先生は誰に治療してもらうんですか?

「先生は誰に治療してもらうんですか?」
ときおりそんなことを聞かれる。

先日もそんな質問があり、
「自分の専門の範囲であれば自分で治します」と答えると、
「病院はいかないんですか?」と返ってきた。

もう1年ほど前のことになるだろうか?
頚のMRIを撮ったことがある。

もともと頸椎と腰椎は歳不相応にヘタっているといわれたのが20歳のこと。
おかげで30代は自分の身体を台に神経痛の治療を模索することができた。
そして40代に入り、治療のその先に機能向上のための運動に目が向くようになり、始めたのがウエイトリフティング。
狙いが当たってしょっちゅう頚と腰を治療し続ける日々から解放されて久しかったのだけど、コロナの最中、自宅でのリフティングの練習をしていて両腕がしびれてしまったことがある。

両腕が同時にしびれるという症状を説明する障害に「中心性頚髄損傷」というものがある。
これは頚髄の真ん中を変形した頸椎のヘリが押しつぶすという、それはそれはえげつない故障で、転んだ拍子に頚髄をばっさり傷つけてしまったりして、運が良ければ両腕の麻痺、悪ければ死亡事故にもつながる故障。
この時はさすがにこの『中心性頚髄損傷』が頭をよぎって大いにびびった。
で、MRI。

結果はなんと両側性の牽引損傷だった。
それはそれでまあまあひどいけど、中心性頚髄損傷と言われるよりはまし。
そして、ありがたいことに『中心性頚髄損傷』を心配するほどには頸椎の変形は進んでいなかったことも分かった。
たまには検査も悪くないなと、ちょっと前まで青くなっていたのに現金なものだ。

故障の原因は、バーベルの扱い方にあった。
自宅ではバーベルを床に落とせない(落としてもいいけどフローリングが一発でダメになるし、階下の住人と騒音問題で角を突き合わせることになる)ため、コントロールして降ろすのだけれど、その降ろし際の負荷に腕神経叢たちが耐えられなかったようだ。
今はといえば、まったくの平常運転。
ただ、牽引損傷の再発のないよう、トレーニングの内容は変えた。

と、こんな感じで自身の専門分野で病院へ行くことはそうそうない。
そうなったのは20数年前、整形外科のクリニックでの修業時代の教えに基づく。

「怪我や故障を負ったらラッキーと思え
自分を実験台に腕を磨けるし、失敗して訴えられることもない(笑)」

とは恩師(クリニックのドクター)の言葉。

ついでに、

自分が治せなきゃ患者は治せないでしょ!?

確かに。
まったくもってその通り。
もうぐうの音も出ない。

以来、必要を迫られて検査を受けることはあっても、治療を頼むということはなくなっている。

きっとこれからも、専門領域についてはその路線が続くと思う。

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