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四間飛車3連戦からみる、令和の対振り飛車戦略 ~自戦記 特別編~

2022年に入り、3局連続で先手四間飛車と対峙しました。
ここ最近は振り飛車の採用がプロ全体でも増加傾向にあるとはいえ、極端な偏りです。

今回はその3局がどんな展開に進んだのか、ご紹介します。
現代振り飛車の現状が垣間見えるはずです。

端の突き合い

3局とも出だしは一緒でした。

(新規棋譜)3手

開局早々、先手が端を打診してきました。これが現代振り飛車の指し方です。後手の対応によって振る筋を変えたり、角道を止めなかったりします。

私は3局とも△1四歩と受けて、端を突き合う形を選択しました。
端の位を取られると、四間飛車では藤井システムとトーチカという2つの有力な選択肢があります。「トーチカ囲い」が選択肢に加わったのが現代振り飛車の特徴です。

基本形

端を突き合って四間飛車に振ると、下図が一つの基本形となります。

(新規棋譜)22手

△7四歩と急戦をみせた手に対し、四間飛車の対応によって居飛車も作戦を変えます。

今回の3連戦においては、

1月13日高田四段戦(順位戦)・・・▲6七銀
1月19日室岡七段戦(王将戦)・・・▲3六歩
1月26日鈴木九段戦(棋王戦)・・・▲2八玉

それぞれ対応が異なり、ここから展開が大きく変わっていきました。
なお、室岡七段戦と高田四段戦は基本形を経ずに後で合流しました。

高田四段戦

高田四段との対戦では、▲6七銀型に△6四銀~△7五歩と急戦に出て下図に進みました。

2022.1.13高田 順位戦35手

ここで△7三銀が令和の時代の手。
旧来は△3三角と△5三銀が主流で、さばき合う将棋になります。

△7三銀は流れを穏やかにして、△8八角を間に合わせようというもの。
実戦はそれでも先手が強引にさばいてきて、対応する展開になりました。

実戦的な食いつきを許して劣勢に追い込まれるも、粘って逆転。しかし着地に失敗して敗れました。

室岡七段戦

室岡七段との対戦では、▲3六歩型に△7二飛と飛車で7筋を狙いました。

2022.1.19室岡 王将戦25手

ここからすぐに△7五歩と仕掛けず、△4二金上・△9四歩・△4四角と手待ちを重ね、相手の形をみてから△7五歩と攻めていきました。

旧来は△7五歩▲同歩△同飛▲6七銀に△7六歩~△1五歩と自玉の端を絡めて攻めるのが主流でした。
それも有力ですが、手待ちをするのも後手らしい指し方といえます。

互角の展開が続きましたが、終盤でパンチを食らって敗勢に。しかしギリギリのところでひっくり返して逆転勝利となりました。

鈴木九段戦

鈴木九段との対戦では、▲2八玉に△3三角から穴熊を目指しました。
▲2八玉まで囲われると急戦にいきづらい反面、穴熊に組む際に玉頭攻めをされにくいメリットがあります。

2022.1.26鈴木 棋王戦30手

ここで▲2五桂や▲4五歩といった玉頭攻めをすると、先手は2八玉と入城した手がかえってマイナスになります。そこに目をつけて穴熊を目指したのです。

そこで先手も▲5六歩△1一玉▲5五歩と攻めてきました。これは7四歩型を咎めた順で、△同歩▲同角が飛車取りになります。
実戦は△2二銀▲6七銀に△8六歩▲同歩△5五歩▲同角△8六飛とさばきあいになりました。

互角に近い展開でしたが、一瞬のスキをついて襲いかかり、穴熊の遠さを生かして1手勝ちをおさめました。

まとめ

先手四間飛車に対抗する作戦をみてきました。
相手の形によって策を変える必要があり、難易度が高い指し方です。
それだけ先手四間飛車は強敵であり、策を練る必要があるのです。

四間飛車は時代を経ても常に有力な作戦であり、今後も中継で登場することでしょう。
皆さんにとって、観戦の際の参考になれば幸いです。

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