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自戦記

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自戦記のまとめです。
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AIの勝率表示と体感との乖離~自戦記 松尾八段戦~

AIの勝率表示と体感との乖離~自戦記 松尾八段戦~

一次予選の決勝で、モバイル中継で配信のあった対局でした。

後手で角換わりへ進み、リードして終盤戦へ。
しかし踏み込みを欠いて追い詰められていきました。
後手△が私です。

▲5二角成と角を成ってきたところ。この手が詰めろになることをウッカリして慌てました。
(▲3三と△同桂に▲3二馬が好手で、以下詰みとなる)
実戦は秒読みの中、時間ギリギリで△8三金と着手。飛車の横ぎきを通して詰めろを防ぎました

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研究と実戦の違い~自戦記 松尾八段戦~

研究と実戦の違い~自戦記 松尾八段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

先手で角換わり腰掛け銀に。
序盤戦、相手の工夫に頭を悩ませました。

1つ目の図が実戦で表れたもの。
2つ目の図は定跡とされている進行です。
先日noteに書いた記事でも取り上げたものです。

現代角換わり腰掛け銀2023 ~「▲4五桂」をめぐる冒険~

違いは後手の玉が3一か4二か、というもの。
後手が途中で手損をした(6二の金は7二→6二と動いた)こと

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タイムマネジメントが導いた勝ちへの道筋~伊藤真六段戦~

タイムマネジメントが導いた勝ちへの道筋~伊藤真六段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

先手で相掛かりに。一手一手が難しく苦労しました。
中盤では駒を取り合う激しい展開に。

図は終盤戦。一瞬のチャンスをつかみました。

▲6三馬と迫りたいのですが、△同馬▲同桂成に△5九角からトン死します。
手順は、△5九角▲5八玉△4九銀▲同玉△3七桂

▲5八玉に△4八角成が好手で詰みとなります。
手順中△4九銀が妙手で、△6九銀だと▲4九玉と逃げて竜の

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間違えた方向性とタイムマネジメント~大橋六段戦~

間違えた方向性とタイムマネジメント~大橋六段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

先手で相掛かりに進み、先攻してペースを握りました。
ただ、調子がいいと思っていたところから、やや形勢に自信が持てなくなって迎えた図。
先手▲が私です。

ここで▲4四角成が普通の手ですが、△4三金とされて飛車と馬の両取りになってどう指すか。
実戦は先に▲2四飛と飛車を切り飛ばし、△同歩▲4四角成△4三金▲同馬と突進しましたが、攻めが届きませんでした。

