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特許事務所の業界分析

たまたま企業研究をする機会があり、調べた当業界ですが、改めてこの業界面白い。

今後、経営戦略にイノベーションが前提組み込まれていないと企業存続に関わる時代。

イノベーションって結局「既知のモノ×既知のモノ」

そしてこれからの時代のイノベーションはどう考えても「ハイテク×ハイテク」。

そんな中で大量にハイテクノロジーを扱い、あらゆるところからハイテクの知見が集まり深い知見を持つ本業界は、オープンイノベーションの起点になりうる。

新たなイノベーションの種起点になるのでは。

と個人的には思っています。

実際にVCもスタートアップに投資するときに技術の優位性の相談に特許事務所を頼っているみたい。

また何より面白いのは、AIが発展したことによって特許データの利活用が加速している。

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特許事務所の業界分析

顧客:

市場規模900~1000億程度と想定。(※売上公表している企業が全くないので特許・商標・意匠・実用新案にかかる費用平均×各割合×日本の弁理士の一人当たりの売上平均+訴訟やコンサルティングやその他のサービス費用をざっくり上乗せした金額の概算です。誤っている可能性あり)

顧客はハイテク技術を持つあらゆるメーカー。あらゆる産業が顧客対象です。またコンテンツやデザイン(商標や意匠)を保有するあらゆる企業・個人も対象。

R&D部門のみならず、各ファンドや事業経営領域からも求められることも増えている様子。

出願は商標67%(コンテンツ)、特許26%(ハイテク)、意匠6%(デザイン)、実用新案1%以下(ハイテクの簡易特許取得のやり方)

業界全体
全国に約3800特許事務所が点在。

弁理士約7500人。

「弁理士の数」が事務所の強さとほぼ同義な業界だが、半数以上の事務所は弁理士の数が1名しかいない。

10名以上の弁理士を抱える事務所はたった2.4%。

特許・商標・意匠全てを扱う事務所もあれば、特化型の事務所もある。また、特許の中でもバイオが強い、海外特許出願申請が強い等、個性を打ち出しブランディングする事務所も多い。

業界PEST分析

政治:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
国策的位置づけの知的財産戦略の支援:

安倍内閣「クールジャパン」による国産の知的財産の国際競争力強化の動きや「Society 5.0」にて国内の有望なテクノロジーを保護する観点にて知的財産の保護や活用支援が行われている。

中でも知的財産戦略本部では「デジタル知財戦略」「地域資源の活用 と知財戦略」、「コンテンツ戦略/クールジャパン戦略」及び 「知財戦略の社会実装」を支援する枠組みとして、産学連携の推進や、海外特許申請支援、海外での訴訟に対して情報提供等多数の支援制度がある。

経済:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サービスの低価格化:

弁理士の数、特許事務所の数は増加傾向にあるにも関わらず、国内特許出願は微減。

市場ライフサイクル上2010年前後を成熟期とし、特許の業界は転換期に突入している。

(国内→国外の特許申請はは2009年から25~30%UPだが内外出願比率はまだ国内の1/6規模)

今後も国内、国外供に大きな増加は見込まれないことを考えると、需給のバランス、テクノロジーの発展から今後は低価格化(利益圧迫)が見込まれる。

景気悪化(R&D予算減):

コロナ情勢下において、研究開発費の削減、企業淘汰の中で多少の規模縮小が見込まれる。

特にコロナの影響を受ける1産業に特化している事務所、1社に収益依存度が高い事務所等への影響は非常に大きく事務所も淘汰が進む。

※とはいえ昨今はイノベーションは企業成長の起点になるため、大規模な縮小は起きないと想定。

社会:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本市場の縮小:

日本市場は人口減により中長期的に縮小傾向。

海外への事業進出に伴い、日系企業の海外事業進出に伴い海外に対しての特許出願の増加が起きている。

中小スタートアップからのニーズ増:

スタートアップへの資本の投入、価値観の変化、速い意思決定スピード等の複合的理由により、技術者が大手企業以外にも分散。

新たなテクノロジーが大手企業だけでなく、中小スタートアップからもより生まれやすくなった。

新型コロナウイルスによるデジタルシフトの加速:デジタルシフト、DX推進を社会的、経営的も実践せざるを得ない環境下になり、ハイテクノロジーが生まれやすい機運の高まりは起きている。

技術:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
知財オープンイノベーション:

