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「隙の糸」を見つけて勝ちをつかむ!~振り飛車の呼吸 参ノ型「三間飛車」~

『鬼滅の刃』を用いて三間飛車を解説するシリーズ。
基本編と、序盤~中盤の終わりの解説は、以下をご参考ください。


今回は、中盤の終わり~終盤を解説します。
竈門炭治郎は「隙の糸」を見つけて鬼の首を斬って勝利を得ます。
将棋では、相手の玉の「隙の糸」を見つけて詰みに持ち込むことで勝利を得るのです。



なお指し手の内容は、cakes連載とほぼ一緒です。
連載では『鬼滅の刃』要素は抜きで、より詳しく解説しているので、ご参考ください。

おさらい

まずはここまでのおさらいをしていきます。

棋譜23手

三間飛車にしっかり組み上げました。これが理想図です。
右側は「美濃囲い」に組んでいます。
玉は禰豆子です。しっかり箱(囲い)に入れないといけないのは、前回も解説した通りです。

禰豆子



相手は棒銀戦法できています。
棒銀は伊之助のように猪突猛進で突き進んでくるので注意が必要です。



棒銀は、将棋を覚えてまず最初にマスターすべき戦法です。
そのため、初級者のうちは棒銀を相手にすることが多いと思います。

対して、三間飛車は棒銀に相性のいい戦法です。
「水の呼吸-参の型-流流舞い」のように、相手の攻撃をかわしながら斬りましょう。



△7五歩と「合わせの歩の手筋」で攻撃開始。

棋譜24手

ここで▲6八角と引くのが好手です。
対棒銀では、「合わせの歩」を取らないことで、相手の猪突猛進を回避します。

棋譜25手

以下、△7六歩に▲4六角と飛車取りに角を出て、

棋譜27手

△7三銀と飛車取りを防いだときに▲7六飛と歩を取り返します。

棋譜29手

△4四歩と角を狙ってきたら▲7三角成が狙いの強手!

棋譜31手

桂で取られます(△同桂)が、飛車で取り返して(▲同飛成)、

棋譜33手

角と銀桂の交換はほぼ五分のやり取り。
飛車を成ることが出来たのは先手の成果。
ということで、先手が有利になりました。

このように「流流舞い」が決まった図が前回の最後でした。

隙の糸を見つけるには

「隙の糸」とは、炭治郎の特殊技能で、鬼に「隙の糸」が見えたときに刀を振るうと首が斬れるというもの。
将棋でいえば、相手の玉に詰みが見えたとき、きちんと「隙の糸」に沿って指せば勝てるのです。

ではここから相手玉の「隙の糸」を見つけるためにはどうすればいいか。
段階を追って解説します。

まず先ほどの図から、▲7二竜と竜を動かします。


相手の飛車を取る手なので逃げてきます(△8四飛)が、肝心なのは竜が玉と同じラインに入ったことです。

棋譜36手

これが「隙の糸」を見つける第一歩です。

ただ、「隙の糸」を見つけにいくにはまだ戦力不足です。
そういうときは、「金を作る」のがポイントです。



「金を作る」=「成る」
つまり、歩を成ることで金を作るのです!
そのための手は▲7四歩

棋譜37手

これを「垂れ歩」の手筋といいます。
私の本でも度々出てくる、重要度の高い手筋です。


相手は歩を成る手を受けられないので、△8八角と攻め合ってきます。
そこで▲7三歩成として「金を作る」ことに成功!

棋譜39手


攻める駒は、竜・と金・持ち駒の銀と桂。
4枚あれば十分です!
相手玉の「隙の糸」を見つけるための戦力が整いました。


守りを薄くする

と金が相手の守りに肉薄しつつあり、終盤戦に入ってきました。
終盤の最終目的は相手の玉を「詰み」に持ち込むことです。
その前段階として必要なのは、相手の玉を守る駒を盤上から消すことです。

先ほどの図から相手が△9九角成と香を取ってきました。

棋譜40手

ここで▲6三と、と歩を取りながらと金を寄ります。

棋譜41手

と金を金で取ると、竜で玉を取って勝ち!
そこで△8九馬と桂を取ってきました。

棋譜42手

さぁ、と金で金を取りましょう(▲5二と)。

棋譜43手

これで玉を守る相手の駒が一つ減りました。
△同金に▲同竜

棋譜45手

さらに守りの駒が一つ減りました。
こうして玉を守る駒を減らすことで「隙の糸」が見えてくるのです。

なお、と金の活躍で、金2枚と歩の交換で大きな「駒得」になったのも見逃せないポイントです。
と金は相手に渡すと歩に戻ります。そのため、と金となにかが交換になれば「駒得」になるのです。


「隙の糸」が出た!

△4二銀と竜のききを遮ってきました。

棋譜46手

さぁ、「隙の糸」が出ました!
終盤の最終目的であり、将棋の最大目標である、相手玉を「詰み」に持ち込むところにきています。

その一着は、▲4三金

棋譜47手

この形を「一間竜」といって、竜と玉が一間挟んで隣にいる状況を指します。
この状況で図のような手を指せると強力な攻めになるので覚えておきましょう。


この金を玉で取るわけにはいきませんし、銀で取るのも竜で玉を取られます。よって相手は△3一玉と逃げます。

棋譜48手

そこで詰みの基本、頭金の登場です。相手の玉の真上に金を打ちます(▲3二金打)。

棋譜49手

見事に相手の玉を「詰み」に持ち込みました!
「隙の糸」が見えた炭治郎がキレイに鬼の首を斬った図です。
(なお▲4二竜や▲4二金と銀を取っても「詰み」です)


おわりに

上達するためには、一つの戦法をしっかり磨くのがオススメです。

三間飛車の記事を基礎として、ぴよ将棋や将棋ウォーズで実戦を重ねて磨いていくのが近道です。

そして実戦で三間飛車にすると、相手も振り飛車でくることもあるでしょう。
これを相振り飛車といって、三間飛車を使う場合には覚える必要のある戦法です。

相振り飛車については、下記を参考に端攻めを覚えましょう。


三間飛車と相振り飛車の手筋は、新刊にたっぷり収録しています。
手筋を覚えて中盤力を強化しましょう!



序盤:三間飛車と相振り飛車の駒組みを覚える
中盤:三間飛車と相振り飛車の手筋を覚える
終盤:詰将棋を解く

これで勉強を重ねていけば、必ず初段も見えてきます!

今後も初段を目指すための記事を書いていきますので、そちらもぜひご参照ください。


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