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プロセスマネジメント成否を分けるオペレーション管理者の存在

組織において、知識をどのように共有していくかは一つの課題だと思います。

知識を共有化して管理していくことを形式知化とよび、そのためにたくさんの便利なツールが存在しています。

これまでの記事で紹介してきたプロセスマネジメントは、形式知化を行うための一つの方法であるといえるでしょう。

プロセスマネジメントとは
業務の結果に至るプロセスを管理することで結果の最大化を目指す。
目指すべき結果に至るプロセス可視化、標準化する。
それによって業務の全体最適と再構築を容易にする。

プロセスマネジメントは、特定個人に依存しているといった暗黙知化・属人化に苦しんでいる組織はぜひとも取り入れほしいアプローチです。

しかし、プロセスマネジメントを成功させるためにはいくつかの条件があります。具体例としては、形式知化を重視する組織文化、メンバーが正確に自身の業務フローを理解していることなどです。

そして何より重要なのは、その推進を旗振りする「オペレーション管理者」の存在です。オペレーション管理者不在の組織で部署横断のプロセスマネジメントが成功することは難しい、と僕は考えています。

オペレーション管理者とは

オペレーション管理者の主な仕事は3つあります。

①組織横断で業務を可視化しドキュメント管理を行う
②部署間業務の調整を行い全体最適を促す
③決められた通りに業務が実行できているかをモニタリングする

組織で個々人が好きなことを好きな方法で行っていくと、業務がどんどんガラパゴス化していく可能性が高い。オレ流ワタシ流の蔓延によって、全体最適から遠ざかって行ってしまう。

そうならないように、俯瞰的視点と論理的な思考を持ちながら、部署間業務の調整を行っていくのがオペレーション管理者の役割になります。

オペレーション管理者について説明した外部サイトを探したのですが、僕の考えるオペレーション管理者のイメージと合致した説明を見つけることはできませんでした。

近い説明資料として見つかったのが、ABeam Consultingの「ITオペレーション管理」記事。業務全体をマネジメントし、プロセス整備を支援する役割として紹介されています。

オペレーション管理者の現状

残念ながら、オペレーション管理者を明確に指名している日本企業はまだまだ多くない、ということが指摘されています。

良くても、部署単位など小規模でのオペレーション管理にとどまってしまっているのが実態ではないでしょうか?その場合、組織が大規模になればなるほど近隣部署であってもプロセス理解ができなくなります。

組織全体での部署間を串刺しにしたプロセスの可視化と最適化を行うためにはオペレーション管理者は特定部署に所属するのではなく特命ポジションとして全体管理を行うのが望ましいでしょう。

あるいは、オペレーション管理部署を独立して設置するという方法もあります。既存の特定部署にその権限をもたせたり、各部署の代表者を選出した委員会を設置するのも有効です。

オペレーション管理者が設定されない理由

ところで、なぜ日本企業ではオペレーション管理者の設置が進まないのでしょうか?

その背景には日本独特の労働環境が影響していると言われています。

日本独特の労働環境の特徴①
勤続年数長いベテラン社員が多い

欧米諸国と比較して日本では転職せず、新卒入社した企業で働き続けることが多い。ある調査によると、アメリカやドイツでは7割以上の労働者が2社以上の勤務経験を持つのに対して、日本では8割以上が1社のみの経験にとどまる。

低い労働流動性は知識が組織に蓄積するというメリットをもたらす一方で、知識をドキュメントではなく個人が管理するという個別最適を生み出すデメリットも引き起こします。

個人に業務が張り付いた結果、プロセスをドキュメント管理しなくとも、オペレーション管理者が不在でも、なんとなく業務が継続できてしまうという環境になることが多いと予想しています。

その結果、プロセスマネジメントやオペレーション管理者の必要性が理解されないまま放置されることになってしまうのでしょう。

反対に労働者の流動性が高ければ、プロセスを個人ではなく組織に残す必要があります。その結果、ドキュメント整備が重視され、組織トップによって形式知化が推進されていきます。

また転職者に即戦力となってもらうためにも、プロセスマネジメントは徹底している必要があります。外部から来た人間に、素早く業務全体像を掴んでもらう必要があるからです。

もっとも、日本でも転職市場が活性化すれば状況は変わるのかもしれません。その際、プロセスマネジメントやオペレーション管理の必要性に気づくかどうかは企業によって対応が分かれれるところでしょう。

日本独特の労働環境の特徴
ゼネラリストが多い

日本では複数職能を渡り歩く「ゼネラリスト」として社員育成をするのが多いのに対して、欧米では「スペシャリスト」として育成される。

ゼネラリストが増えると、異なる部署で経験がある人が増えてくる。そうすると、他の部署の職務内容がある程度わかる社員もいるでしょう。日本企業ではジョブローテーションが部署間の相互理解を進める仕組みとして機能した。

本来専門的なオペレーション管理者の仕事も、日本企業ではゼネラリストたちに分割されて任されているケースが多いと思います。

対してジョブローテーションの存在しない「スペシャリスト」の集団であれば、自分自身で見れる業務範囲が極めて限定的になります。他部署の業務経験がある人もほとんどいないので、阿吽の呼吸は使えない。

また、オペレーション管理者という役割も「スペシャリスト」の一部として養成されやすくなるという面もあるのでしょう。

参考文献

『ビジネスプロセスの教科書』
山本 政樹 (著)

日本と欧米の労働環境の違い、それによって生じるプロセスマネジメントの推進の違いが説明されています。

次の記事

オペレーション管理者の仕事を詳細に説明していきます。

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