既存のハイテクの組み合わせでイノベーションを生み出そうとする動きが活発。

(イノベーション無くして生き残れない経営時代の突入)徐々に異業界からの参入が起きている。

知的財産に精通している特許事務所ならではの新たなサービス提供の枠組み。
知財管理:

商標や特許を万単位で抱える企業は自社知財の管理が複雑。それら知財を一元管理するSaaSツールが台頭(富士通:ATMS(特許管理、出願支援)マークアイ(商標管理))

知財分析&利活用:

((ワイズ特許サービス:ぱっとマイニングJP) (VLUE NEX:VALUENEXRadar))

※自分のおススメはこの「株式会社VLUE NEX」

特許技術の論文をAIに読み込ませ、一つの点に。文字情報をうまく次元を落としてマッピングする技術。膨大にある特許情報から自社の持つ技術がすでに他社に特許申請されている技術ではないか?新たなイノベーションの起点になる自社が開発すべき技術の方向性、未開の領域はどこか?

等、新たな知財情報の利活用としてハイテクノロジー分野の事業展開の意思決定の為の調査分析をするAI技術になりうる。

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産業翻訳:

海外の知的財産を扱う際申請手続きには特殊な英語を使うケースが多い。技術者が翻訳業務に割かれていた時間をAI翻訳により圧倒的短縮を実現(ロゼッタ:T-400 (知財やR&D部門に関わるAI産業翻訳)

企業分析

インターネットから拾える情報のみで分析しております。

志賀国際特許商標事務所:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

業界最大手の総合特許商標事務所。弁理士人数が150名在籍しており、弁理士在籍数としては2位の青山特許事務所の約1.6倍。
特許、意匠、商標、領域問わず総合型の展開。同社の特徴はサービス領域にも、携わるフェーズにも圧倒的分業体制が敷かれていること。

2019年:公開特許1位 / 10497件 2019年:公開意匠:1位 / 699件 2019年:公開商標23位 / 741件
主要顧客:NTTグループ、東芝、小松製作所 等

国内最大手で完全に独り勝ち状態。総合特許商標事務所として案件に困ることは現在ではあまりなさそう。

業務効率を重視し、分野別、そして業務フロー別での分業体制が非常に敷かれているがそれでも慢性的にマンパワーは不足している可能性が高い。(openworkより)
人事制度や、定着に向けた施策は今後鍵になる可能性がある。


正林国際特許商標事務所:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

準大手の総合特許事務所。

在籍弁理士総数58名と全国8~10位。特許事務所としては後発ながら成長率が高く、時代の流れには敏感で新たな取り組みにも積極的。多人数、多ジャンルの弁理士が在籍しているからこそ、おおよそどのジャンルの依頼をも請け負うことが可能。

少数の大手クライアントに依存せず、中小、事業フェーズ問わない企業が顧客。
50名超の知財調査解析事業部門を擁していたり、データサイエンス企業との提携や、イスラエルのオープンイノベーション推進企業との提携等、時代のニーズに対して提供できるソリューションの幅を広げ続けている。

2019年:特許17位 / 2026件 2019年:商標19位 / 255件 2019年:意匠15位 / 102件

主要顧客:
本田技研工業・ファナック・大日本印刷・KDDI・LIXIL・Cygames

準大手ながら、時代の潮流に合わせて攻めの柔軟な戦略が取れている。本領域の事業は人材・ブランド・ノウハウが主な経営資源、及び競争力になりうる中で、社長のメディア露出の多さ、弁理士採用、技術提携等が好調。

今後も継続的な成長が想定できる。
流行としてレガシーな業界にIT企業が新規参入して業界構造の破壊して急成長するケースが増えている。

それらに対して同社は先進的な動きができており体制も整いつつある。
今後は採用ブランディングづくりからエンジニア、データサイエンス領域の採用に注力してもよいのかもしれない。

また事務所経営におけるリスクは人的リソースに依存することも多いため、福利厚生や制度設計、人が定着する仕組みをきちんと構築していくことは時代の流れに合わせて求められる。

コロナの情勢下で、中小の事務所が倒産の危機に瀕する=弁理士が転職市場に浮いてくることも想定されるため財務体力次第では今のうちの人材拡充も狙うべきところ。

まとめ

冒頭申し上げた通り、同業界は非常に面白い。

従来の特許出願代行業だけなく、

【知財領域の圧倒的に知見 × データサイエンス(知財tech) × 経営力】

が組み合わされば非常に面白い高付加価値が生み出せる産業になるなと感じています。

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