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幻の勝ち筋を追いかけた一局~増田(康)六段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。
竜王戦2組昇級者決定戦1回戦で、負けると降級となる一番です。
後手△が私です。

幻の勝ち筋

圭=成桂 以下も同様

夕食休憩の図。研究の整っていた形だったので時間の消費が少なく、この局面を迎えた段階でまだ3時間近く残っていました。
いけそうな手応えもあり、残り時間を生かして読みふけりました。

選択肢は△7八金と△6六歩。
△4五同銀は▲4三歩成の空き王手が厳しい形。
そこで△7八金▲同銀△4五銀として、▲4三歩成に△6六桂と攻防手で応じるのが第一感でした。

ただ自玉が薄くなり、先手玉を捕まえるのも大変で感触の良くない順です。
代えて浮かんだのが角道を止める△6六歩。銀取りですが、普通は▲5八銀と、と金を取られる手があって成立しない類の手です。

△同金だと攻め駒が遠のくので▲3四成桂で手負けします。
しかし▲5八銀には△7八金とこちらを取るのが好手。以下▲同玉△4五銀▲5七銀△6七金

攻め駒を一掃されたようでも、この王手が強烈です。
以下▲8八玉△7七金に▲同桂は△6七歩成、▲同玉は△6五桂で攻めが続きます。後手玉は成桂を払ったことで安全です。
この順に期待して△6六歩を選択。精査すると図は後手が優勢なので判断としては間違っていません。


次の一手

しかしこれは幻の勝ち筋でした。
実戦は△6六歩に▲3四成桂△6七歩成▲2四歩と強く踏み込まれ、

やむを得ない△同歩に▲9八玉が次の一手に出てきそうな早逃げでした。

▲9八玉に代えて▲4三歩成だと△7七とが逆王手になります。もし▲9八玉に△7八金だと▲4三歩成△7七とが王手にならないので、▲2三銀から詰まされてしまいます。

▲9八玉に△7七と、と角を取るのは先手玉が詰めろにならないので、▲4三銀と受けにくい詰めろで迫って先手の勝ちです。

きれいに割り切れており、どうあがいても後手に逃れる術はありません。
△6六歩からの踏み込みが勇み足で、いっぺんに勝ちを持っていかれてしまいました。

判断ミスといえばそれまでですが、▲9八玉あたりは非常に複雑で、△6六歩と打つ辺りで読み切るのは相当に困難でした。
しかも精査すると2つの選択肢はどちらも負け筋で、勝ち目の薄い形勢だったようです。

勝ち筋を追った夕食休憩から約2時間、手数にしてわずか8手で投了に追い込まれるとは。切ない結末でした。


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