外山恒一&藤村修の時事放談2018.4.25「〝いい人〟安倍ちゃんは政治家には向いてない」(その5)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その4」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 FランのJ出版界が粗製濫造するFラン文化人の順列組み合わせ的な対談本の類とは比較にもならん超ハイレベル対談なので意外と……いや当然ながら大人気の、福岡在住の同い年の天皇主義右翼(でもインテリ!)・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
 2018年4月25日におこなわれ、紙版『人民の敵』第42号に掲載された。。

 第5部は原稿用紙21枚分、うち冒頭8枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその8枚分も含む。

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 10年代は〝スカ〟だった!?

外山 例の〝10年周期説〟(外山が『青いムーブメント』彩流社・08年で提示した、48年の全学連結成、60年安保闘争、〝68年〟の全共闘……の以降も、実はおよそ10年周期で〝若者たちによるラジカルな運動〟の高揚は繰り返し起きている、という説[『全共闘以後』でもおおよそ踏襲])で、00年代後半のフリーター労組の〝生きさせろ!〟運動や素人の乱に続く〝10年代後半〟の高揚がそろそろ何か起きるはずだと思ってたんだけど、これはたぶん何も起きないね。そもそも本来なら昨年、一昨年ぐらいからその萌芽みたいなものは出てきてなきゃおかしいんだけど、とくに何も起きてないしさ。

藤村 その〝萌芽〟が例えばシールズとかだったりはしないの?

外山 うん、その可能性はもちろん考えてたよ。正確に云うと、反原連とかシールズは80年代で云えば〝反核運動〟みたいなもんで、それ自体には何の重要性もないんだけど、それに巻き込まれるとこから活動家ライフを出発させて、試行錯誤の上でラジカリズムの花を咲かせるような奴が登場する可能性には期待してた。あるいはシールズが、青生舎とかピースボートとか一水会みたいな、〝リベラル〟から〝ラジカル〟への橋渡しの役割を果たす可能性だよね。

藤村 〝元気印〟的な……(笑)。

外山 それでさえ〝期待しすぎ〟だったんだなと思い知らされてます。

藤村 たしかに今、何にもないもんなあ。

外山 青生舎とかは、いくら〝ヌルい〟とはいえ一応は〝68年〟に発祥する運動だしね。〝麹町中学全共闘〟から始まってるんだから(笑)、そりゃあシールズとはそもそも同列にはできない。
 それに〝10年周期説〟とか云っても、実は80年代末以降は、〝世代交代〟はしてないんだ。まったく同じ〝70年前後生まれ〟のぼくらの世代のいろんなタイプの活動家が、入れ替わり登場してたにすぎないんだもん。本来は今なら〝00年前後生まれ〟の連中が登場してこなきゃいけないんだが、そもそも〝80年前後生まれ〟、〝90年前後生まれ〟の連中が00年前後や10年前後に大量に登場したってこともなかった。

藤村 野間さんたちの運動はどういう位置づけになるの? 野間さんたちも〝70年前後生まれ〟で、ぼくらと一緒でしょ?

外山 清さんもノイホイさんもそうだし、反原連のミサオ・レッドウルフもたぶんそうだよね。だけどさすがにぼくらはもうオッサンでしょ。80年代で云えば、ちょうど全共闘世代みたいなもんだよ。82、83年に全共闘世代の連中がくだらない〝反核運動〟に合流していったように、02、03年にまず我々の世代の愚劣な部分がアフガン反戦、イラク反戦で〝パヨク〟の源流を形成して、そこらへんまではアナロジーできる。
 反原連やしばき隊はさらに約10年後の12、13年だけど、そこまで無理矢理アナロジーすれば、〝反核運動〟というより92、93年の反PKO運動かもしれない。反PKOの時に予備校の左翼講師に連れられて国会前に集まってきたような連中が〝議面世代〟(議員面会所前に集合した)とかオダテられたように、反原連の周りに集まってきたシールズを朝日新聞とかが持ち上げるわけだ(笑)。

藤村 でもまあ、〝元気印〟に近い役割を果たしそうなものがあるとすれば、しばき隊というか、狭義の〝パヨク〟的なものぐらいでしょ?

