デザインについて

 仕事柄、デザイナやアートディレクタと仕事をすることが多かった。なのでデザインと言われる業務に対する自分の認識の言語化をしてみようと思う。

  デザイン=designは通常であれば『設計』と訳される。が、昨今のデザインの保つ役割は確かにそれ以上の何かを持って居るような感じがする。が、『SPECULATIONS』のように昨今のさらなるデザインという言葉の拡張が見られた結果、一度は違う物だと見なされていたデザインという言葉は再び設計という言葉に非常に接近してきている印象を持っている。

 なので『デザインとは設計だ』と置き換えると、あとは手段と目的による差異だと思われる。つまり、『誰のために』『何を使って』設計をしているのか、という話だ。

人間のためにグラフィックを使って設計するのがグラフィックデザイナ。
人間のためにサウンドを使って設計をするのがサウンドデザイナ。
人間のためにアニメーションを設計するのがモーションデザイナ。

デザイナとエンジニアはそれほど区別はない

 『何を使って』の部分だけ見れば、つまり、ものづくりのアプローチさえ見れば、デザイナもエンジニアも非常にツールに依存した、テクニカルなアプローチを取っていることが判る。非常に職人的だ。グラフィックデザイナはフォトショップやイラストレータをツール的に、エンジニア的に使いこなす。

 一方エンジニアの中でもフロントエンドエンジニアと言われる画面周りを設計、実装するエンジニアはプログラミングを使って人間のためのグラフィックを設計する。そういう意味では完全にグラフィックデザイナの一種である。

 なので本来ツールが何か、とかメディアが何か、というのはグラフィックデザイナとフロントエンジニアを分ける条件ではないし、そもそもエンジニアとデザイナは相対する象限のものではない。画面の設計に関して言えば、比較統合的なツールが小慣れているかどうか、あるいは(人間のための)デザイン業務が多いか少ないか程度の割合の問題でしかない。

 一般的なデザイン業務においては『誰のために』がある程度細分化されたりはするが、基本『人のため』である。フロントエンドエンジニアだとシステム的な制約から比較的「人のため」に設計しづらい部分を設計する業務を多く担当する。

 バックエンドエンジニア(サーバなど、直接ユーザの目に触れない部分を設計する人)やテクニカルアーティスト(ゲーム制作などにおいてゲームの局地的なトータルの開発環境やワークフローを開発する人)などは「人のため」ではあるがユーザのためというよりかは作り手のための設計を行う、ややメタな仕事になる。エンドユーザにも体感する部分はあるのだが、かなりピンポイントだったり抽象的だったりして『ここがバックエンドの問題点だ』と断ずるのはそれこそエンジニア的な、あるいはシステム的な理解が必要になる。

コミュニケーション手段としてのツール

 また、そこからさらに上流に行くと最終成果物の制作方法としてだけでなく、制作フローとしてデザイン技能を使う場合が多い。

 グラフィックのスキルを使ってコミュニケーションを円滑化したり、エンジニアだとシステムの設計スキルを使ってフローチャートやシステム構成図を書いてコミュニケーションを円滑化したりする。

サービスデザインの難しさ

  近年流行っているサービスデザインだが、上記の論法で話すと非常に違和感がある。まんま使うとこうなる。

人間のためにサービスを使って設計するのがサービスデザイナ。

 明らかに違う。実際にサービスデザインの手法といえばワークショップなどの各種だろう。当てはめるとこうだ。

人間のためにワークショップを使って設計するのがサービスデザイナ。

うーん。もうちょっと文をいじる。

人間のためにワークショップを使ってサービスを設計するのがサービスデザイナ。

 こう書くとはっきり分かるがこの文章はおかしい。ワークショップはサービスを設計できない。違うだろう。多分今サービスデザイナがやっている、期待されている役割を書くとこうなる。

人間のためのサービスを作るチームをワークショップを使って設計するのがサービスデザイナ。

 少なくとも自分の体験したサービスデザイナはこんな感じだ。サービスデザイナはサービスという自分の名前を冠するモノ(目標)に対してチームやプロジェクトといった間接的なものを設計することで支援する、なんていうか補助魔法の使い手みたいなものだ、という印象だ。それ故に実行力・実装力の問題が発生しやすい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?