劇団どくんご2014年福岡公演“終演後の打ち上げ”実況(その3)

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 〈「その2」から続いて、これで完結〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 『全共闘以後』でも詳述した、私のイチオシ「劇団どくんご」の、2014年の「OUF!(ウフ)」福岡公演2日目(11月9日)の“終演後の打ち上げ”の場での、いろんな人(劇団員や他の観客)との歓談のテープ起こしである。紙版『人民の敵』第3号に掲載された。
 どくんごは今年もツアーを敢行しており、これを書いている2019年11月15日現在、福岡公演が終わって、あとは熊本県荒尾市と、鹿児島市での公演を残すのみである。そのダメ押し的な情宣を兼ねての公開である。
 「OUF!」どころかまだ1度もどくんごを体験していない意識低すぎる系もしくは意識不明系の諸君は、これを読んで「こんなに面白そうなものがあるのか!」とようやく意識を回復して、今からでも遅くはない、熊本か鹿児島に観にきなさい。

 第3部は原稿用紙換算15枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含む。

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 どくんごの芝居を“解釈”する!

高平(水俣在住の劇団最古参スタッフ) 何だ、この暖かさは。

女性E(福岡公演スタッフ) 客席下のストーブは今回のツアーでは初めて見た気がする。

外山 ストーブは念のために出しといただけでしょ?

どいの うん、今日は単なる“念のため”。“せっかく出したんで火をつけてみました”ぐらいのこと(笑)。

外山 久留米公演も本番の日は暖かかったよね。熊本公演も、そんなに寒くはなかった。

女性E 用心して着込んで行ったら暑いぐらいだった。

どいの 熊本スタッフの人たちが事前にすごく脅してたでしょ。

女性E メチャメチャ寒いから気合い入れて来いって。

高平 でも次の宮崎公演はいよいよ寒そうだ。

外山 年によるんだよなあ。福岡公演も、ムチャクチャ寒い年もあった。

どいの “厳寒”だったよね、最初の年。「面白かったけど、寒かった」って感想ばっかりだったもん(笑)。

高平 印象として残るのは、とにかく寒かった、と。

どいの 「寒かったけど、面白かった」では決してない(笑)。

女性E 観てる側は、そんなに気になりませんよね。

どいの そんなことないよ!(笑)

女性E 寒さなんか感じてるのは集中してない証拠ですよ。

高平 いやいやいやいや……。まあそれぐらい密度の濃い芝居だったらいいんだけどさ(笑)。

どいの スカスカだからな、おれたちの芝居(笑)。

女性E そんなことないですよぉ。

どいの “勝手に解釈しろ”みたいな芝居だからなあ。

外山 やりっぱなし(笑)。

高平 意味なんか後でそれぞれ勝手に考えろや(笑)。

女性E でも私は今日で計3回観て、意味が分かりましたよ。

一同 おーっ!(笑)

外山 謎が解けたんだ。

どいの どう分かったんですか。

高平 おれなんか未だに分かんないよ(笑)。

女性E 私の解釈を云っていいんですか?

外山 「どくんご」解釈界、ウチの桜子かEさんか……。

どいの 云って云って。

女性E “先生”が……。

高平 “先生”って誰?

どいの “ピーターさん”ね。

女性E 寝てて、目が覚めるじゃないですか。

外山 あ、ラストシーン。「長い眠りから目が覚めると、傍らに一匹の魚が云々」みたいな。

女性E そういう、“すべては夢だった”系じゃないんですか?

どいの いや、分かんない(笑)。


 「OUF!」解釈・山本桜子篇

女性E 「腹が減って、お腹が鳴った」のも全部、夢の中の話なのかなって。

どいの なるほど。

高平 ちょっとなあ……。(九州ファシスト党の山本)桜子さんはもっと詰めてくるよ(笑)。

女性E 全体的なテーマは、呼びかけと応答、コミュニケーションの希求なのかなあと。

どいの まあ、そればっかりなんですよね。

女性E やっぱり。

どいの いや、意図してたわけじゃなくて、それも桜子さんに云われて気づいたんだけど、云われてみると“通信”のシーンばっかりなんですよ。

外山 桜子が今回云ってたのは、まず劇団側が豪語するとおり今回の作品は“本格SF”である、と。で、“本格SF”の本質というのは“神と電話が繋がらない”というテーマに尽きる、と。

高平 神と電話が……(笑)。

どいの “希求はしてるが、繋がらない”

外山 そうそう。まあそんなこと云い出したら“神とのディスコミュニケーション”は近代芸術共通のテーマで、SFとて例外ではないって話でしかないけどさ(笑)。で、そう云われてみれば確かにとにかく“通信”のシーンが多い。

どいの 多いんだよな(笑)。

高平 そうだっけ?

どいの 2B(劇団員)の「タータタタタタタ」から始まって……。

外山 百合絵さんは「宇宙防衛軍の仲間と連絡を取り合ってる」し、ちゃあくんに至っては電話ネタを2つもやってる。

女性E メッセージがうまく伝わろうが伝わるまいが、コミュニケーションを求めてメッセージを発し続けていくという、演劇という行為そのものについての決意表明のような……。

どいの うわー、いいなあ。若い若い(笑)。

女性E バカにされてる……。

どいの 若々しい意見だ(笑)。

女性E 全体としては夢の中の話なんだけど、夢を見てる“先生”も他のキャラクターも全員同時に登場するシーンもあるじゃないですか。だから一応はすべての登場人物が同じ時間軸上にいるんだということも、今回の作品では分かるようになってる。それが比較的ストーリーが分かりやすいっていう今回の特徴にもつながってると思う。

外山 分かりやすかったんだ(笑)。

女性E いや、分かりやすいというか、いろんなシーンのつながりを掴みやすい。それはやっぱり今回は一人芝居の寄せ集めではなく、部分的とはいえ脚本があるからかも。

どいの そうですね。ストーリーがチラ見えするところはある。


 「OUF!」解釈・外山恒一篇

外山 ぼくの解釈は云ったっけ?

どいの いや。

外山 登場人物の多くが“魚”を追ってるよね。“魚”がキーになってることは間違いない。

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