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住民主体の地域福祉活動を展開する際に必要なこと(レポート)

 福祉サービスを必要とする地域住民を、何らかの生きづらさを経験しているマイノリティとした場合、それはマジョリティが直面していない、あるいは直面せずに済んでいる問題を抱えている住民となる。はじめに、現在の社会的な課題から施策をもとに課題を整理していきたい。
 
 マイノリティとされる地域住民の抱えている諸問題は、個人的な問題として捉えられ、社会的に解決すべき課題として公正・公平に捉えられにくい。社会全体が他者に無関心であることや、自己責任論として生きづらさは個人の責任であるとみなされ、基本的に個人の努力や負担で解決することを期待されている。その解決の努力をしたうえで、どうしようもない場合に支援が配分されるなど、十分とは言えない量であり、自ら成し得ない課題に対しマジョリティが当然のごとく権力を持つような関係性も見られる。それはマイノリティをあたりまえの生活の中の不均衡と捉えた結果、そのストレスからの解放として排他的活動に繋がり、マイノリティがその地域に合わせられない者とするレッテルが貼られる現状が存在している。
 
 近年はこうした障害による社会的不利はもとより、高齢による心身機能の低下、少子高齢化など様々な関連する問題を、社会全体で取り組むべきこととして地域共生社会が主張され、近年では厚労省の施策として「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」(平成27年9月17日)を打ち出し、包括的な相談支援システムの構築、高齢・障害・児童への総合的な支援の提供といった新しい地域包括支援体制の確立を目指すとされた。また、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)とし、子供・高齢者・障害者等全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」の実現を「我が事・丸ごと」の地域づくり、包括的な支援体制の整備としている。
 
 住民主体の原理は、地域住民等が主体となり、住民自治を基本とする計画の策定や、実践の際の意思決定過程と、社会連帯へ主体的に関わり、加えて当事者を中心として社会制度やサービスの主体的利用に向けた支援にも関わるところを原理の基本的な内容として理解する必要がある。また、重要な要素として「参加」をキーワードに次の三点を挙げている。第一に、意思決定への参加・第二に、社会連帯への参加・第三に、当事者参加を挙げるなど、マイノリティとされる住民参加への働きかけとされる。なお、当事者参加のために、①関心者への支援、②活動者への支援、③組織者への支援が挙げられており、現在の活動に対する支援から、さらなる活動の活性を示唆する内容となっている。
 
 地域性の原理 として、右田は、一定の圏域でサービスシステムを構築し展開する福祉を「地域の福祉」とよび、一方で「あらたな質の地域社会を形成していく内発性を基本とした福祉の取組みを「地域福祉」と述べて区別した。右田のいう「内発性」とは、地域社会形成力、主体力、さらに共同性、連帯性、自治性を含んだ住民の力であり、そのため高田真治も内発性を重視しており、その意味では内発性があってこそ、福祉コミュニティの構築を目指すことができるといえる。そのため内発的発展のためには,地域を単位とすることを重視する必要がある。地域を重視するのは、住民自身が、その生活と発展との形を自ら決定することを可能にするためである。右田が言うように、単位が小さいことが、自治の条件だからである。というところから、住民自らが地域の一員として自分の生活圏域等の地域福祉に目を向け、専門職といかに一緒に考えて行くことができるか、私達の地域と思える「きっかけ」をどう作っていくかが重要なポイントとなる。
 支援者が地域を作るのではなく「話し合いのきっかけ」を作るなど、専門的な視点をもち、他の小コミュニティや、若年層の活動などにも目を向けられるように、住民と共に探っていく活動が有効であると考える。また、地域の強みを意識していくことで「解決したい」という気持ちを持ってもらうなど「これが必要です」という提案よりも「これいいよね!これ作ってみたいよね!」というような自らの興味関心が持てる、内発的動機付けが自然に沸き起こり、困りごとをみんなで解決したいというところをファシリテーションすることが有効と考える。
 人的社会的資源のシステム形成の原理としては、地域福祉の資源は、支援となるように活用されてこそ資源となる。ただそこにあるだけで資源というわけではないという考えをもとに、人的資源(民生委員、介護支援専門員,保健師など各種専門職,地域で活動している住民など)社会的資源(地域の集会所、公的機関、デイサービスセンターや老人ホームなどの施設、各種制度,ボランティア団体や子育てサークルなど)これらの資源が、実際に実践するときに「ある」だけではなく、地域福祉の取組みを維持継続ないしは新たな動機付けに結びつくものなど、取組みの経過の中で常に地域住民等によって様々な形で出現するものも含むものであり、したがって動的なものと捉えることが重要である。様々な実践に活用され、それを通じて「地域共生社会」を目指しつつ福祉コミュニティおよび住民自治の確立を目指すこととなる。特に、地域の中で任命されている民生委員は各地区に配置され、とても密接な関りがある。専門職よりも地域特性や住民同士のつながりなどを熟知しており、地域のこれまでの歴史などにも詳しいという強みもある。地域の見守り活動や要援護世帯の把握、区長や隣組長、児童委員との連携、福祉推進員、協力員など地域の中にある住民組織とのかかわりも多い。そのような地域で一番近くにあるマイノリティの方への相談窓口としての活躍は著しく、なくてはならない存在である。地域づくりを担う社会福祉協議会の役割や目的にも活動として連携がとりやすく、情報の共有や、話し合いの場づくりなどへの参画は有効である。
 
