外山恒一&藤村修の時事放談2019.6.9(その3)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 〈第1部(無料)・第2部からつづく〉

 第3部は原稿用紙換算26枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含みます。

     ※     ※     ※

  “報道のバラエティ化”の元凶

藤村 ……しかし今日は〝時事放談〟的にどうなんですかね。川崎の通り魔事件とか、あんまり関心ないの?
外山 いや、単に知らないんだ。世の中で起きてることをほんとに何も知らないに等しい状態で、むしろそれをどうにかするために、藤村君に定期的にいろいろ教えてもらおうって企画でもあるんだからさ(笑)。ツイッターでも数人しかフォローしてないんで、〝ニュース〟的なものもあんまりぼくのタイムラインには流れてこないからなあ。……あ、そういえば福岡でも、なんか西新の交差点で大きな事故があって、かなり騒がれてるらしいじゃん。
藤村 うん、あれは高齢者が運転してて……。
外山 だけど扱いのバランスがおかしいと思うんだよ。〝通り魔殺人事件〟はさすがに、昔であってもそれなりに大きく扱われてただろうけど、それでも今ほど大きな扱いにはならないよね。〝高齢者の交通事故〟なんて、死者が出たとしても地方欄のベタ記事だったでしょう。
藤村 まあそうだろうな。
外山 〝事件・事故〟のニュースは、内容以前にそこらへんでもうウンザリするよ。
藤村 久米宏が悪いんです(笑)。
外山 そうなんだけどさ(笑)。
藤村 外山君が『全共闘以後』で書いてたとおりですよ。久米宏が「ニュース・ステーション」で報道をバラエティ化してしまった。久米宏の場合は、〝反権力〟というスタンスでそれをやってたから、まだよかったけど……。
外山 それは久米宏個人の〝キャラ〟に寄りかかって維持されてた水準にすぎないからね。
藤村 別の人がそれをやり始めたらダメだよね。
外山 ただのバカウヨ・バラエティにしかならん。
藤村 当時まだネットはなかったが、〝「ニュース・ステーション」は許せん〟という体制的な右派の声は高まってたもん。
外山 で、左派的な「ニュース・ステーション」に対抗して、〝報道のバラエティ化〟というまったく同じ手法で他局が次々と新しいニュース番組を始めたのが、そのまま現在の姿につながってる。もちろん当初はここまでヒドくなくて、要はフツーの奴がフツーのコメントをニュースに付け加えるだけで、単に〝面白くないバラエティ〟にすぎなかったわけだが……。
藤村 それがだんだん……。
外山 スキルが上がって、とりあえずどんどん〝面白く〟はなってくるんだけど、内容的には体制側の手先みたいなものでしかなくて、つまりオカミにタテつく連中を冷笑して〝面白く〟するっていう。
藤村 その結果、このテータラク。
外山 「ニュース女子」だってもう、だいぶ前の話でしょ?
藤村 まだやってるのかなあ。
外山 だいぶ初期にYouTubeで見て、ついにここまで来たかというヒドいシロモノだったけど、何年か前の時点でもうああなってたわけで、今はあれよりマシになってるわけないし、もっとヒドくなってるに決まってる。あれよりヒドいって、そんなのがあり得るのかと思うけど、あり得るんだから恐ろしいよね。まさか小泉やブッシュ・ジュニアより〝下〟があり得るとは思いもしなかったもん(笑)。「ニュース女子」よりヒドいのもすでにあるに違いないことは、見なくても予測できる。というか、たぶん「ニュース女子」的な感覚がおそらくはもはや〝前提〟でしょ?

  松本人志の“問題発言”

外山 そういえばリベラル派が松本人志を叩いてるツイートをよく見かけるようになってるけど……。番組自体を1度も観たことがないから実際どうなのかよく知らんが、たぶん相当ヒドい発言を連発してるのは事実なんでしょう。だけどそもそも芸能人というのは、〝空気を読む〟ことのプロなんだ。で、松本人志に至ってはもう、その〝プロ中のプロ〟なわけです。そういう人が、伝わってくるようなヒドい発言を連発しているというのは、松本人志個人がどうこうというより、世間の〝空気〟自体がもはや完全に「ニュース女子」レベルになってるということを単に反映してるんだと思う。
藤村 ただ松本人志の場合は……例えば川崎の通り魔事件で、犯人の男はずっと引きこもりだったわけだけど、それに関しての松本人志の発言と爆笑問題の太田光の発言が、よく比較されてるじゃん。

続きをみるには

残り 8,664字

¥ 260

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?