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②塩分コントロール技術とアルギン酸 ~腎臓と塩分~

これまで塩分の摂り過ぎに対する対策として「減塩」や野菜・果物によるカリウム摂取などが推奨され、多くの人々の健康に寄与してきました。
しかし、これらの対策にもメリットとデメリットがあることをご存知でしょうか?
ヒトにおける塩分の吸収・代謝のしくみと、塩分対策のメカニズムについて紹介します。

塩の吸収と代謝のしくみ


食事などで摂取した塩分(ナトリウム)は胃で消化され、そのほとんどは消化管で吸収され、血液中に取り込まれます。
血液中に取り込まれたナトリウムの90~95%が腎臓で調整され尿として排出されます。(その他便として5%未満、汗や体液として1~2%排出されます。)
では、ここから腎臓という臓器のはたらきについて説明していきます。

腎臓という臓器

腎臓は握りこぶしの大きさで、よくそら豆の形に似ているといわれます。
腎臓には大きく分けて次の3つのはたらきがあります。

1)老廃物の排泄
2)体液の調節(水分、電解質、酸・アルカリバランス)
3)ホルモンの分泌

腎臓には1分間に1,200mLもの血液が流れて、その状態を絶えずチェックするというはたらきをしています。このセンサーのはたらきで、排出したり再吸収したりと、体を一定の状態に保っているのです。

血液をろ過して尿をつくる

腎臓に流れ込む血液のうち約半量は血漿(けっしょう)として糸球体を通過し、ろ過される原尿は1日あたりで150Lもの量になります。しかし、最終的に尿として排泄されるのは1日に1.5L程度なので、99%は再吸収されているということになります。
不必要な「老廃物」はこの1%に凝縮されて排泄されます。

体液の調節によって不要となった電解質(カリウムやナトリウム)もこの段階で排出されます。
腎臓や高血圧関連の専門施設では食塩摂取量を推定する標準的な方法として、24時間蓄尿検査を実施しています。


カリウムでナトリウムを排出する

カリウムを含む食品と注意するべき人

カリウムは野菜や果物に含まれるミネラル成分の一つです。
カリウムを適切に摂取すれば、体内のナトリウム(塩分)の排出を促し、血圧を下げる効果があります。ほうれん草やバナナなどは食生活に取り入れやすく、カリウムを多く含みます。

ただ、塩分などの食事制限をもつ人には高血圧の人だけでなく、
・糖尿病の人
・腎臓病の人
・人工透析を行っている人
がいます。

健康な人とは異なり、おくすりとの飲み合わせや内臓の機能低下によって避けるべき人もいます。特に腎臓病など腎機能が低下している人が過剰にカリウムを摂取すると、排出がうまくいかず心疾患を引き起こす恐れがあります。
先述した腎臓という臓器に対して、カリウムもナトリウムも排出や調整の対象となるため、負担は大きいのです。
食塩の代替塩として一般的な減塩しおは塩化カリウムを含みますので、人工透析を行っている人はこのカリウムを避けなければなりません。


食物繊維「アルギン酸類」による塩分の制御

食物繊維とアルギン酸

食物繊維は消化されにくい炭水化物の一種です。
主に野菜などに含まれており、繊維質がゆるやかな食事の吸収を助けたり、排便を促したりします。また、腸内で善玉菌のエサになって腸内環境を整えるはたらきもあります。
では「塩分コントロール技術」という概念に登場するアルギン酸類は、どういったものなのでしょうか。

結論から言うと、アルギン酸には選択的にナトリウムを吸着するはたらきがあります。また、他の食物繊維同様、主に便によって排出されます。

ファイバー = 食物繊維

塩分吸着のひみつ

アルギン酸類は、構造としてカルボキシル基(-COO(H))をもつため、陽イオンと簡単に結びつくことができます。

食塩(NaCl)を多く含む食事と一緒に摂取されたアルギン酸類は、体内の消化酵素などによってカルシウム(Ca)、アンモニウム(NH4)が分離し、代わりにナトリウムイオン(Na)と結びつきます。

このような吸着反応をイオン交換反応といい、Naを選択的に吸着してくれます。この反応が消化管内で行われることによって、血管内に吸収されず体外に運び出すことが可能になっているのです。
アルギン酸はNaイオンと結びつきが強く、吸着したあと食物繊維として排出されるため、Naの吸収を抑える作用に特化しているともいえます。


長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。記事追加にあたって、塩の吸収と代謝にも視野を広げております。
ぜひ次回の効果についての記事にもお立ち寄りください。


https://www.shionavi.com/salt-excretion/technology


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