目は、自分たちが地球環境に対してアクションできるヒントはないだろうかという視点で、スイスで見てきたものや感じたことをお伝えしていきます。
エアコンがないなら、木陰で過ごせばいいじゃない
スイスに行くとなってまず思い浮かんだのはアルプス山脈。そして実際に行ってみて分かったことは…本当に平らな土地が少ない!
スイスは九州ほどの面積ですが、国土の2/3ほどを山が占めている点は日本と似ています。ヨーロッパを代表する河川であるライン川の水源はスイスにあり、川は貴重な資源であることはもちろん、輸送の手段として産業の発展にも寄与してきたということです。
有名な温泉施設「テルメバルス」が位置し、ミネラルウォーター・ヴァルサー(VALSER)の取水地でもあるValseに向かう途中では、いくつもの山から流れ落ちる滝が水量の豊富さを感じさせます。
そんなスイスも近年では気温上昇による氷河消失が問題になったりと、気候変動の影響を受けています。現地のスイス人曰く、この国の人々の一般的な環境意識はかなり高く、危機感を持っているそう。
私たちが訪れた6月はそれなりに暑く、早く冷房の効いた室内に入りたい〜とレストランに入ると...なんとエアコンがない!!
そう、スイスはレストランもホテルもエアコンがないのが一般的。そのくらい涼しかった環境が年々失われていることを、現地の人々は身をもって実感しているそうです。
どのお店にもエアコンがないので、ランチタイムはみんなテラスの木陰で過ごしているのが印象的でした。もちろん平均気温が異なるので日本と単純に比較はできませんが、エアコンがないなら外で風を感じよう、という姿勢は好感がもてました。
自転車と一緒でも大丈夫、車窓の景色を楽しんで
スイスで環境に優しくかつ便利な移動手段といえば電車です。全土をほぼ網羅している長距離の鉄道と、チューリッヒやバーゼルなどの街中であれば路面電車(トラム)でどこにでも移動できます。車窓の景色も楽しめるので旅行者にも人気ですが、時間も正確、車内の表示も分かりやすくアプリで切符が購入できます。
おかげでこの旅程の過密なスケジュールの中でも無事に移動をすることができました。最終日に空港へ向かう長距離電車の乗り換えを危うく間違えるところでしたが、優しいスイス人に「チューリッヒに行きたいならそれじゃないよ」と教えてもらったのも良い思い出です。
また自転車を使っている人も多く見受けられ、自転車ごと電車に乗ることも可能です。スイスのシューズメーカーonの本社には、自転車ユーザーに優しいメンテナンス器具が備え付けられた自転車置き場がありました。
リサイクルプロダクト あれもこれもリサイクル
スイス街中には、分別ゴミ箱も多く設置されています。そのおかげか道にほとんどゴミが落ちていない!日本より圧倒的に綺麗でした。
スイスの一人当たりのゴミ排出量は実は他のヨーロッパより多いのですが、資源ごみのリサイクル率が高いそうです。またリサイクルプロダクトのブランドであるFREITAG(https://freitag.ch/ja_CH)は日本でも有名ですね。画像では良く見てたやつ〜ということで、チューリッヒのFRIETAGのショップにも行ってきました。サスティナブルなコンセプトのもとコンテナを積み上げて作られたこのお店は、屋上まで登ることができます。上3段くらいは商品もなくただ登るだけ...屋上からはチューリッヒの街が一望できました。
もちろんトラックの帆布で作られた製品たちも見てきました!
世界的な製薬会社であり、本社をバーゼルに置くノバルティス社の本社「ノバルティスキャンパス」では、見学ゲストの受付にベルトのリサイクル素材らしきもので作られたチェアが並んでいました。会社の顔でもある部分にこのセレクト。強い環境に対するメッセージ性を感じますね。
vitra museumで漕ぎまくる、そして予想外の再会
レポート1回目でお伝えした、vitra cumpus内にある美術館「vitra museum」では、ちょうど未来のエネルギーをデザインすると題した展覧会が行われていました。
エネルギーの大切さを知るために、まずは櫻井(スイスシリーズ第一回目の筆者)が身を持ってエネルギーを作り出します。原動力となっているのは自転車。
音楽を1曲聴くのに必要なエネルギーを生み出すには、自転車を3分ほど漕がなければなりません。お湯を沸かすとなると遥か彼方....
余談ですがスイスはどこの美術館でも、体験型のコンテンツや鑑賞者の感想を吸い上げる仕組みが用意されている印象でした。世界有数のアートの国でもあり、よりアート体験を良いものにしていこうという美術館側の姿勢を感じます。
ここでなんと、昨年のコペンハーゲン研修で見ていた建物が紹介されていました。12,000個のソーラーパネルを外壁に使ったデンマークの学校施設で、エネルギーを生み出すだけではなく、パネルの向きと光の発生率に応じてパネルの色が変わり外観を変化させます。この学校では、生成された太陽エネルギーの使用や分析がカリキュラムの中に含まれているそうです。
そんなこととは知らずコペンハーゲン研修でこの建物を見ていたことに後から気づき...写真を見直しているとしっかり写っていました。
オランダのマルジャン・ファン・オーベルは、デザインとテクノロジーとソーラーパワーを融合させた作品を作っています。こんなに美しいデザインであれば身近に置いておきたいと思う人も多いはず。
今回の企画展示では、再生可能エネルギーの利用拡大だけではなく、身の回りの製品から建築や都市計画に至るまで、持続可能な未来に向けてのアイディアや計画が展示されていました。作って壊すだけではない未来の建築のあり方を知ることができた企画でした。
ポジティブに向き合う
スイスは都市と自然の距離が近いからこそ、環境問題をより身近に感じるのかもしれません。室内ではなくテラスで過ごす選択や、自転車を楽しんだり、デザインすることでリサイクルプロダクトを普及させたりと、ポジティブな方法で対策していることが印象的でした。
自然とデザインのフィールドで仕事をしている私たちだからこそ、ポジティブな方法を追求できるのではないかとパワーをもらいました!