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拾えなかった妙防~金井六段戦~

拾えなかった妙防~金井六段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

先手で相掛かりへ進み、相手の斜め棒銀を受ける展開に。
迎えた図。先手▲が私です。

▲8五歩△同飛と飛車を呼んだところ。
当然とばかりに▲7六銀と飛車取りに銀を上がりましたが、もっといい受けがありました。

▲8八銀が妙防でした。
次に▲7六銀△8二飛▲8七歩となると、後手の銀が詰んでしまいます。
よって△8七歩ときますが、▲7七銀△同銀成▲同桂。

この

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思い切りが呼んだ勝利~金井六段戦~

思い切りが呼んだ勝利~金井六段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

仕掛けで思い切った攻めを敢行し、中盤を通り越して終盤へ。
迎えた図。後手△が私です。

▲4四桂と両取りにきたところ。もう終盤戦なので金を逃げる余裕はありません。

ここで△7六銀と踏み込みました。
攻めとしては普通の手ですが、先手に手番を渡すのが怖いところ。
具体的には、

・▲5二桂成△同玉▲7二銀(or角)と飛車と玉をいっぺんに攻める
・▲6五歩(△

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2度の2択を誤って転落~郷田九段戦~

2度の2択を誤って転落~郷田九段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

序盤からペースを握り、リードを広げてあとはどう勝つか、という流れに。
迎えた図。先手▲が私です。

△6七歩の詰めろに対し、▲同金と▲2八飛で迷い、▲同金を選択。
これが転落への第一歩でした。

対して△5八銀成が厳しいことを軽視しました。

次の△7八銀成(△8八銀成)~△8七歩成からの詰めろが受けにくい格好に。
▲同金に代えて▲2八飛なら相手に手段はな

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運命を分けた桂の活用~長谷部四段戦 ~

運命を分けた桂の活用~長谷部四段戦 ~

囲碁・将棋チャンネルで放送のあった対局でした。
振り駒で先手になり、相掛かりに進みました。先手▲が私です。

うまそうにみえた桂の活用主導権を握られて攻められましたが、やや強引な感じもあり反撃のチャンスを伺っていました。

図は△6六歩ときたところ。恐ろしい狙いを秘めています。

次の狙いは△6七歩成で、後手は角の素抜きを狙っています。
▲7五金が指したい手ですが、△6七歩成▲同金△8八角成▲8四

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現代の思想を攻守で活用した一局~服部四段戦~

現代の思想を攻守で活用した一局~服部四段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。
順位戦の最終戦で、相手の昇級がかかっていました。
後手△が私です。

受けの桂相掛かりから相手の棒銀に対し、珍しい受けで対抗しました。

▲2四歩と合わせてきたところ。△同歩▲同銀と進めてしまうと棒銀がさばけて先手の狙い通りの展開です。
そこで相手の主張を通すまいと、△1三桂と対抗しました。

レアな受け方ですが、水面下では知られた手です。
ただ微妙な違いで

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四間飛車3連戦からみる、令和の対振り飛車戦略 ~自戦記 特別編~

四間飛車3連戦からみる、令和の対振り飛車戦略 ~自戦記 特別編~

2022年に入り、3局連続で先手四間飛車と対峙しました。
ここ最近は振り飛車の採用がプロ全体でも増加傾向にあるとはいえ、極端な偏りです。

今回はその3局がどんな展開に進んだのか、ご紹介します。
現代振り飛車の現状が垣間見えるはずです。

端の突き合い3局とも出だしは一緒でした。

開局早々、先手が端を打診してきました。これが現代振り飛車の指し方です。後手の対応によって振る筋を変えたり、角道を止め

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実った序盤の工夫~飯島八段戦~

実った序盤の工夫~飯島八段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

小さい工夫こちらが先手になれば、相手が得意の横歩取りでくるのは予想通り。
問題はどの形でくるか。横歩取りは後手に作戦の選択権があります。

この△4二玉は△3三角と上がる手を省略する新しい指し方です。
飯島八段も何局か指しており、予想された一つでした。

対して事前に構想を練っていました。それが▲6八玉という手。実戦例はなく新手です。

実戦例では▲5八玉

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不発だった飛車切りと正確な受け~増田(康)六段戦~

不発だった飛車切りと正確な受け~増田(康)六段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

後手で相掛かりへ。中盤に猛攻を仕掛けました。

決断の飛車切り

▲7七香と飛車取りで受けてきたところ。
先手は遊び駒が多いので、チャンスとみて決断しました。

通常では考えられない駒損ですが、攻めの迫力で補おうと考えました。
相手は金と銀、2通りの取り方があります。

こうした場合のセオリーは、「囲いを再構築する」
囲いは金銀の配置が将棋の理にかなったも

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名角2連発に散る~石川(優)四段戦~

名角2連発に散る~石川(優)四段戦~

モバイル中継で配信のあった対局でした。

先手で相手の三間飛車に持久戦で対抗。
模様のいい将棋でしたがリードにつなげられず、もみ合いの中で苦しくしてしまいました。

角を捨てて勝負と迫り、互いの玉が危険な状況に。
持ち時間も残りわずかで接戦の終盤戦になりました。

詰めろ逃れの詰めろ

▲8五桂打と詰めろをかけて迫ったところ。先手玉は薄いながら詰みは難しい格好なので、詰めろが続くかどうかの勝負だと

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実戦心理と幸運な逆転~松本六段戦~

実戦心理と幸運な逆転~松本六段戦~

ABEMAで配信のあった対局でした。

振り駒で先手になり、ガップリ四つの矢倉へ。
仕掛け周辺で優位を築きましたが、中盤の受けでミスが続いて劣勢に。

竜と飛車の合体迎えた図。▲4四桂に△4二金と逃げたところ。

ここで▲5九飛成とと金を払って撤退。受け一方のようですが、狙いを秘めていました。
それが△5八歩に▲3九竜の活用です。

竜で間接的に玉を睨む位置につけました。
遊んでいた桂、さらには自

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