きらめく街

 福岡から京都に向かう夜行バス。あの日、カーテンの隙間から覗いた門司の夜の街並みは、きらめいていた。
 初めての夜行バスでの8時間に及ぶ長い旅路。同行者はおらず、ひとりきり。それでも私の胸は、喜びと期待でいっぱいだった。このバスが京都につけば、1ヶ月近く海外に出かけていた恋人と会える。ふたりで京都や神戸を旅行して、フェリーに乗って福岡へと戻る計画だ。

 バスが高速道路に入り、浅い睡眠と覚醒を繰り返し始めると、少しだけ、心細さが頭をもたげる。続く同じ景色と、曖昧な意識の中で、本当に彼の元に向かえているのか不安になる。
 数時間をうとうとして過ごし、サービスエリアで眠気を覚まし、高速道路から見知らぬ街へと入る。
 時折恋人に連絡を入れながら、私のひとり旅は終わりを迎えた。

 京都駅につき、恋人に駆け寄る。

 ふたりで見た早朝の京都。それは、ひとりで見た門司の街並みと同じくらい、きらめいていた。

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