外山 かろうじて直接行動的な志向はあるもんね。〝国会前〟とかじゃなくて、新大久保とか、〝そこらへんの路上〟で暴れてるところには可能性を感じさせられなくもなかった。〝国会前〟とかは〝ストリート〟ではないし、〝直接行動〟でもありません(笑)。


 〝ナカソネを倒せ!〟と〝アベを倒せ!〟の差

藤村 〝アベを倒せ!〟で、安倍ちゃんが倒れたり、あるいは倒せないことがはっきりした段階で、彼らがいよいよ目覚めたりとか……。

外山 80年代は〝ナカソネを倒せ!〟だったけど、80年代と違って今は〝土井たか子〟がいないんだよな。

藤村 いないねえ……。

外山 枝野じゃダメだもん。土井たか子の10分の1スケールにすら達してない。まだ菅直人のほうが……。

藤村 そうだね。

外山 要するに土井たか子は、必ずしも〝議会政治〟の枠内に収まらないような部分まで熱狂させたわけだよ。保坂展人も辻元清美も、もともとは〝議会政治〟とはほとんど無縁な人で、そういう部分のエネルギーまで結集した。もちろん功罪はあって、保坂も辻元もその結果、議会政治の〝中の人〟になっていっちゃうんだけどさ。
 枝野よりむしろ菅直人に、ちょっと土井たか子っぽいところはあった。〝議会外〟の過激派、例えば中川(文人)さんも中川さんの兄(中川右介氏)も菅直人の運転手をやってたことがあったり、息子(菅源太郎氏。反管理教育の活動家だった)を介して外山恒一とさえつながってたりする(笑)。
 ……あ、山本太郎がいるか。でもまあ、勢力的にねえ。〝個人〟として存在してるだけで、それこそ土井たか子の百分の1スケールだもんなあ。

藤村 〝政治家〟ではなく在野の〝政治活動家〟で考えても、保坂展人みたいな人はいないでしょ? これもやっぱりせいぜい……金友隆幸(笑)。

外山 いやもうまったく、おっしゃるとおり(笑)。ほんとに金友君ぐらいしかいないんだ。松本哉や雨宮処凛は年下だけど70年代前半生まれだし、同世代だよね。もっと下の、新しい世代の活動家で、明らかにアタマ1つ抜きん出てる存在は金友君以外には見当たらない。

藤村 実際やってることの方向性は全然違うけど、例えば宮沢(直人)さんが88年にやってたような激しい反原発闘争とか、ああいうものを担う能力がある活動家は、たしかに金友君ぐらいで……うーん、とっても不吉な予感がする(笑)。

外山 金友君が今の方向のままいけば、可能性としては〝過激な排外主義運動〟をもっと本格的に担うという絵しか浮かんでこないもんね(笑)。


 21世紀の〝若い活動家〟群像

外山 ……今回、(単行本版の)『全共闘以後』を書き進めながらいろいろ調べたんだよ。だけど〝左〟の側で多少なりとも目立ってる80年代以降生まれの活動家は、素人の乱の二木信にしても、ヘサヨ系の園良太にしても、あるいはやっぱりイラク反戦あたりから登場した菱山南帆子って人もいるらしいけど、さらに90年代生まれの奥田愛基にしても、どいつもこいつも結局は親や先生の影響で左傾したような奴ばっかりでさ。
 二木君は直接知ってるから悪口も云いにくいんだが、たしかにどうも〝教科書的〟な発言の多い奴だという気は前からしてて、今回調べたところによれば、実はそもそもは酒井隆史の教え子らしくて……ガッカリだ!(笑)

藤村 そういえば常野雄次郎さんは亡くなりましたね。

外山 えっ、そうなの!?

藤村 らしいよ。1ヶ月ぐらい前じゃないかな(おそらく3月末)。オレもだいぶ経ってから知ったんだけど、ずっと病気で大変な状態だったみたい。あの人は、たしか登校拒否をしてた人でしょ。

外山 そうだと思う。もともとはぼくの本の愛読者でもあったみたいで、校門圧死事件の本(『校門を閉めたのは教師か』駒草出版・90年)を朗読しながら号泣してる、妙な動画をユーチューブに上げてたんだよな。彼も80年前後の生まれだよね?

藤村 たぶん(77年生まれ)。

外山 ぼくの愛読者でありながらヘサヨの軍門にくだるという……山口素明の一派(「ヘイトスピーチに反対する会」。〝ヘサヨ〟の語源)にも所属してた。ぼくはそういう奴を、死んだからといって遠慮はしないんではっきり云うけど、しょーもない奴だと思って軽蔑してましたよ。でもまあたしかに、常野雄次郎も新世代の中では目立ってた1人ではありましたね。

藤村 彼はあんまり〝親の影響〟とかじゃないんじゃない?

外山 いや、あんまり注目してなかったんでよく知らないけどさ(笑)。でもまあ、せめてそうであってほしい(改めて調べてみると、しかし案の上〝フリースクール〟の元祖的存在である「東京シューレ」の出身である)。

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