 地域福祉の展開における主軸の機関として、社会福祉法において「地域福祉の推進を図ることを目的とする団体」と位置付けられているのは、市町村社会福祉協議会と都道府県社会福祉協議会である。社会福祉協議会は、社会福祉法第4条に定める地域福祉の推進を図ることを目的に、社福祉法第 109 条~111 条までの定めによって設置された公的機関である。その目的は、地域共生社会の実現であり、推進主体は地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者および社会福祉に関する活動を行う者とされている。その活動は、地域住民等が相互に協力して、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めることとされている。地域福祉推進の留意事項(地域住民等の地域福祉活動の留意事項)としては、以下の点があげられる。(社会福祉法第 4 条第 3 項)① 地域生活課題を主体的に把握する。② 地域生活課題の解決に向けあらゆる地域の機関や団体と協働する。③ あらゆる分野の活動に参加する機会を確保する。④ 支援関係機関と連携する。これに基づいて、福祉コミュニティの実現に向け、一部が政策化され、「地域共生社会」とされている。このように民生委員の活動と社会福祉協議会の理念が調和しており、ミクロからマクロに至るまで地域住民の地域活動への見守りや参画が連携により効果的になされる仕組みの実現が可能である。
 地域支援については、「地域」そのものの働きとしての「場」の機能と、「地域」づくりへの取組としての「地域づくりをコーディネイトする機能」を国の関係資料では説明している。現実には、「地域活動」と「地域福祉活動」の共通点や違いなどについて地域住民に必ずしも普及しているわけではない。「地域支援」の取組においては、一定の社会資源や組織および、役職員等のキーパーソンがいることを前提とした内容となっている。具体的には、地域のサロン活動や小集団での居場所づくり、近年では介護予防への取り組みとしての100歳体操や子供の居場所としての子ども食堂などがある。また、災害への備えとした地域の防災活動や、緊急時に備えた見守りネットワークなど仕組みとして確立していることもたくさんある。また、運転免許証返納後の移動手段の確保として社会福祉法人の地域公益活動とのマッチングからデイサービスの送迎者を使用した送迎バスの提供など、生活支援コーディネーターと地域住民の協力による仕組みづくりなどもすすんでいる。
 このような地域支援において重要な点は、行政や社協が計画を策定したとしても、基本的に「自分の地域は自分たちで創る」という意識を刺激し、動機づけを行うことである。国の政策であるからとして、各地域の役職員に活動を強いる形にならないように勧める必要がある。そのためには、しっかりと話し合いの場を設けて、自分たちの意見をどんどん述べる場を設け、それを文字化することである。
 地域福祉の実践として、マイノリティとされる社会福祉サービスを必要とする地域住民を支援し、かつ地域社会での包摂を軸にするという理解の仕方と、さらにそこから住民自治の確立に向けた取り組みとして位置づける理解の仕方の諸説がある。様々な資源を有機的に結び付けた支援のシステムの構築が地域福祉推進上求められる。地域の中にある様々な資源の調査や、有効活用できるようなアイデア出しなどから、地域の強みや弱みを話し合える機会から、興味関心のベクトルが小地域コミュニティに浸透していくような活動のきっかけづくりが大切と考える。
 マイノリティとされる住民が努力し、マジョリティに合わせる社会構成を、地域住民一人ひとりがそれぞれの環境を理解し、フォーマル、インフォーマルサポートを気兼ねなく利用できるような対話の機会や、現在の施策への批判的視点を交え、当たり前の生活が送れるような社会を目指していく必要がある。

 声なき声を拾えるよう、地域づくりから権利擁護を考えていきたい。

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